3度目のサザンドラ

元々ポケモンブログでしたがいまはゲーム全般について書いています

【原作勢目線】アニメシャドウバース8話感想-決勝トーナメント始まるッ!

ネタバレします!!


 ヒイロ vs アリスの回でした。一見すると可愛らしいアリスの見せ場の回です。ですがじっくり見てみると、「シャドバが楽しい」というヒイロの純粋な想いが、アリスの徹底的なまでのアイドルへのプロ意識と矛盾を起こし、アリスを過酷な板挟みの状況に追い込んでいるんですよね。大げさに言えば、ヒイロのまっすぐな優しさがはじめて凶器に変わった回です。

全国大会決勝

 7話で開幕したばかりの全国大会が、8話ではもう16名による決勝トーナメントになっていました。予選はちらっとだけ映すのかなと思っていたのですが、完全スキップの徹底ぶりでした。予選は8000人いたということで、完全にRAGEと同じ規模ですね。
 日本中の人が注目している様子でした。屋外の大きな広告ディスプレイ、バスの車内ディスプレイ、クレープ屋さんの店頭でも放送されていました。注目と人気の高さを感じます。後の場面で実況MCが「全世界のお茶の間に生配信されている」と言っていたので、世界規模なんですかね。シャドバじゃなくてもいいので、ゲームがこういうふうに扱われる時代がいつか来るといいですね~。
 決勝に残った16名の顔ぶれと、トーナメント表が公開されました。モブのキャラが濃くていいですね。もしかしてモブではなくなるキャラもいるのか?と思ってしまうぐらいにはキャラが濃い。今後ちょっとでも活躍してくれるといいなと思います。最後の方でアナウンスがありますが、牙倉セイヤの初戦の相手である松尾アキコはプロプレイヤーだそうです。
 ミモリが「ちょっと運がよかったかな」と言っていましたが、8000人を16人に絞り込んだわけですから、スイスドロー10回戦ぐらいはやっているはずです。運だけで来れるわけがありません。しかも他の参加者はマスターランクなのに、ミモリはBでカズキはCでしたからね。一体何が起きたんだよ…という感じです。
 ヒイロの対戦相手のEcilaがアリスである可能性にすでにミモリは気づいています。Twitterで「百合の波動によりミモリは感じることができる」と言っている人がいて、百合ってすげえなと思いました。一応4話からの伏線ですね。アリスは正体を隠してでもシャドバをすることが好きという。
 バトルフィールドの周りはなぜか水が張ってあって面白かったですね。ド派手な演出によりアリスが登場します。大会運営者と事務所の間で話がついていたのでしょう。
 一瞬だけレオンが映りました。どういう立場なのかはいまだわからずですが、運営に近いところにいるのは間違いありません。レオンが試合を見ているモニターには、バトル開始前に入るARフィールド展開のときのような文字が浮かんでいました。関係あるのでしょうか。

ヒイロ vs アリス(前半)

 いつも通り棋譜を最後に載せています。参照しながら見ていってください。
 試合前のスマホ装着バンクが、今回は初めて画面分割による同時進行でした。オープニングのような感じですね。2人の装着シーンはどちらも既出のため節約したのでしょう。こうやって並べるのもとってもカッコいいですね。

ターン1

 先攻はヒイロ。1ターン目はジュエルドラゴンです。前回活躍したので、見ているほうもだんだんカードに愛着が湧いてきますね。
 後攻1ターン目、アリスはパス。これが最近は普通なんですがね。観客の煽り方がお上手。

ターン2

 先攻2ターン目ムシュフシュ。このカードもお馴染みになってきました。
 後攻2ターン目はアニメオリジナルカードの登場でした。ゾンビドッグです。2/2/1でラストワードで手札に同名のカードを生成する能力。最近で言うと二コラの使用感に近そうです。もっと言うとトークンカードであるアルティメットキャロットの方が近いですかね。マナを外してしまったときの保険になりますし、細かいコストでカードを場に出しネクロマンスを貯めていける良いカードです。



ターン3

 先攻3ターン目。ヒイロはルフ鳥をプレイしましたが、ここは手札にあったドラゴンナイト・アイラをプレイするほうが無難です。PPブーストは早ければ早いほうが得ですから。この試合では、次のターンにルフ鳥が相手のリーダーを攻撃して、1枚で4点分の仕事をしたので、結果論としてルフ鳥でもよかったかなという感じになりました。 

 後攻3ターン目。アリスはミニゴブリンメイジをプレイ。ここで何を手札に加えたかはわかりませんでした。その後の流れで見るとダークコンジュラーかユニコだと思われます。


ターン4

 先攻4ターン目。ヒイロはドラゴンウォーリアかアイラで迷って、アイラを選択しました。これは正しいですね。進化は有効に使わないと。
 ミニゴブを無視してリーダーを攻撃したのですでにアリスの体力は11になっています。シャドウバースに置いて先攻が有利と言われているのはこういう展開が作れるからですね。進化が使える後攻4ターン目までに体力を大きく削られてしまい、リカバリーが効かなくなるのです。
 後攻4ターン目。アリスは悪戯なネクロマンサー進化で盤面を全て返しました。アニメの演出上、盤面をすべて返したほうが逆転したというのがわかりやすいのですが、アイラは無視してよかったかなと思います。ドラゴンのPPブーストは防げるなら絶対に防ぐというのが鉄則です。ただ気がかりなのは体力で、アイラが進化してリーダーに攻撃してくると体力7まで削られてしまい、5点疾走の進化で負ける圏内に入ってしまうという裏目はあるプレイです。

 ここはヒイロがアリスの実力を認めるシーンでした。ヒイロは「手札が全然減ってない…!」と驚いていましたが、コイツはちゃんと手札の重要性を理解しているんですね。毎回毎回手札がゼロになるくせに。アリス側はゾンビドッグやミニゴブなどで手札を補充しつつ戦っていました。最近のシャドウバースのプレイ感に近い戦い方です。
 先攻5ターン目、ヒイロがディザスタードラゴンを置いたところでAパートは終わりでした。

ヒイロ vs アリス(後半)

 今回はそこまで大きくジャンプはせず、スキップしたところも含めて、アリスが使用したカードはすべて見えているカードでした。ヒイロは相変わらず山札の上から引いてきたカードだけで戦ってる感がすごいです。ヒイロは進化権を温存している分、体力が削られています。アリスは進化と除去カードをバランスよく使用しています。
 カットされているのですが、アリスはダークコンジュラーの効果で出したゴーストに死への近道で必殺を付与して相手の大型フォロワーを処理するというテクいコンボも決めています。



ターン7

 先攻7ターン目。「手札を温存するのもアリだけど…」とヒイロは言っていて、彼にもそういう発想があったんだなあと感動します。しかし結局は手札をすべて吐いてしまいます。アリス側の手札は潤沢にあるので、ここでリソースを温存して中途半端な動きをしてもジリ貧になるだけだったでしょう。結果論ですが良い判断だったと思います。進化権はまだ1つ残っています。この辺から実況がうるさく感じられます…。
 後攻7ターン目。死の一閃を撃つアリスが可愛い。このアニメはプレイヤーがスペルを撃つという演出になるので、スペルの描写が豪華なんですよね。ゲームだとダメージだけ与えて終わり、となってしまうので新鮮です。
 そしてここが問題の場面です。リリエルとゾンビドッグをプレイして、進化効果のないゾンビドッグの方を進化させました。ゾンビドッグがアニメオリジナルカードなのでちょっとわかりにくい演出になってしまっているのが残念なところです。ゾンビドッグにはなにか特別な効果があるのかなと期待してしまうのです。しかし特に進化効果はなく、ヒイロの場の2/1の大嵐のドラゴンを撃ち漏らします。
 リリエルは進化時に好きなところに1点飛ばせるということで当時のミッドレンジネクロマンサーの採用圏内にあったカードです。大嵐のドラゴンに1点飛ばしながらサンドストームドラゴンに攻撃することで、相手の盤面を全部破壊することができました。

 「こっちのほうが可愛いから!」とアリスは言っていて、あたかもリリエルが可愛くないみたいな言いぐさでしたが、わんわん言うのがアイドルの「持ちネタ」のような感じなのでしょうね。

ターン8

 先攻8ターン目。ゾンビドッグを進化させて4/2にしてしまったがゆえに、2/1の大嵐のドラゴンに攻撃されて破壊されてしまう結果になりました。試合の流れ的には、カード1枚失っただけでなく、進化権も損してしまった感じです。リリエルに進化を切っていれば、アリスの場は4/3, 2/2, 2/1となり、ハイドラで全部処理することができず、7/1のハイドラに対してアリスの場には2/1が残るという結果になります。消えぬ怨恨を温存するとか、相手の体力を詰めるとか、その後の展開は変わってきました。
 ハイドラのことを超強力なカードだと実況は騒いでいますが、進化を切って2面の処理しかできないので、実質ドラゴンウォーリアとやっていることがあまり変わません。

 このあと、再度ヒイロがリリエルに進化を切らなかった理由をアリスに聞きます。伏線とまではいかないのですが、ルシアが鋭利な一裂きを撃たずにヒイロにターンを渡したシーンが頭をよぎるんですよね。明らかにベターなプレイがあるのに、あえて他のプレイをされるということを、ヒイロはすでに経験済みなわけです。相手が本気でプレイしていないことに対して、ヒイロは敏感に反応します。声を荒げて怒らないのが彼らしくて、「もし本気でプレイをしていないなら…」とちょっと控えめな問いかけをニコニコしながらするのですよね。とっても大人です。
 それに対してアリスはまだまだ子供っぽくて、「本気になったほうが楽しい?そんなの言われなくても知ってるよ」とぶっきらぼうです。このセリフ回しは絶妙で、いま本気でやれていないことを暗に認めつつ、自分が本気を出せないことにいら立っているように見えます。こういう繊細な感情のやりとりがこのアニメは実は上手いなと思っています。
 後攻8ターン目。消えぬ怨恨でハイドラを処理しつつ、死の祝福をプレイ。死の祝福は最初のカードパックで実装されたあと、ずっとネクロマンサーデッキを支えてきた強カードです。ネクロマンスを6使って守護が3面立ちます。当時は3点のAOEがあまりなかったのでカード1枚では返しにくく、墓地を4肥やすので返されても攻めを継続できるカードでした。6ターン目に広げた盤面が、7コストの魔将軍・ヘクターに綺麗につながるのもグッドでしたね。


 死の祝福を「アリスちゃんらしからぬスペル」と実況は言って、観客もざわざわしています。カードのイラスト自体は可愛い女の子なんですがね。ゾンビが出るからNGなのでしょう。
 状況だけ見れば、ヒイロはほぼ負けです。2/3守護が3体並んでいて、ヒイロは手札がゼロなのにアリスは3枚あります(1枚はゾンビドッグなので無限リソース)。ですが、このアニメをここまで見てきた視聴者にとっては、展開が完全に読めてしまうんですよね。体力3のフォロワーが並んでいるということは、山札からきっとイグニスドラゴンが駆けつけるだろうと。

ターン9

 先攻9ターン目。ここでアイボリードラゴンをプレイさせたのがなかなかニクイ演出で、視聴者がイグニスドラゴンを予想することを分かっていて、わざとワンテンポずらしたんですよね。カードが光り、ヒイロが「うおおーー」と叫ぶので、絶対にイグニスドラゴンが来るだろうと思ったのに。

 アイボリードラゴンを挟んだとはいえ、ヒイロのバトルはピンチになるとイグニスドラゴンを出すというのがさすがにワンパターンになってきたなという感覚を覚えます。1人1枚ずつ切り札カードがあるという設定をしてしまっている以上しょうがないのですが、他のレジェンドカードを使って逆転しても良いのではと思ってしまいますね。1枚のカードでやれることがどうしても限定されてしまうのがシャドバの辛いところだなと思いました。武藤遊戯のブラックマジシャンは魔法カードとの組み合わせで割といろんなことをしていましたからね。
 後攻9ターン目。イグニスドラゴンで逆転されてドヤ顔をされたアリスは、ムキになって勢いよくドローをします。ここで、パタッと手が止まり、BGMも止まるのがとても良い演出でした。アリスのアニメオリジナルのレジェンドカード「スケルトンレイダー」をドローします。使えないことはわかっていながら、デッキから抜き忘れたか、お守り替わりに入れていたのでしょう。
 ここで、ヒイロの熱に当てられて、スケルトンレイダーをプレイするアリスを見たくないと言えばウソになります。しかし、アリスは冷静で、そしてプロのアイドルでした。ここは鳥肌でしたね。思わず手は伸びてしまったものの、表情は変えずに、別のカードに手を向けるのです。並みの人間だったら絶対に顔に出てしまうところでしょう。
 声のトーンだけはどうしても誤魔化せず、聞いたこともない低いトーンでのセリフになります。小倉唯さんの演技がお見事です。BGMも物悲しい。ターンの最後にアイドルであることも忘れないプロ意識も見せます。
 ヒイロも気づくんですよね。シャドバだけしか考えていないような単細胞野郎に見えて、アリスの様子から、また変なことをしているのだなと感じ取ってしまうのです。ルシア戦での経験が活きたのもあるのでしょう。

ターン10

 先攻10ターン目。3/2の守護さえどかせばヒイロの勝ちということで、割と勝率の高いドローにはなりました。ただ、ドローする前から絶対に勝っちゃうかのような仕草なのはいかがなものか。本来は手札に1枚だけ残っているとか、そういうほうが自然なのですがね。いままでけっこう活躍してきた、鉄鱗の竜人のドローで勝負ありでした。


アイドルとして

 試合後の控室で、「次からはもう、あのカード使わないから」と電話口で話すアリス。あのカードは死の祝福でしょう。強いカードなのに。
 電話を切るときには「ママ」と呼び掛けているのに、電話番号の登録は「マネージャー」となっています。こういう小技がこのアニメは上手いんですよね。アリスの中の小さな反抗心で、母親は自分の中ではマネージャーでしかないのでしょう。電話に使っていたスマホはシャドバするときに使っていたものなので、会社のものとかではないはず。
 今回のラストは、アリスのため息交じりのこのセリフ。

「アリスはアイドルだから、本気は無理だよ。使うカードだって、決まってるんだよ。アリスが普通の女の子だったら、もっと楽しかったのかな」

 ここから、いきなりオープニングのキリフダが流れるんですよね。最初はびっくりしたのですが、よく考えてみるとここでエンディングのハピネスセンセーションを流すとご機嫌なアリスが映ってしまい、ギャップが出てしまいます。アニメの流れを壊さないように、順番が変でもオープニングを流すという徹底した姿勢。制作陣のこだわりを感じます。
 意図的に試合の中からは省いたのですが、後攻8ターン目に死の祝福をプレイする前のアリスとヒイロのやりとりは本気でしびれました。これを18時のテレビ放送で言ってしまうなんて。

「アリスはアイドルだから、みんなが盛り上がればそれでいいの。勝てなくてもいいんだよ。好きなカードも使えなくていいの。本気で遊べなくてもいいんだよ」「アイドルだからって別に関係ない!」「関係あるよ!大人がみんなそう言うんだから!」

 アリスは中学生であるヒイロたちよりさらに年下なので小学生ぐらいでしょう。小学生の女の子が、この世の構造を完璧に把握しているんですよ。怖くないですか。
 アイドルは自分の意思よりもファンの感情を尊重しなければならない職業であること、そしてその判断基準は自分では決められず周りの大人が決めることを、アリスは理解しているんです。試合中の所作も含めて、すべてがプロです。
 また、カードアニメならではのお話も絡んできたのがさらにすごかったです。

「アリス、アイドルだから。怖かったり、変だったりするカードは使っちゃダメなんだよ。アリスはそういうのが好きなのに。こんなカード使ったから、きっとあとで怒られちゃう。アリスはお兄ちゃんとは違うの」「いいや、おんなじだ!おまえさ、シャドバが好きなんだろ?だったら、オレと同じだ!本気でやろうぜアリス!それがシャドバだ!」

 上のセリフに対して、4話のアリスvsミモリ戦が伏線になっているんですよね。4話のアリスはアイドルを演じる必要がなかったため、自分の好きなカードを使っていました。スカルビースト、スパルトイサージェント、ボーンキマイラといったゾンビ系統のフォロワーたちです。このときは本当に楽しそうにシャドバをしていましたよね。



 それに対して、8話でアリスが使ったデッキにはニュートラルであるリリエルやミニゴブが入っていました。弱いカードではないので試合運びに影響は出ていなかったのですが、墓地を貯めながらネクロマンスを使うというクラス特性があまり活かされないカードたちです。わざわざ採用するカードではないはず。可愛らしいから入れなくてはいけなかったのでしょう。


 「自分の好きなカードを使えないキャラ」というのもカードアニメの王道です。それをこのご時世にあったやり方で描いてみせたのですね。いつか思いっきり自分の好きなカードで戦うアリスが見たいと視聴者は感じますし、アリスのキャラがとても立体的に表現できているのですよね。素晴らしいです。
 また、主人公であるヒイロとの対比も鮮やかです。ヒイロはここまで、シャドバが楽しいという純粋な思いをぶつけることで、牙倉タクマ、カイ、ルシアといったキャラたちの心を動かしてきました。8話でもヒイロは全く同じやり方で、アリスに語り掛けるのです。

「なあ!このバトル、楽しかった。だから今度は、アリスも一緒に楽しめるようにさ!またバトルしようぜ!」

 ただ、このセリフにアリスはまともに答えないんですよね。答えられるわけがないのです。アリスのアイドルに対するプロ意識はすさまじいものがあります。私にそんなことができるわけがない、そんなことを求めないでくれと、苛立つ気持ちがあって当然だと思います。それをぐっと飲みこみ、最後までステージ上のアリスはアイドルを演じ切りました。
 このブログを書くために何度かこのシーンを見ていると、ヒイロがとても残酷なことを言っているように見えてくるんですよね。バトルが楽しかったなんて、よくもまあ抜け抜けと言えたものだなと。アリスは自分の気持ちを押し殺して、興行としてシャドバをしているのに。
 自分の気持ちと、アイドルとしての職業感が真っ向から対立してしまって、アリスは非常に困っています。自分の心の中で板挟みの状況に追い込まれてしまいました。もちろん、ヒイロが間違っているわけではなくて、彼のまっすぐな思いはきっとアリスを動かしていくでしょう。好きなカードを使うというのは、アリスにとってはいばらの道になるに違いありません。でも、頑張って踏み出してほしいなと、応援したくなるお話でした。

棋譜

 いつものように棋譜を作成しました。今回は割と素直な流れになっています。
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YT22@シャドバ (@YT__pokeshado) | Twitter

前回の7話はこちら。
yterapokemon.hatenablog.com