3度目のサザンドラ

元々ポケモンブログでしたがいまはゲーム全般について書いています

【アークナイツ】ストーリー考察/感想 - 将進酒 編

 2022年7月29日開始のイベント「将進酒」のストーリーを整理していきます。

1. 前提

 将進酒のストーリーを追いかけていく前に、世界観の前提となる部分を整理します。

1-1. 巨獣

 テラの世界には「巨獣」と呼ばれる人外の生命体がいます。古代の人々が「カミ」とあがめた存在です。
 古代にはいまよりもたくさん巨獣がいましたが、人間の文明が発展するにつれて姿を消していきました。しかし一部の地域にはまだ巨獣と、巨獣に対する信仰心が残っています。イェラグでイェラガンドとあがめられているカミ、サーミで人間と共存しているカミは巨獣の一種なのだそうです。
 炎国にもかつてはたくさんのカミが住んでいました。そのうち「歳」と呼ばれるカミが炎国イベントの主役です。
 巨獣にはれっきとした実体がありますが、物体に宿ることもできるそうです。過去の事例ではサルカズの魔剣や工業的なアーツユニットに宿ったことがあるらしいです。前衛アーミヤが持っているクイロン王の剣も怪しく見えてきます。

1-2. 12人の代理人

 次に「歳」とその「代理人」について見ていきます。
 歴史に名を残した古代皇帝は、炎国の民のことを大事に思うあまり、炎国に住み着いていた巨獣を片っ端から排除しようと考えました。意外なことに、最初に見つけた「歳」というカミは古代皇帝に味方し、他のカミを駆逐するのに協力してくれました。
 戦いが終結したあと、歳は自らの体と権限を12の代理人へ分割し、姿を変えました。ニェンたち12人の兄弟姉妹がそれです。代理人たちはカミの一部のようなものなので非常に長命であり、炎国で悠久のときをひっそりと暮らしていました。
 プロファイルの誕生日や昇進記録から彼らの序列を知ることができます。リィンは3番目、ニェンは9番目、シーは11番目です。1番目と2番目は男性なのでリィンは長女、12番目も男性なのでシーは末妹に当たります。
 代理人たちは芸術に秀でていて、2番目は囲碁、3番目のリィンは詩、9番目のニェンは鍛冶、11番目のリーは絵、12番目は料理が得意です。
 将進酒では、2番目の男性が炎国イベントのカギを握る人物のようだと明かされました。名前は明かされていないのですが、リィンやシーが「囲碁バカ」と呼んでいたのでこの記事ではそのように呼びます。囲碁バカについてはこのあと詳しく見ていきます。
 そのほかに名前が明らかになっているのは2名。ゾエという女性は消えてしまったと言われていました。スーという人は囲碁バカとリィンと詩を詠むのに付き合ってくれるそうです。
 歳という1つの巨獣から分割された彼らですが、どのように兄弟姉妹の序列を決めるのか語ってくれたシーンがありました。混沌とした状態の中から、「我は誰か?」という問いの答えを見つけたものから順に代理人として実体化したそうです。彼らが創作を好むことにも繋がっていそうな逸話だなと思いました。
 代理人の形で実体化した12人に名前をつけてくれた女性がいたとのことでした。彼女は代理人たちに何らかの期待を抱いていたそうです。

1-3. 礼部と司歳台

 歳に関わる炎国の組織について見ていきます。
 代理人へと姿を変えた歳を監視する司歳台という組織があります。ここでは巨獣の研究が行われ、12人の代理人の一挙手一投足が監視されています。
 司歳台はもともと礼部という組織の下部に位置していました。礼部が何をしている組織なのかは語られませんでしたが、古代中国に実在した省庁の名前なので、そこから推測することができそうです。例えば隋の時代には三省六部と呼ばれる体制が敷かれていました。礼部は教育・外交・宗教を主に担当していました。将進酒の中でウユウが口にしていたことですが、炎国工部というアーツと源石工学を研究する省庁もあるとのことでした。
 あるとき囲碁バカが起こした災いがきっかけで司歳台の地位は向上しました。人々が代理人の危険性を認知したのか、もしくはその災いを鎮めたのが司歳台だったのかもしれません。下部組織に置いていた礼部としては面白くない出来事だったでしょう。
 司歳台は千年来の負の遺産清算したいと言っていて、歳のリスクを取り除くことを使命としています。一方で礼部は12人の代理人は有用な才能を持ち、炎国に対して功績を立てた者もいるという見解を持っています。つまり代理人たちに対する姿勢が対立しているのですね。将進酒の時点では両者は弓を引き絞っている状態だと言われるほど関係が悪化していました。

1-4. 囲碁バカの来歴

 囲碁バカのこれまでの来歴を整理していきます。
 歳から分裂した当初は恐らく自由に暮らしていたと思うのですが、あるとき炎国に捕まって、囚われている間に人間と囲碁で勝負しまくっていた時期がありました。1回負けるごとに禁足60年追加というルールで、最初の60年はほとんど囲碁バカは負けっぱなしだったと言われており、途方もなく長い時間を囲碁を打って過ごしていたようです。
 あるときを境に囲碁バカは囲碁で負けなくなりました。積み重なった禁足の年月が終わり都を去りました。そのあとゾエが亡くなったと思われる事件が起き、囲碁バカは大きな衝撃を受けました。
 囲碁バカは今の太傅と勝負をして敗北し、再び炎国の都に連れ戻されました。このときの囲碁バカはもはや誰にも囲碁で負けないほど強くなっていたため、太傅は囲碁で勝負をすることを避け、炎国そのものを碁盤として人間を使った勝負に勝ったのだと言っていました。人民の命を犠牲にしたのかもしれません。囲碁バカは人の心を理解していないらしく、それが勝機に繋がったそうです。
 連れ戻された囲碁バカに会うことは禁忌とされていましたが、あるとき彼が封印されているお寺でシャン・ルー(相・孺)という囲碁の名手が亡くなっているのが発見されました。囲碁バカは自らの意識を181個の碁石に分割して、都から逃走しました。(囲碁は縦横19本の線の上で争うゲームなので、最大で181個の石を使います)
 囲碁バカの本性はよくわかっていませんが、人間に危害を加える可能性がある代理人が炎国の監視の手を逃れてしまっているという非常事態なのですね。


2. 将進酒の過去

 将進酒の物語を見ていくうえで、イベントの過去に当たる部分を時系列順に整理していきます。

2-1. 酒杯はなぜ贈られたのか

 将進酒は囲碁バカがリィンに贈った黒い酒杯を巡る物語でした。
 数十年ぶりにリィンの前に姿を現した囲碁バカは、彼女に黒い酒杯を渡しました。リィンは「酒杯をくれた時には、とうに一手打っていたんだね」と言っていたので、渡した時点で囲碁バカの意識は181に分割されていたのかなと考えられます。
 酒杯を通じてリーへ干渉したり、酒杯から話しかけたりしていたりと、この酒杯は囲碁バカの体の一部として機能しています。リィンを監視する目的があったのではないかなと思います。
 囲碁バカは妹たちのことを気にかけていました。それがわかるエピソードが行裕鏢局の件です。「行裕鏢局の茶番は、キミが画策したものだね?」とリィンが指摘していたように、将進酒で起きたあのいざこざは囲碁バカが仕組んだものだったのですね。
 テイとシャンとドゥの争いは、言い方は悪いですが場違いに醜く見えました。囲碁バカがリィンに「人間の心は道徳的なものじゃあないぞ」と忠告しようとしていたようです。人間は同門で殺し合うものだし、骨肉の兄弟も反目しあうものなんだと囲碁バカは言っていました。リィンの目にはあの争いはどのように映ったでしょうか。
 なぜそんな忠告をするのかというと、囲碁バカは妹たちが人間らしくなることに懸念を抱いていたからです。ニェンとシーはすでにかなり人間らしくなってしまったと言っていました。画中人で見たように彼女たちは人間に対して思いやりを見せていましたからね。
 囲碁バカは人間のことが嫌いなのでしょうか。それとも何か別に理由があるのでしょうか。彼の行動原理は今後どこかで解説されるのではないかなと思います。
 リィンは詩を詠んでいるときに黒い酒杯を落としてしまったと言っていました。しかし囲碁バカが行裕鏢局の件を仕組んでいたとなると、酒杯の動きは囲碁バカがある程度コントロールしていたのではとの疑いも出ますね。


2-2. 行裕鏢局の悲劇

 リィンのもとを離れたあとの黒い酒杯の行方を見ていきます。
 いろんな人の手を渡った末のことだったのかもしれませんが、10年前にこの酒杯を持っていたのは司歳台でした。司歳台は行裕鏢局に酒杯の輸送依頼を出しました。行裕鏢局は実力のある鏢局でしたが、炎国語を話さない謎の賊に襲われ、酒杯は崖から落ちてしまいました。
 この襲撃でシャンの息子とドゥの父は亡くなり、トラウマを負ったテイは飲食業に力を入れていきました。シャンはそんなテイに愛想をつかして鏢局を去り担夫になりました。
 どこかへ行ってしまった黒い酒杯でしたが、とある村で発見されました。そこでは器物に命が宿るという怪談が囁かれていました。そこから骨董品としてさらにいろいろな人の手に渡ったあと、密輸業者の手で龍門へと流れてきました。龍門の人々の目には安物に映ったようでした。

2-3. 司歳台の後ろ盾

 黒い酒杯を取り戻そうと司歳台が動きました。
 酒杯の現在地を囲碁バカから直接聞いた太傅は司歳台に3つの密約を出しました。将進酒の中ではこの密約に従って司歳台は動いています。
 太傅という地位は古代中国の様々な王朝に現れていて、時代によって微妙に立場が異なります。周の時代にあっては大師、太傅、大保が三公と呼ばれ、皇帝を助ける役職だったとのこと。炎国における序列はまだわかりませんが、皇帝にかなり近い偉い人と思っておけば良さそうです。
 司歳台は太傅から直接指示を受けていて、今回は彼を後ろ盾として動きます。太傅が司歳台に与えた3つの密約のうち1つ目が黒い酒杯の奪還でした。
 黒い酒杯の持ち主のリィンは尚蜀を根城としています。司歳台は尚蜀の知府(知事)であるリャン・シュン(梁・洵)に声をかけて、酒杯を手に入れる計画を練りました。
 リャンは司歳台の行為が礼部の頭を飛び越えた越権行為だと気づきます。歳と代理人に関することとは言え、礼部の指示を仰ぐのが本来の正式な指揮系統だったということでしょう。リャンは司歳台の後ろにとんでもなく偉い人がいるらしいということは察していましたが、それが誰かまではわからなかったようです。
 リャンは酒杯がどんなものかは知らなかったはずですが、司歳台が動くぐらいヤバいものだという認識はあったはずです。ヤバいブツが尚蜀に持ち込まれ、司歳台と礼部がドンパチ始めてしまうと尚蜀の民の命が脅かされます。上に逆らってでも、リャンは民の命を守りたいと決心して動き始めます。
 司歳台の代表としてこの件を預かっているのが持燭人のズオ・ラウ(左・楽)です。1年前からリャンと接触していました。一方で礼部にもこの件を見守っている人物がいました。ニン・ツーチウ(寧・辞秋)です。3年前からリィンの監視のために尚蜀にいました。
 ニンは表向きの身分を隠してリャンと仲良くしていました。リャンは途中から気づいていたようでしたが、周りには悟られないようにしていたのだと思います。ニンは礼部左待郎という礼部の中でも高官であり、お役人の位で言うと四品のリャンよりも3つぐらい高い従二品という位の人です。(四品 < 従三品 < 正三品 < 従二品 < 正二品・・)
 さて、太傅が司歳台に与えた3つの密約のうちの残りの2つを見ていきます。
 2つ目は秘匿2策よりも確実な策を探すことです。テラ世界情勢の混乱に当たって、炎国朝廷は28策の対応策と、公には明かされない秘匿2策を立案しました。炎国を守るための対応策だと思うので、食料生産を増やすとか軍備を増強するとかそういう政策でしょうか。2策が秘匿されているのは、過激で危険な方法だからだと思います。一般人に公開してしまうと逆に混乱を招いてしまうタイプのものなのではないかと。この危険な秘匿2策よりも確実に事態を良くできる方法を見つけよと太傅は言っているのですね。
 3つ目の太傅の親書を渡すというのは将進酒の中で実際に実行されたので、後程見ていきます。


3. 将進酒の本筋

 前置きが長くなりましたがここからが将進酒の時系列に入っていきます。

3-1. 酒杯争奪戦

 黒い酒杯を欲しがった人々について見ていきます。
 司歳台から命令を受けたリャンは、龍門にある黒い酒杯をリーに持ってこさせます。リャンは詳細をリーに明かしませんでした。リャンは司歳台を裏切ろうとしていたので、リーにはとにかく酒杯を守ってくれとしか言えなかったのですね。リーは酒杯を持っている間に変な夢を見るようになり、意識が囲碁バカに乗っ取られかけています。
 ズオはリャンと話をつけて、テイが酒杯を奪う形にして司歳台のもとへ酒杯が渡るように計画を練っていました。直接渡さないのは礼部を欺くためでしょう。リャンは口ではその計画に乗るフリをして、司歳台を裏切りました。リーに酒杯を守るように命じたのです。
 司歳台から命令を受けたテイは、計画通りにリーが酒杯を渡してくれないので焦っていたことでしょう。さらに身内にも厄介事を抱えていました。ドゥがテイを失敗させようとしていたのと、シャンが息子の仇を討とうとしていたことです。酒杯の行方がややこしくなりました。
 ニンはリャンが司歳台を裏切ろうとしていたことに気づいていました。リャンを裏切り者にさせないように、イェ・バン(夜・半)に依頼して酒杯を奪おうとしました。司歳台の思い通りにさせないという意図もあったのかもしれませんが、リャンのことを想った行動でした。リャンの不義がバレれば無事では済まされません。彼を守りたかったのですね。
 ズオにはタイホー(太合)という人が一緒にいました。この人はお役人の規律を取り締まる粛政院の副監察御史という立場の人ですが、ズオのお父さんへの恩義のために私人として付き添っているだけと言っていました。のちに太傅から指令を受けていたような素振りがあり、司歳台と礼部の衝突を粛政院の人間として丸く収めるために呼ばれていたのかもしれません。
 というわけで本来は太傅の意志という1つの発端だったにもかかわらず、様々な組織や身分の人が酒杯を欲しがって混沌とした状況が生まれてしまいました。

3-2. ロドスの動き

 ロドスも巻き込まれたのでさらにややこしいことに。
 画中人での一件で灰斉山からシーを連れ出したロドスの一行でしたが、途中でバラバラに別行動することになりました。
 クルースはウユウをオペレーターとして登録するためにロドスの事務所を目指していました。ラヴァは突発的に生じた任務を受けることになり、サガは旅を続けたいということで灰斉山で別れました。
 ニェンとシーは途中まではクルースたちと一緒にいたようですが、コソコソと何かを企んで、途中で隊を離脱してしまいました。ニェンたちは太傅に会いに行きました。彼らはみんな後々尚蜀に来ていたため、なぜ別の場所で会っていたのかはよくわかりません。
 クルースたちは合流場所を決めていたようで、絵巻を使ってシーが接触をしてきました。リィンを司歳台に連れて行かせないようにしてと言っていました。2人は太傅から情報を仕入れていたので、遠くにいても状況をなんとなく掴んでいたのでしょう。
 クルースとウユウにとっては今回の騒動は巻き込まれただけの形です。彼らに意志はありません。しかしシーを灰斉山から連れ出したことで、司歳台はロドスに怒り心頭です。ドクターもアーミヤもケルシーも遠くにいるため、クルースは突然難しい舵取りを迫られることになりました。

3-3. 太傅の親書

 寄り道をしていたニェンとシーも尚蜀にやってきて、代理人が3人揃いました。
 黒い酒杯とニェンたちの雰囲気を察知してか、リィンがついに姿を現しました。これで代理人が3人揃ったので、ズオは太傅からの密命の3つ目を果たします。太傅の親書を3人に渡したのです。
 しかし親書の正体を3人は疑ってかかりました。まず太傅は真面目なのでこんな草書(下書き)を親書としないだろうという点。そして筆跡は太傅のものではなく亡くなったジエのものだと言われていました。リィンは囲碁バカの関与を疑っていました。
 親書には「三を過ぎることなし」と書かれていました。その意味は将進酒の中では明かされませんでした。3人集まったら親書を送るという密命だったので、「3人以上は集まるなよ」と言っているのかもしれません。もしくは代理人たちには数字が振られているので、3番目のリィン以下の代理人の存在を否定しているのかもしれません。リィンたちは意味を察しているような反応でしたが、今の我々にはヒントが足りません。
 ニェンは久しぶりに遭遇した司歳台の人間であるズオに交渉を持ちかけていました。ニェンは自分たちのオリジナルである歳を殺そうとしています。それは司歳台とも利害が一致していることなのではないかと。ズオは相手にしていませんでしたし、リィンとシーも実現可能性があるか信じ切れていない様子でした。
 親書に陰謀を仕込んだ囲碁バカに対して、ニェンは「自分たちよりも数歩先を行っている?」と言っていました。囲碁バカの目指す方向もニェンと同じく歳の殺害なのでしょうか。

3-4. 歳相との戦い

 3人の代理人の前に、歳相が現れました。
 歳相は歳そのものではありません。12人が合体したわけではないですからね。ニェンはここにいる3人の代理人の影のようなものだと言っていました。酒杯と逆の手法、つまり魂を結合するような形で囲碁バカが生み出しているのではないかとシーは推理していました。
 歳相の出現と同じタイミングで、囲碁バカは一部の関係者を自分の精神世界へと招き入れました。クルースはシーの絵の中にいるときと似た感覚だと言っていました。
 精神世界の囲碁バカはリーの姿を借りて出現しており、囲碁の対局を申し込んできました。囲碁を打ちながらいくつかの会話が交わされました。
 囲碁バカはリーが偶然から外れた人物だと評していて、ワイのことをほのめかしていました。ゾエが消えたときのことを話そうとして、ニンとズオに止められていました。ゾエの件は意外と多くの人が知っている事件のようでした。
 囲碁バカはどんな名人よりも囲碁に強いため、リーたちでは勝ち目がありません。あと1手で勝ちというところまで来ていたのですが、突然投了を申し出ました。現実世界側でリィンが歳相の正体を見破ったのです。
 ニェンとシーだけでは歳相には勝てませんでした。歳相と自分とを関連付けていたのです。しかしリィンは「我は我だ」と言い、歳相に対する答えは「どうだっていい」だと言い放ちました。その言葉で歳相は消滅しました。
 歳相は代理人とは関係がないものだと気づけるかどうかが勝負の分かれ目だったようです。歳と歳相はイコールではないし、代理人は分割された時点で歳ではなく「我」になったのだというのがポイントだった模様。リィンはそれを知っているからこそお姉ちゃんなんだよと言っていて、兄弟姉妹の序列を左右した「我は誰か?」という問いに繋がる問題なのだなと想像することができます。

3-5. 白天師

 歳相が消えたことで危険は去ったのですが、司歳台と礼部の対立は緊張状態のままでした。
 歳相の出現と時間は前後しますが、人間たち側の戦いも大詰めを迎えていました。カギを握っていたのはバイ・ディシャン(白・定山)という天師です。普段は陶工をしているおじいさんですが、青雷伯という異名を持つ雷のアーツの達人です。
 ズオの父親であるズオ・シュアンリャオ(左・宣遼)は白天師に手を出させたがっていました。この人は平祟候の異名を持つ炎国将軍なのだと言われていましたが、司歳台の意志を代表しているような言いぐさをされていました。
 白天師は礼部側の切り札です。ニンが普段遊びに行っていた宝飾店のチャオ(趙)、家具屋のウェン(文)とその旦那、料理人のフー(胡)の4人と一緒に一隊を成していて、ニンの指示で動くのでしょう。
 この事態にあたってリャンは船頭に事態の収拾を依頼しました。この船頭はシェン・ロウ(慎・楼)という名前で、浮萍雨師の異名を持つ軍人でした。リャンの真の切り札とでも言うべきでしょうか。禁軍の若き教官ですら一目置く腕前だそうです。雨が降っていないのに笠を被っていたのは禁軍時代の名残でしょうか。
 シェンは白天師が手を出したら司歳台と礼部の関係は崩壊するだろうと言っていました。大きな争いが起きて収拾がつかなくなってしまうことを危惧していたようです。ズオ将軍がそれを望んでいたのは、礼部側が悪者になるからでしょうか。民衆を守りたいリャンからしたらたまったものではありません。
 この緊迫した事態を収めたのはレイズでした。本名はリン・チンチェン(麟・青硯)と言い、大理寺少卿という肩書を持っていますが、大理寺は今回の件には関係ありません。白天師はレイズの兄弟子、つまり同じお師匠のもとで修業した同門とのことです。白天師を説得して、この件においては手を出さないようにしてくれたようでした。だからニンは山頂に来ずに見ていただけだったと。
 また、レム・ビリトン人のイェ・バンがこの件に絡んでいるのは不思議でしたが、彼女のプロファイルを見ると、白天師を人違いで襲ってしまったことがあり、そのとき以来白天師のことを慕っていて今回の依頼を受けたということが書かれています。
 太傅がこのあと尚蜀に到着して、人間側のいざこざも丸く収まることになりました。


4. 将進酒から今後へ

 歳相を倒したあとの、今後に繋がりそうな部分を整理してきます。

4-1. 3人の代理人の今後

 太傅は3人の代理人と会話しました。
 ニェンとシーには尚蜀に来る途中で会ったばかりでしたが、太傅とリィンが出会うのは30年ぶりだと言っていました。リィンは思い出話として、彼女が尚蜀に来る前に炎国の北の辺境部で炎国人と一緒に100年間戦い続けたことを話していました。そのとき一緒にいた宗師という人についても。
 太傅はニェンに取引を持ちかけました。天機楼という北の要塞に、楼・城・からくり・兵俑を提供してほしいというものです。その代わりに歳本体を倒すのに朝廷として協力しようと言っていました。歳を倒すのは元々朝廷がやろうとしていることですから、ニェンはどのみち朝廷に有利じゃないかと不服そうでしたが、取引には応じてくれそうな雰囲気でした。
 天機楼は1000年間も動き続けていて、炎国中から優秀な兵士が出向き、「魔」と戦っているようです。ウルサスが戦っている悪魔と同じ存在でしょうか。レイズのお師匠はここで戦っているようで、源石の力を借りて不老不死となり、370年間も戦っているとのこと。シーはこの人率いる雷のアーツ使いにこっぴどくやられたことがあるため苦々しい反応をしていました。
 太傅はズオに囲碁バカがばらまいた181個の碁石の行方を探るように言っていましたが、ズオとしては太傅が囲碁バカの言うことを色々と信じている様子を疑問に思っているようでした。太傅と囲碁バカの間には何があるのでしょうね。
 ズオは代理人3人に対して、別々に尚蜀を離れるように言っていました。監視もつけると。このあと3人はどこへ向かうでしょうか。

4-2. 玉門

 人間たちの帰趨について。
 リャンは司歳台からの命令に背きました。その責任を取らせる形で知府を解任して、自分と一緒に来るようにと太傅は指令を出しました。寛大な処置でしたね。いったん都に帰ったのちに玉門(ユーメン)へ行くぞと。
 リャンと離れ離れになってしまうことでニンは悲しそうな表情を見せていましたが、ニンにも玉門へ向かうように指示を出していました。優しい。
 ドゥの一声によって、テイとシャンも一緒に玉門へ行くことになったようでした。司歳台からの指示を果たせなかったので行裕鏢局はもう店じまいをするのかもしれません。
 では一体玉門とは何なのかというところですが、移動都市か移動要塞のようなもののようです。炎国の国外に出向いていたようですが炎国に戻ってきて、龍門から補給を受けたと言われていました。リィンはかつて玉門で人と一緒に戦ったことがあるようです。
 玉門関という関所が古代中国には実際にあって、遺跡として現存しています。シルクロードの要所を防衛していた関所とのことです。


4-3. 黒い酒杯の消滅

 物語の一番最後で黒い酒杯は破壊されました。
 リィンは酒杯を天災に投げ込みました。囲碁バカは捨て台詞を吐いており、「一瞬にして跡形もなく消えた」という記載もあるので、確実に消滅したのだと思います。
 ただ、時系列がよくわかりません。尚蜀に天災が起きたのは約30年前の出来事だと言われていましたが、そこで酒杯が消滅していたとしたらその後の物語が成り立たないので、過去のお話というわけではなさそうでした。
 酒杯が過去に飛んでいく、もしくは天災が現在に引き寄せられるなどの時空転移が起きないと筋が通らないのではと思います。リィンのプロファイルには「歳月だって彼女を止められないかもしれないわね。彼女の夢は千年の時も軽々と飛び越えられるわ」というシーの言葉が記録されています。夢を使って時間を捻じ曲げたということでしょうか。
 30年前の天災が目立った被害をもたらさずに忽然と消滅してしまったのは、黒い酒杯が投げ入れられたからだったりするのでしょうか。代理人たちは血液中源石密度が0.00u/Lで源石を一切受け付けない体をしているので、天災に対抗できる力がある、みたいな推測です。
 タワーディフェンスにおけるリィンは龍を召喚する能力を持っていますが、あれは彼女の能力の本質ではないのかもしれません。「リィンは私やニェンのような能力を見せていない」とシーも言っているので、彼女のお酒と夢に関する力は分かりにくいもののようです。
 カミの能力を理屈で理解する必要ないんじゃないかなというのが自分のスタンスです。181個のうちの1個が消えたのだということだけわかっていれば、それでいいのかなと思いました。



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