3度目のサザンドラ

元々ポケモンブログでしたがいまはゲーム全般について書いています

【アークナイツ】ストーリー考察/感想 - 塵影に交わる残響 編

 2022年12月27日開始のイベント「塵影に交わる残響」のストーリーを整理していきます。

1. 巫王が遺したもの

1-1. 巫王と双子の女帝

 「塵影に交わる残響」はリターニアの統治者交代の余波がもたらしたお話でした。
 約100年前、選帝侯らは巫王にリターニアの政治を任せました。選帝侯とは国のトップを決める選挙権を持つ貴族たちのことを言うのだと思います。神聖ローマ帝国で同じようなシステムが運用されていました。
 巫王は圧倒的なアーツの力を振るい、恐怖政治でリターニアを治めました。人々は巫王の怒りを買わないように震えながら暮らしていたといいます。機嫌を損ねれば村1つが一瞬で吹き飛んだという逸話も過去のイベントでは出ていました。
 一方、約40年前にガリアが攻めてきたときには、巫王はリターニアを守るために全力で戦いました。彼のアーツは天災のようだったと言われており、出鼻をくじかれたガリアはその後四皇会戦でヴィクトリアとウルサスに滅ぼされてしまいました。
 巫王の治世を終わらせるべく、反巫王派の人々はアーツの研究に没頭し、約20年前についにその時が訪れました。双子の女帝が巫王を打ち倒したのです。彼女らは現在もリターニアを治めています。双子の女帝がどのような方法を使ったのかは誰にも分からないようです。
 名前が出てきませんでしたが、今回ちらっと出てきた荘厳な女性が双子の女帝の「金色のお方」なのではないかと思います。彼女はツェルニーの演奏を聞きたがっていました。「灯火序曲」では双子の女帝はどちらかというと黒の方がより恐ろしいと言われていました。
 巫王の恐怖政治はたくさんの人を虐げた一方で、そのころに戻りたいと活動を続ける人たちがいます。そのままのネーミングですが彼らは「巫王派の残党」と呼ばれています。巫王の力そのものを崇拝する狂信的な人たちと、巫王の統治下で甘い汁をすすっていた連中に大別されます。
 巫王vs双子の女帝の戦いは一見終わっているように見えて、まだ陰で続いているという事実が「塵影に交わる残響」の下敷きにされています。

1-2. 塵界の音の実験

 悲劇の元凶となった塵界の音の実験について。
 巫王派の残党は巫王の残した力を復活させようとしました。双子の女帝と戦う武器にしたかった人もいれば、自分たちが再び名誉ある地位につけるように交渉材料にしたかった人もいたようです。
 巫王はアーツの天才であると同時に稀代の音楽家でした。彼が気まぐれに書いた旋律ですら、大きな力を持っています。それらは1つの楽曲として仕上げたものではなく、側近たちが書き残すことでこの世に残りました。塵界の音と呼ばれている旋律です。
 塵界の音をその身に宿した人間を作り出せば、巫王と同じような強力な術師になるに違いない。巫王派の残党たちは大まじめにそんな野望を抱きました。その実験に適合できるのは、巫王の血を引く生き残りたちだけです。
 双子の女帝は巫王を倒した後、彼の力が再びリターニアを覆うことがないように、彼の一族を徹底的に根絶やしにしました。女帝の声と呼ばれる人たちは双子の女帝に仕える戦力です。巫王派の残党たちは急いで巫王の血統を探し出し、その一部を匿うことに成功しました。
 残党に集められた巫王の血統の中に、クライデとエーベンホルツはいました。彼らはキャプリニーですが、特徴的なねじれたツノが異様な雰囲気を放っています。血縁的に遠くても、巫王の血はツノに現れているようです。
 巫王派の残党たちは15人の生き残りを集め、塵界の音の適合実験を施しました。理論も前例もない実験が上手くいくはずもなく、13番目の実験台までは亡くなりました。
 14番目に実験台にされたクライデは、失敗したものの一命をとりとめました。塵界の音が常に外に漏れだす状態になってしまっています。
 最後に実験台になったエーベンホルツは、塵界の音に適合したように見えました。期待を込めて育てられたのですが、圧倒的な力を持つには至りませんでした。1人の女帝の声と対等に戦えるぐらいがせいぜいだろうと。

1-3. 生き残った2人

 クライデとエーベンホルツがその後どうなったのかについて。
 塵界の声の実験をしていた巫王派の残党のもとに、女帝の声が乗り込んできて、実験場所は壊滅しました。実験場所を発見したのがクライデと一緒にいたおじいさんです。彼は双子の女帝の密偵でした。
 おじいさんは巫王の統治下で無理矢理感染者にさせられてしまったのですが、双子の女帝がタイミングよく巫王を倒してくれたおかげで、命だけは助かりました。以来、双子の女帝に忠誠を誓っています。
 巫王派の残党はいなくなったのですが、生き残った2人の子供の処遇が問題になりました。巫王の血統の生き残りであると同時に、実験体でもあるのです。
 クライデへ施された実験は失敗でした。不完全な状態で塵界の音を身に宿しているクライデは、音を垂れ流しにしている状態で、近くにいる鉱石病患者に影響を与えてしまいます。普通なら殺されてしまうところでしたが、同情したおじいさんはクライデを連れて放浪の旅に出ました。双子の女帝の密偵として、クライデを見張り続けるという使命を負って。
 その旅の途中でクライデは髪の長いサンクタの女性にチェロを教わりました。この人はイグゼキュターが探している親戚の音楽家であるアルトリアなのではないかと思われます。クライデのチェロの腕はかなりのものになりました。彼は先生からチェロをもらったのですが、旅の途中で壊れてしまい、いまは弓しか残っていません。
 一方、エーベンホルツの命は双子の女帝の密偵に利用されました。巫王の遺した塵界の音の実験は失敗したと公表し、民衆の心を落ち着けるためです。エーベンホルツが凡庸な人間として暮らしているのが何よりの証拠になるのです。
 エーベンホルツはウルティカという地で伯爵の地位を与えられました。ウルティカは巫王の故郷です。双子の女帝がエーベンホルツに直接語り掛けている回想がありましたが、そのときにエーベンホルツの一族がウルティカを治めていると言っていました。
 幼いエーベンホルツには伯爵として領地を治めるだけの能力がありませんから、代理人がつきました。それが伯爵代理と呼ばれていた人物です。本来はエーベンホルツが成人したら代理人はお役御免になるはずですが、伯爵代理はいつまでも彼を支配し続けました。
 伯爵代理はお飾りの傀儡伯爵を通して領土を支配して甘い汁をすすっています。エーベンホルツが跡継ぎのないまま亡くなってしまえば、ウルティカの新しい領主になれると踏んでいるのかもしれません。
 双子の女帝はエーベンホルツに期待をかけているかのような発言をしていました。「あなたは悪名高い親族とは完全に異なる道を歩む」と。しかし現状彼は伯爵代理の支配を抜け出すことができず、自由のない暮らしをしています。

2.ゲルトルーデの計画

2-1. ストロッロ一族の苦難

 ここからは「塵影に交わる残響」の舞台に目を移します。
 ヴィセハイムを領地としているのはストロッロ一族です。いまの当主はゲルトルーデですが、因縁は父の時代から始まっていました。
 ゲルトルーデの父は選帝侯の支持を失って領地を減らしてしまい、そのころから巫王派の残党を支援するようになりました。双子の女帝の統治下において、巫王派の残党に接触するのは重罪です。密偵にその事実を掴まれたゲルトルーデの父は、事実を自供しようとしたのですが、残党に口封じされてしまいました。
 父の後を継いで当主となったのはゲルトルーデの兄でした。彼女曰く、無能だった兄は巫王派の残党のいいなりになり、ミスって情報を漏らしそうにもなりました。このまま兄に任せておくとストロッロ一族が滅んでしまうと危惧したゲルトルーデは兄を殺害し、自らが当主となって一族を再興しようとしました。
 巫王派の残党に支配され続けていたストロッロ一族ですが、彼女は逆転の切り札を手に入れました。父が持っていた塵界の音の実験の計画書を偶然発見したのです。巫王派の残党は双子の女帝を倒すための力を欲していますから、塵界の音には強い興味を示しました。
 ゲルトルーデは巫王には興味がありませんし、双子の女帝を倒したいとも思っていません。塵界の音の力を手に入れたいという動機は初めからないのです。彼女は自分の人生をめちゃくちゃにした巫王派の残党に復讐をしたいと考えていました。


2-2. アフターグロー区とは

 ヴィセハイムの中のアフターグロー区について整理していきます。
 ゲルトルーデの父の時代、アフターグロー区は工業区画でした。リターニアでは近年になって感染者の待遇を改善するため、各地に感染者区画が作られています。ゲルトルーデの父はアフターグロー区の工業施設を一掃して、ここを感染者区画にしました。
 アフターグロー区には巫王が建造したアフターグローホールという施設があります。いまは音楽ホールとして使われていますが、もともとはアーツの要塞でした。ゲルトルーデの父はこのホールのことが嫌いだったので、ホールごと周りを感染者区画にしてしまったと言われていました。
 ゲルトルーデの時代になり、アフターグロー区にツェルニーという偉大な音楽家が誕生します。彼は音楽の先生からピアノを教えてもらっているとき、先生の娘と非常に親しい間柄になりました。しかし先生の娘は若くして鉱石病で亡くなってしまい、その悲憤を「夕べの夜明け」という楽曲に昇華しました。
 ゲルトルーデは純粋にツェルニーの才能にほれ込みました。領主の力を使って夕べの夜明けをリターニア中に売り込んだ彼女のおかげで、ツェルニーは感染者ながら音楽家としての名声を手に入れました。ツェルニーはアフターグロー区に積極的に関わり、工業を奪われてしまったこの感染者区画に、音楽という新しい産業を興すことに成功したのです。
 ツェルニーとゲルトルーテは最初のうちは良い関係だったそうですが、音楽を道具としか見ていないゲルトルーデとツェルニーは対立していきました。

2-3. 集いし因縁

 「塵影に交わる残響」はゲルトルーデの復讐劇だったといえます。彼女の計画をみていきましょう。
 ゲルトルーデの最終目標は巫王派の残党に復讐することです。アフターグローホールに奴らを集め、塵界の音の力で殺そうとしました。
 そのためには塵界の音を身に宿すエーベンホルツとクライデが必要です。最初にアフターグロー区にやってきたのはクライデでしたが、彼がここに来たのは偶然ではありませんでした。
 アフターグロー区にはビーグラーという双子の女帝の密偵が長年にわたって潜んでいました。彼はストロッロ一族の不審な動きを監視していました。ゲルトルーデが塵界の音の実験を再開させ、その研究が進捗していくことに危機感を抱いていました。
 研究が完璧に仕上がってしまうとどんなことが起きるのかわかりません。ゲルトルーデがクライデの消息を掴みつつあるという情報もあったため、ビーグラーはクライデとおじいさんをアフターグロー区に招きました。ゲルトルーデに早まった判断をさせるためです。クライデがツェルニーの演奏会で報酬がもらえると勘違いしていたのはビーグラーに嘘を吹き込まれたからです。
 もう1人の塵界の音の持ち主は、ウルティカ伯爵として不自由な暮らしをしているエーベンホルツです。彼を自由にするという対価をちらつかせて、ゲルトルーデは彼をアフターグロー区に招きました。自由を手に入れたいエーベンホルツは、ゲルトルーデの申し出に当初は乗り気だったのです。
 アフターグローホールに巫王派の残党を集め、クライデとエーベンホルツが演奏をすれば大惨事になるというのがゲルトルーデの作戦でした。パトロンをしているツェルニーを操り、演奏会を開けば復讐が成就するという計画でした。 

3.アフターグロー区の戦い

3-1. 計画書を巡って

 「塵影に交わる残響」の本筋の時系列に入っていきます。
 アフターグロー区での感染者の異常回復現象を調査するために、ロドス本艦からハイビスカスがやってきたのがスタートでした。彼女は成長した姿だったため、少なくとも画中人や将進酒と同じぐらいの時系列だったものと考えられます。
 ハイビスカスは音楽には詳しくありませんが、感染者治療の知見から塵界の音に近づきつつありました。計画に邪魔が入ることを恐れたゲルトルーデは、ラハマンと予言を使ってハイビスカスを追い出そうとしました。
 予言ごときでハイビスカスを追い出すことはできませんでした。ゲルトルーデ本人も上手くいくとは思っていなかったと言っていましたね。
 ラハマンを使ったことは思わぬ裏目を生みました。エーベンホルツとビーグラーはラハマンを追跡し、下水道の拠点で塵界の音の計画書を発見したのです。
 双子の女帝の密偵の同業者であるおじいさんはこの計画書を盗み、ツェルニーに提供しました。音楽家であるツェルニーは計画書から塵界の音の概要を把握します。ゲルトルーデの計画を打ち破る準備も進みつつありました。
 

3-2. 最後の演奏

 塵界の音を摘出方法を掴んだツェルニー、エーベンホルツ、クライデは演奏を行いました。
 ツェルニーたちは塵界の音の対処方法に勝機を見出したから演奏に臨んだわけですが、結局それはゲルトルーデの計画通りでもありました。エーベンホルツがクライデを救おうとする限り、彼女の計画は成功するだろうという賭けだったのだと言っていました。
 塵界の音がなんたるかを理解したツェルニーは、巫王を超えるのではなく、自分自身と向き合うことで「光影」という曲を生み出し、エーベンホルツとクライデから塵界の音を摘出を目指しました。
 アフターグローホールでの演奏でそれは見事に実現するのですが、2つの阻害要因がありました。1つがゲルトルーデがハープでこの演奏に参加し、塵界の音の摘出をかく乱したこと。もう1つが彼女がアフターグローホールを改造し、塵界の音の共鳴を増幅したことです。出力が大きくなりすぎた塵界の音は制御不能の状態に陥りました。
 エーベンホルツは捨て身で塵界の音を自分の身体に引き寄せようとしたのですが、「光影」という楽曲はエーベンホルツのフルートからスタートしていたため、楽曲をひっくり返してまで支配権を得ることができません。
 結局クライデが塵界の音を引き受けることになりました。ハープとアフターグローホールの力で出力が増した塵界の音をコントロールすることはできず、クライデは化け物になってしまいました。
 しかしクライデは前を向いていました。これまでの2人の人生は不幸だったかもしれないが、背負った運命に抗うことができて幸せだったと。エーベンホルツは力を振り絞ってクライデを撃破して、最悪の事態を防ぐことができました。

3-3. その後

 事件のあとで何がおきたのか。
 領主のゲルトルーデが亡くなり、アフターグロー区は今後の去就が心配されました。公爵が干渉してくることを住人は恐れていたのですが、女帝の声が介入してきました。この裏にはロドスの交渉があったようです。感染者地区として感染者の住人が暮らし続けられるように取り計らったものと思われます。
 エーベンホルツがロドスにきた経緯は詳細には語られませんでした。彼はウルティカ伯爵として監視される生活に戻ることを貴族に要求されていましたが、ロドスに来ることができました。
 その手助けをした人物から手紙が届くシーンで「塵影に交わる残響」は終わりました。リターニアの平民エーベンホルツの偽装パスポートと、ウルティカ伯爵の偽物の死亡診断書が入っていました。ウルティカ伯爵は死んだことになり、エーベンホルツは平民として暮らせることになったようでした。
 署名のない手紙は彼女のイメージ通りだとエーベンホルツは言っていました。この人が誰だったのかはわかりません。ウルティカ伯爵が共通の敵だと手紙には書いてあったので、双子の女帝側の人物なのではないかと思います。偽物のパスポートを発行できるあたりかなり偉い人だろうということで、双子の女帝本人だったりするのでしょうか…。


感想

 ここからはただの感想です。
 「塵影に交わる残響」を読み進めていくとき、クライデに突き刺さった巨大な死亡フラグがなんとかしてへし折れないものかと祈るような気持ちになりました。その祈りは届かないどころか、我々自身の手でクライデと決着をつけねばならないという悲劇的なクライマックスが用意されていたことには唸りました。さすがはアークナイツ。
 ただ、クライデは戦闘中に一瞬だけ自我を取り戻し、一緒に敵を攻撃してくれます。EXステージの方ではクライデの攻撃をどれだけ有効活用できるかが作戦の成否にかかわってくるため、演出のためだけではない仕様が考え抜かれていました。こちらもさすがと言うべきでしょう。
 クライデがエーベンホルツに語り掛けた内容も、私個人の予想を超えてきました。塵界の音の実験は間違いなく彼ら2人にとっての悲劇。すべての元凶。しかしそれがもたらした困難な道のりの果てに、2人一緒に運命に立ち向かったことをクライデは幸せだったと表現したのですね。本当にびっくりしました。
 エーベンホルツが巫王の幻影を打ち払ったあとで、クライデが遺した言葉も印象的でした。

クライデ:「あなたは自分の良心に従って行動するときに遭遇した障害について僕にぶちまけて、運命はやはり自分の味方をしてくれないと文句を言うでしょう。でも大丈夫です。僕はあなたのどんな言葉にも耳を傾けますから」

 ほんの短い付き合いなのに、エーベンホルツのことを完璧に理解し、これから彼がどんな人生を歩むのかも考えて、適切な言葉を贈っているのです。こんなに優しい人間がいるだろうか、こんなに温かい友情があるだろうかと感動しました。
 今後我々がエーベンホルツをロドスで見るとき、そこにクライデの影を見ることになるでしょう。エーベンホルツ本人は頭に埋め込まれた巫王の旋律を気にしているでしょうが、我々からはそんなもの気にならないぐらい、クライデが遺したものは大きいなと感じました。



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