3度目のサザンドラ

元々ポケモンブログでしたがいまはゲーム全般について書いています

【アークナイツ】ストーリー考察/感想 - 狂人号 編

 2022年11月3日開始のイベント「狂人号」のストーリーを整理していきます。

1. エーギルの過去

1-1. エーギルと海の怪物

 まずはエーギルという国について簡単におさらいです。
 エーギルというのは国の名前であり、種族の名前でもあります。海の下にある巨大な国家で、都市は巨大な透明のドームで覆われています。
 科学者と技術者が国を治めるという変わった統治体制を持っていて、政治に関わる身分の人はそれぞれ科学執政官と技術執政官と呼ばれています。科学と技術が国の根幹にあるため、テラの地上の国家とは比べ物にならないほどテクノロジーが進んでいます。今回登場したリトル・ハンディのような自動機械が国中に溢れているそうです。
 今回新たに出てきた情報としては科学アカデミーという機関があるとのことでした。学術機関のようです。
 海の中にはエーギルの他に海の怪物がいます。群体として生きて進化し続けるこの怪物は、人類とは異なる生命体です。下等な個体は恐魚、少し進化している個体はシーボーンと呼び分けられますが、基本的には同じ怪物の仲間です。
 エーギルの都市はシーボーンの侵攻に脅かされるようになりました。


1-2. アビサルハンターと深海教会

 エーギルは技術でシーボーンに対抗しようとします。
 その手段の1つがアビサルハンターでした。シーボーンが驚異的な生命体であるならば、それを取り込んだ人間を生み出してしまえばよいというマッドな考え方です。詳細はまだ不明ですが、アビサルハンターたちはその身にシーボーンの血を取り込んだと言われています。
 シーボーンの力を宿したおかげで、アビサルハンターの戦闘力は常人を遥かに上回り、シーボーンと互角に戦えるようになりました。一方、知能の低いシーボーンはアビサルハンターの体内に同胞が囚われていると勘違いして攻撃を仕掛けてきます。
 グレイディーアはアビサルハンターの総戦略設計士という立場にいました。戦略を考える軍師のトップだったようです。
 シーボーンと必死に戦う人たちがいる一方で、シーボーンとお仲間になろうとする人たちも現れました。それが深海教会です。彼らはシーボーンを神と崇めています。エーギルの都市にシーボーンが攻め入る手引きをしたとも言われていました。
 深海教会には3人の司教がいました。1人目は「潮汐の下」のボスとして登場したクイントゥス。2人目が「狂人号」で登場したアマイア。3人目はまだ出てきていません。
 アビサルハンターたちは故郷を破壊したシーボーンを憎むとともに、深海教会も敵視しています。

1-3. 最後の戦争

 シーボーンの勢力が拡大していくことを黙って見ているわけにはいかないということで、とあるタイミングでアビサルハンターたちは決戦を挑みました。この戦いでアビサルハンターは壊滅したので、最後の戦争になってしまいました。
 アビサルハンターはシーボーンの本拠地に攻め入ったようで、シーボーンたちも決死の抵抗を見せました。出撃したアビサルハンターはほぼ全滅しましたが、唯一スカジだけが「あれ」と呼ばれるシーボーンの神のような存在に肉薄することに成功しました。「潮汐の下」で語られていましたが、「あれ」はスカジを前にしてほとんど抵抗することなく切り伏せられ、海底に沈んでいきました。
 第一隊と第四隊はチャンスを作ってくれて全滅。巣の近くで待機していた第二隊のグレイディーアとスペクターはなんとか生き延びました。スカジだけが突入できた第三隊も全滅したと思われていたのですが、隊長のウルピアヌスが生きていたということが「狂人号」でわかりました。

1-4. スペクターの人体実験

 生き延びたスペクターがどのように過ごしていたのかということについて。
 スペクターの本名はローレンティーナと言います。最後の戦争のあと、彼女は陸に打ち上げられました。アマイアが偶然倒れている彼女を発見したとき、深海司教たちは大いに喜びました。シーボーンの血を取り込んで平然と生きているアビサルハンターたちは、彼らからすれば完全な生命体。ぜひとも研究をしたかったのですね。逆に言うとアビサルハンターが誕生する仕組みは、多くのエーギルにとっては秘密にされているようです。
 深海司教たちは早いタイミングで海中から陸地に来ていたようで、陸地の源石技術を操ることができました。アビサルハンターが鉱石病に罹患するのかを調べたかったのか、アーツが使えるようになるのかを調べたかったのか、スペクターの髄液に高濃度の源石液を注入してしまったのです。
 このときの実験で、アマイアはローレンティーナの精神状態を記録する役割でした。ローレンティーナとたくさんおしゃべりしたと言っていたのは、精神状態をチェックするためだったのでしょう。
 クイントゥスは実験以外眼中になかったとアマイアが言っていたので、実験をメインで担当する研究者だったということでしょうか。まだ姿が出ていない3人目は、司教ではなくお医者さんなのだと言われていました。ローレンティーナの手術の執刀医だったとのことです。
 ローレンティーナは実験によって人格が変わってしまいました。そのあと何が起きたのかはわかりませんが、深海教会のもとを逃げ出し、ロドスに逃げ込んできます。それがいままで前衛オペレーターとして実装されていたスペクターの姿です。修道女の姿をしたスペクターは、元の人格とは異なり無口です。
 スペクターには高濃度の源石液が注入されていて、一定の感染水準にありますが、不思議なことに感染はそれ以上は悪化していきません。その理由はアビサルハンターとして取り込まれたシーボーンの部分が、源石の拡大を防ぐのだと明らかにされました。スカジやグレイディーアの血液中源石密度が極端に低いのも同じ理由でしょう。シーボーンは源石に抗うことができるのですね。


1-5. ウルピアヌスが見たもの

 死んだと思われていたウルピアヌスについて。
 ウルピアヌスは最後の戦争で傷を負い、海溝の奥深くへと落ちていきました。そこはエーギルにとっては未知の領域。シーボーンの巣の真下だったのでしょうか。
 ウルピアヌスはそこで神殿のような建築物を目にしました。シーボーンがそんな高度なものを作れるのでしょうか。それはエーギルが数千年前に見つけた文明の起源なのではと疑っていました。シーボーンの歴史はエーギルのそれよりも古いとも言われていました。
 神殿の中には入れなかったようですが、そこにはシーボーンの胎児と、「あれ」が何体もいたそうです。胎児たちはIshar-mlaの名を口にしていたとウルピアヌスは語っていました。
 ウルピアヌスはアビサルハンターで唯一この情報を握ったまま、陸地に上がり1人で活動をしていました。グレイディーアやスカジが生き延びたことは知っている様子でしたが、この神殿を見てしまったことで、彼女たちとは別行動をしなくてはいけないと思ったのでしょう。「狂人号」でようやく彼らが再び相まみえることになりました。


2. イベリアの過去

2-1. イベリアの黄金時代

 次にイベリアという国を見ていきます。大昔のイベリアの話からスタートです。
 シーボーンがじわじわとエーギルの都市を侵略し始めたころ、一部のエーギル人たちは海から陸へと避難してきました。エーギルから一番近いところにあったのがイベリアだったらしく、上陸したエーギル人はイベリアに住み着き、島民と呼ばれるようになりました。
 エーギルの科学技術は陸上国家の遥か先を進んでいました。陸へと逃げてきたエーギル人がもたらした技術は、イベリアを大きく発展させます。イベリアの黄金時代の幕開けです。
 イベリアはテラ全土を横断して、ボリバルまで進軍したことがあったそうです。「ドッソレスホリデー」にて、ボリバルの歴史を紐解くと元々の支配者はイベリアだったと言われていましたが、その意味がようやくわかりました。ドッソレスの人工の海にはイベリアの技術を復元した船が浮かんでいましたが、この時代にもたらされた技術だったのでしょう。
 イベリアの黄金期は大いなる静謐という大災害が起きるまで続きました。

2-2. ブレオガンの陸上探索

 大いなる静謐が起きる前、陸に上がってきたブレオガンという1人のエーギル人が、物語のカギを握っています。
 ブレオガンはシーボーンの脅威を予期していました。あと10年もするとエーギルの都市はシーボーンに包囲されてしまう。にもかかわらず傲慢なエーギルは自分たちの勝利を疑っていません。そんなタイミングで活路を求めて陸に上がってきて、シーボーンと戦う武器を求めました。ブレオガンは科学アカデミーが誇る天才だったと言われていたことから、科学者なのだと考えられます。
 「狂人号」のイベント2週目に解放された「古びた手記」というステージは、ブレオガンに付き添ってエーギルからイベリアにやってきた男性が書き残したものです。この人はブレオガンと一緒にテラの大地を回りました。絵が上手だったので、挿絵つきでブレオガンとの旅の様子が描かれています。陸の人々はエーギルと比べれば貧弱ですが、源石の力を使いこなしていたことに関しては一定の評価をしていました。
 ブレオガンたちは巨獣と出会います。テラの大地に古から生きる伝説的存在。海の敵と似ている所があると書き残していました。
 ブレオガン一行は10年ほどかけてテラを探索しました。その中で、預言者・神の使い・祭司と呼ばれる特別な数名と出会ったことが特筆されていました。ブレオガンはその中でも名前が発音しにくい1人と長いこと話し込んだそうです。
 「帰還!密林の長」に大祭司と呼ばれる鳥が出てきました。エンペラーやダック卿と同じく悠久の時を生きる謎の存在。ブレオガンが出会ったのは彼らなのではないかなと自分は予想していますが、根拠はありません。名前が発音しにくいというヒントもよくわかりません。


2-3. ブレオガンが遺したもの

 長い旅を経てブレオガンたちはイベリアに戻ってきました。ブレオガンは「狂人号」のストーリーに繋がる重要なものを遺します。
 1つはイベリアの眼。エーギルの技術を詰め込んだ灯台です。エーギルの通信装置が組み込まれていて、イベリアとエーギルを繋ぐ存在です。そしてもう1つがスタルティフィラです。他に類を見ない素晴らしい戦艦です。
 ブレオガンがこれらを作ったのは、偉大なる計画の一部だとのことでした。その計画にはカルメンとアルフォンソも加わっていて、シーボーンへの対抗を目指したのではないかと考えられます。
 ブレオガンはスタルティフィラの中に宝物庫を作り、そこに入るためのカギを遺しました。宝物庫の中には彼が陸地で見つけた技術と、エーギルから持ってきた技術を融合させた成果物が納められていました。
 大事な宝物庫のカギには細工がしてありました。このカギは血を吸わないと機能しません。ただ、少し不可解な点としては、「騎兵と狩人」で見たように現在このカギはグラニの血で起動されているということです。エーギルとは何の関係もない、普通のクランタ人の血です。カギさえ手に入れれば、この宝物庫は誰でも開けられるようになっていたのです。
 ブレオガンはイベリアに手がかりを遺したくて、このようなことをしたのではないかなと思います。一体何を思い描いて、何を後世に残したのでしょう。グレイディーアとウルピアヌスは「狂人号」の中でこの宝物庫からヒントを得ました。それが今後へと繋がっていくのだと思います。
 アルフォンソを船長として、スタルティフィラは大艦隊を率いて出航しました。その数日後に大いなる静謐がやってきます。巨大な大波によって艦隊は壊滅。スタルティフィラ以外の船はすべて海の藻屑になってしまいました。イベリアも大きな被害を受けて苦難の時代へと突入します。
 大いなる静謐はエーギルと関係があるのではないかとイベリアの人々は疑い、ブレオガンは酷い目に遭いました。彼が受けた苦難がイベント3週目に公開された「鏡写しの映像」の部分です。イベリア人のために様々な技術を提供したブレオガンでしたが、最後は彼らに疎まれて殺されてしまったようでした。



2-4. 国教会から裁判所へ

 大いなる静謐はイベリアの大きな転換点となり、国を治める体制も変化していきました。
 大いなる静謐がやってくる前、イベリアの政治の中心はイベリア国教会でした。ラテラーノ教皇を頂点としたラテラーノ教から派生した宗派なのですが、教皇庁からは一定の距離を置くことで法の拘束を避けていました。イベリアが黄金期を迎えていたこともあり、独自の方向性を探っていたのですね。
 しかしイベリア国教会という組織はイベリア国内を掌握しきるほどの力を持っていたわけではなさそうでした。貧弱なイベリアの王族にすら権力争いでは勝てなかったとのこと。
 大いなる静謐がやってきてイベリア国内はめちゃくちゃになりました。人々は黄金期の幻想を引きずったまま惨めに暮らしています。イベリア国教会は裁判所へと名前を変えて、体制を変化させていきます。
 裁判所の初代の構成員は9人いました(アイリーニのプロファイルだと12名?)。ラテラーノ教と同様の体制を作るならトップは教皇を名乗るのですが、彼らはそうすることを選ばず、聖徒と名乗りました。自らの名前を捨てて、それぞれが「イベリア」を名前の一部に入れました。聖徒カルメンは正式にはカルメン・イ・イベリアと名乗っています。
 大いなる静謐は1038年の出来事でした。「闇散らす火花」が1098年の出来事だったので、大体60年前の出来事です。その間にカルメン以外の聖徒は全員亡くなってしまいました。カルメンは現在123歳。普通のリーベリならとっくに寿命を迎えている年齢なのですが、裁判所がなんらかの延命措置を行っているのではとケルシーが指摘をしていました。詳細は不明です。
 裁判所にはとある秘密があります。裁判所の地下には一匹のシーボーンが囚われていて、審問官がイベリアの現実と向き合うためにそのシーボーンと向き合っているようでした。アイリーニは師匠のダリオに連れられてこのシーボーンと対面し、身振り手振りだけで意思疎通が行われたのだと驚いていました。

3. 狂人号の時系列

3-1. グランファーロの悲劇

 前提はここまでにして、「狂人号」の現在の時系列を見ていきます。大いなる静謐が起きた後のグランファーロという街について。
 大いなる静謐はイベリアの海岸線をことごとく破壊しました。しかしブレオガンが作ったイベリアの眼だけはそれを耐えました。この灯台に一番近い町がグランファーロでした。街の中心にはイベリアの眼を模した彫刻があります。
 グランファーロの人々はイベリアの眼を復活させようと奮闘していました。ジョディの両親もその一員でした。灯台技師だった2人はイベリアの眼の修理のために海に漕ぎだしたのですが、ついに戻ることはありませんでした。両親に先立たれたジョディの親代わりとなったのがティアゴでした。
 20年ぐらい前まではジョディの両親のようなエーギルがグランファーロの街にたくさん住んでいました。しかし、イベリアの眼に近いこの街には深海教徒たちも潜んでいました。彼らはイベリアの眼を海へ繋がるものとみなし、掌握するかできなければ破壊してしまおうとしていました。
 裁判所はイベリアを蝕む深海教会を邪教として根絶しようとしています。グランファーロを要塞化する計画を持っていた裁判所は、深海教会をこの地から追い出すべく、大規模な粛清を行いました。
 その際、多くのエーギル人が捕らえられたのですが、その中にはティアゴの妻のマリーンというエーギルの女性がいました。マリーンはグランファーロの深海教徒たちのリーダー的存在でした。裁判所は彼女のことを捕まえ、二度と街に戻すことはありませんでした。ティアゴが裁判所を強く恨んでいるのはこのためです。
 しかし、ティアゴは深海教徒たちがこの街に潜んでいることもわかっていました。マリーンの正体には気づいていない様子でしたが、真相はどうだったのでしょうか。個人的な感情とイベリア全体の利益の中で、彼の心は揺れていたのだと思います。


3-2. ケルシーが繋げた人たち

 「狂人号」の物語を動かしていくきっかけになるのはケルシーの意志でした。
 「潮汐の下」でグレイディーアとスカジはスペクターを救い出しますが、サルヴィエントという街がめちゃくちゃになってしまいました。その責任をとる形で、ケルシーはイベリアの囚人となり、カルメンに連行されるという形でグランファーロへとやってきました。
 カルメンとケルシーは長い旅路の中で多くの問答を行い、海の脅威を取り除きたいという共通の目的の下に利害が一致しました。カルメンはイベリアを守るためですが、ケルシーはテラという大地全体を守るための行動で、よくよく解きほぐすと最終目的はズレていますが、方向性は同じです。ケルシーはカルメンにシーボーンを倒す方法を約束しました。
 ケルシーは2つの勢力を呼び寄せて、これを成し遂げようとします。1つがアビサルハンター。もう1つがAUSです。Miseryを経由し、通信が得意なエリジウムに補佐を依頼していたようでした。
 アビサルハンターたちはエーギルに帰ろうとしていました。ただ帰るだけなら実行できたかもしれませんが、シーボーンに支配されてしまった水中都市を解放せねばなりません。彼女たちもまた、シーボーンを倒す方法を探しているのです。サルヴィエントでの出来事については、グレイディーアはケルシーに感謝していました。自分たちのために何らかチャンスを作ろうとしてくれているのだと認識しています。
 一方で、AUSの目的はわかりません。答えを探しているという曖昧な記述に留まるのみでした。「青く燃ゆる心」でAltyがロドス号に乗り込んできたとき、ケルシーはスカジが滴水村で探し出したカギを渡しました。今回はそのカギが必要になったので、グランファーロに来てくれと呼び寄せていたようでした。なぜわざわざAUSの手を経由させたのでしょうね。
 AUSはいままでエーギル人を名乗っていましたが、カルメンとケルシーは彼女たちが巨獣の一部なのだと明言していました。AUSには陸地に同族がいるとケルシーはグレイディーアに伝えていたので、隠しておくつもりはないようです。陸にいる同族というのはニェンたちのことでしょう。ロドスにいますから、グレイディーアには説明がしやすかったのかもしれません。
 イベリアの眼を経由してスタルティフィラを目指すという道筋が描かれました。これを実現するには裁判所のサポートも必要です。カルメンはダリオとアイリーニを招集し、任務を与えました。AUSが持ってきたカギはグレイディーアに預けられました。また、ブレオガンの子孫であるとケルシーが嘘をついてジョディも作戦に参加することになりました。彼らの交渉はまとまり、スタルティフィラへと至る旅が始まります。


3-3. イベリアの眼からスタルティフィラへ

 物語の舞台は最終的にスタルティフィラへと移っていくのですが、それぞれの中継地点でやるべきことがありました。
 ケルシーとカルメンはグランファーロに残って深海教徒の片づけを優先しました。Mon3trの火炎放射と懲罰軍が持つエーギルの技術で深海教徒が使う溟痕を取り除くことができます。グランファーロは昔からイベリアの眼に近い要所です。裁判所がこの街を抑えておく必要があると判断したのでしょう。
 グランファーロから50海里(約90km)ほど海を進んだところにイベリアの眼はあります。ジョディがノートを頼りに灯台のシステムを起動させて、スタルティフィラを発見することができました。両親が命を賭して復活させようとしたイベリアの眼に、ジョディは残ることを決めました。大審問官ダリオが恐魚たちから守ってくれます。
 スタルティフィラには先客がいました。アマイアとウルピアヌスです。ウルピアヌスにとってアマイアは憎き敵なのですが、グレイディーアよりも先にたどり着きたいという意図で行動を共にしていました。
 グレイディーアはケルシーからカギを受け取り、これを使ってスタルティフィラの宝物庫を開こうとします。

3-4. グランファーロを守る戦い

 グランファーロの戦いの決着から見ていきます。裁判所と深海教会の戦いの間で、町長であるティアゴの運命は最期まで翻弄されることになりました。
 裁判所のスパイが深海教会に潜り込んでいたため、グランファーロの深海教会に戦術的な優位はほとんどありません。アマイアがスタルティフィラに向かってしまったため、支柱となる人物もいません。唯一の武器となるのは溟痕ぐらいでしょうか。
 深海教徒たちはシーボーンを神と崇めていますから、個として生きることよりも、群体として進化することを重要視しています。自分たちが裁判所に殺されることは気にしません。アマイアが無事にスタルティフィラに向かったいま、街を奪いたいと考えてはいるものの、実力が伴いません。
 ティアゴは深海教徒がグランファーロに潜んでいることを知っていました。深海教会は故郷を踏みにじった敵だと認識しています。その一方で、愛するマリーンを連れていかれた恨みがあるので裁判所にも非協力的です。複雑な心境を抱いたまま、ティアゴは深海教徒に殺されて息を引き取ることになりました。生きていたとしても、反逆の罪で裁判所から処罰を受けたことにはなったでしょう。
 深海教徒を追い出した裁判所は、ここに前線基地を建てることになりました。


3-5. 最後の騎士

 イベリアの眼とスタルティフィラに現れた最後の騎士とは何者だったのか。
 最後の騎士は昔は人間でしたが、いまはシーボーンになってしまっています。アルフォンソと知り合いのようだったので、同じぐらいの時代を生きた人だったのかもしれません。アルフォンソは「ザクロの樹下のアルフォンソ」という異名を持つため、最後の騎士は「ザクロの花よ」と呼び掛けていました。
 スタルティフィラにはブレオガンが遺した宝物庫があります。そのカギは船員の1人が持っていたのですが、その人がシーボーンに飲み込まれて正気を失ったとき、アルフォンソはカギを海へと捨てました。それが50年前ぐらいの話。
 最後の騎士の生い立ちはカジミエーシュの騎士小説を参照するしかありません。イベリアにやってきた最後の騎士は大波へと立ち向かい海に消えました。浜辺に打ち上げられた形見を家族がカジミエーシュに持ち帰ったとされていて、そこに宝物庫のカギがあったようです。最後の騎士が海中で拾って、浜辺に置いたということなのでしょうか。
 カジミエーシュでは、征戦騎士が亡くなると莫大な遺産とともに埋葬される風習があります。最後の騎士の形見は滴水村付近に埋められ、「騎兵と狩人」でスカジが発見することになりました。エーギルは海の匂いに敏感なので見つけられたのではないかとケルシーが言っていました。
 宝物庫のカギの変遷については一応の理屈は通るものの、最後の騎士の伝承に頼る部分があるので事実なのかは確証が得られません。今後神秘のベールが剥がれるときがくるかもしれません。
 最後の騎士と一緒にいたロシナンテという生物も謎の存在です。馬がシーボーンになったような外見をしています。
 ロシナンテという名は小説「ドン・キホーテ」の主人公の馬の名前と同じです。騎士道物語の読みすぎで自分が騎士だと勘違いしたドン・キホーテというキャラクターは、最後の騎士のモチーフになっているのだと思います。イベリアの眼に攻撃をしかけた彼の姿は、風車を巨人だと勘違いして攻撃したドン・キホーテのエピソードに重なります。
 ウルピアヌスが最後の騎士に親しげに話しかけているシーンもありました。大波を砕くことに執着する最後の騎士に対して、登場人物たちは一定の敬意を持って接しているように思いました。今後もどこかで出てくるのでしょうか。


3-6. ディヴィニティエンドとIshar-mla

 スタルティフィラには1匹のシーボーンが乗り込んできていました。アルフォンソがこれを狩ろうとしているところに、アビサルハンターとアイリーニたちが侵入してきた形となりました。
 スタルティフィラは大いなる静謐の大波でも沈まず、60年間も海の上を漂い続けてきました。普通なら陸地に打ち上げられたり、浸水して沈んだり、シーボーンたちに襲われたりするはずです。なぜ無事だったかというと、シーボーンがスタルティフィラの存在を認めていたからです。海に適応できない同胞を受容していたこの船は、浮かべておく価値があると思われていたのですね。
 ディヴィニティエンドという名前のこのシーボーンには環境を構築するという使命があります。シーボーンにとってより良い環境、より進化しやすい環境を作り出したいと考えていたのでしょう。
 ディヴィニティエンドはアルフォンソやアイリーニから攻撃を受けて傷を負いますが、アマイアを捕食して飛躍的な進化を遂げました。アマイアはリーベリなので羽が生えてきています。
 ディヴィニティエンドがスカジに問いかける内容が解釈の難しい部分です。「狂人号」ではIshar-mlaという名前が至るところに登場するのですが、それがなんなのかよくわかりません。恐魚を食べて半身が怪物になったアルフォンソですらその名を知っていますし、スカジ自身も名前が持つ意味は理解しているようでした。
 ディヴィニティエンドが探している「あの方」はスカジが昔倒したシーボーンの神だと思うのですが、それとIshar-mlaが同等の存在なのかはっきりしないのですね。「あれ」は複数いるのだとウルピアヌスが言っていたため、「あれ」の中の1つがIshar-mlaなのかもしれません。
 スカジによって倒された「あれ」はスカジの中に宿ってしまったようで、それが原因でスカジはいずれシーボーンの上位個体に成り果てしまうぞとウルピアヌスは警告を発していました。そのときはスカジを殺すしかないと。
 濁心スカジはいまのスカジとは異なるIFの存在であると考えられますが、ウルピアヌスが恐れる最終段階があの姿なのかもしれません。「もうすぐ空気中を泳げる」だとか、「身体を流れるのが血液ではなくなった」とか、化け物じみたことを言っています。異格オペレーターの姿を通じて、起こりうる1つの未来を具現化しているのかもしれません。
 ディヴィニティエンドはアビサルハンター4人+アルフォンソ+ガルシア+アイリーニでようやく撃退することができました。シーボーンがこれ以上進化を重ねていったらどうなってしまうのでしょうね。

4. 今後へ

4-1. エーギル奪還へ

 グレイディーアたちの目的は明確です。エーギルをシーボーンの手から取り戻すことです。
 ウルピアヌスも同じゴールを描いていますが、グレイディーアと比べると慎重派です。海溝に落ちて「あれ」が複数いることを目撃して、敵の強大さを身に染みて理解しているからです。答えを得るまでは何をしても無駄だろうと言っていました。
 ウルピアヌスは「あれ」の正体に対して仮説を持っています。その仮説はブレオガンが辿り着いた結論と近く、宝物庫に入っていたものが根拠になると考えているようです。
 ブレオガンは「あれ」を海神(かいしん?わたつみ?)と呼びました。この呼び方はエーギルでは使われておらず、陸地の狂信者がこの呼び方を使っていたのだそうです。海神の存在を認知し、それを信仰するに至った陸地の人がいるようです。陸に上がった深海教会ということなのか、さらに別のグループがあるのか。
 グレイディーアも宝物庫の中のものを見るとともに、「狂人号」での出来事を通してある程度考えを改めたみたいです。最後の戦争でスカジが「あれ」を1体倒したけれど、それは一部に過ぎないと言っていました。
 スタルティフィラが沈んだときに、海面下に見えたエーギルの都市についても、いますぐ帰ったとしても何もできないだろうと諦めていました。本来はこんなに陸地のすぐそばにエーギルの都市はなかったはずで、シーボーンの侵攻が予想以上に激しく、陸に近いところに避難してきたのだと考えられます。
 グレイディーアたちがエーギルを奪還していく過程が、今後のエーギルイベントの1つの方向性になっていきそうです。


4-2. 巨獣と海神

 エーギルを奪還するためには、ブレオガンが見つけたものを紐解いていく必要がありそうです。
 ブレオガンは陸を探索した結果、地上に住まう巨獣と海を支配する海神の間に繋がりをみつけました。ケルシーはその考えを発展させて、海から来た巨獣であるAUSの4人が大きな手掛かりだと考えている様子でした。
 AUSのメンバーはただのバンドマンに見えるのですが、さすが巨獣とでもいうべき超常な力を持っています。ジョディがイベリアの眼から沈没したスタルティフィラへ向けて小舟で漕ぎだした終盤のシーンでそれが発揮されました。広い海の中でアビサルハンターたちを見つけることなんて普通は不可能なのですが、Frostが助けてくれたので無事にみんなを救出することができました。波の行く先を操ることができるようです。
 シーボーンや恐魚はAUSの4人に干渉しません。海には腐った末裔たちがいて環境を変えていることや、Frostが岩の奥で生まれたことなども語られましたが、この4人の生態はよくわからないことだらけです。海に関連する勢力の中で、どういう立ち位置を占めることになるのかが気になります。
 ケルシーはFrostに対して、いずれ真の意味で協力することができると言っていました。AUSの4人もなんらかの問題を抱えている様子だったので、ロドスと一緒にそれを解決するお話が今後描かれていくでしょうか。


4-3. ロドスと裁判所の架け橋

 最後に、ロドスとイベリアの今後について。ロドスは優秀な人材を新たに2人オペレーターに加えました。
 1人目はジョディ。彼は星6オペレーターにしては珍しく、本当にただの一般人です。ただ、多くを知ってしまったこともあり、カルメンは彼を裁判所の一員にします。いままでエーギル族の人間が裁判所のメンバーになったことはないので、いばらの道を切り開くことになります。
 ジョディは裁判所の人間でありつつ、イベリアに駐在するロドスのオペレーターにもなりました。2つの身分を同時に手に入れ、突然忙しい日々に放り込まれたのではないかと思います。
 2人目はアイリーニです。彼女は審問官の地位を捨て、裁判所のトランスポーターとしてロドスのオペレーターになりました。審問官という地位ではアビサルハンターたちと行動を共にするのが難しいのですね。
 亡くなった師匠ダリオの意志を継いで、大審問官を目指すという道も考えられたとは思うのですが、彼女はそれよりも大きなものを目指しました。海の脅威を打破してイベリアを守ること。師匠に言われたようにイベリアの砦となるべく彼女は奮闘していくことでしょう。
 というわけでロドスはいままでコネクションがほとんどなかったイベリアの裁判所に後ろ盾を作ることができました。スタルティフィラは沈んでしまい、ダリオを失った裁判所でしたが、今後はロドスと協力して海の脅威に立ち向かっていけるのではないかと思います。


感想

 ここからはただの感想です。
 「狂人号」は人間の傲慢さを巡る物語だったなと感じました。自らの科学技術におごったエーギルの傲慢、エーギルがもたらした技術におごった黄金期のイベリアの傲慢、超人的な戦闘能力におごったアビサルハンターの傲慢。至る所で人々の傲慢さが自らを滅ぼしたという話がでてきたように思いました。
 一方で、海の怪物は傲慢さとは対極の存在です。奴らには個がありません。種族全体のために個を投げ出し、すべての個体が群体の進化に奉仕します。生命体として優れているのはどちらなのか。
 アマイアが「生命とは無秩序なものではない」と主張していましたが、個人個人が好き勝手にやりたいことをやる人間の無秩序さに、彼女は幻滅していたのかもしれません。すべての個が群体としての秩序の中で生きる海の怪物に、深海司教たちがひかれたのもなんとなくわかるような気はします。
 個人個人が自らのもつ「らしさ」を解放して生きようということが、近年の人間社会で盛んに謳われるようになりました。それは素晴らしいことであり否定するつもりはありませんが、そこに対する皮肉の目線を感じてしまうのですね。弱ったシーボーンに対して恐魚が自らの血肉を与えて守ったように、個を捨てて全体最適を取り続ける社会の方が強いのではないかと。
 もちろん、アークナイツの主役は人類であり、最終的に彼らは海の怪物を撃破してくれると思います。より優れた生命体を決める頂上決戦の中で、勝敗を分けるカギとなるのはなんなのか。無限の柔軟性を持つシーボーンをどうやって撃滅するのか。今後の展開を楽しみに待ちたいと思います。


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