3度目のサザンドラ

元々ポケモンブログでしたがいまはゲーム全般について書いています

【アズレン】イベントストーリー考察:燈火のシニエ 編【アズールレーン】

 2021年11月11日開始のイベント「燈火のシニエ」のストーリーを考察します。

史実との対応と時系列整理

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 アイリス・ヴィシア関連の物語は史実を下敷きにしているものが多いものの、イベントの実装順と史実の時系列は一致しません。フランス海軍の歴史は1942年11月27日のトゥーロン港自沈でほぼ途絶えてしまうのですが、この出来事を初回のイベント「光と影のアイリス」で描いてしまったがゆえに、時系列を遡らないと史実ベースのお話が展開できないという状態になっているのですね。
 「燈火のシニエ」の中で、他のイベントとの関連を読み取れるポイントは1点しかありません。時系列はかなりあいまいなので仮説を2つ示しておきます。

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 「神穹を衝く聖歌」で初登場したアルジェリーが枢機卿リシュリュー)とトラブって調子が狂ってしまう原因となった件と言えば、彼女があのイベントの最後で黒いキューブに飲み込まれてしまったことがすぐに思い浮かびます。「神穹を衝く聖歌」は「光と影のアイリス」よりも確実に後だったので、「燈火のシニエ」が時系列的に最新であるというのが仮説のAパターンです。
 もし仮に"枢機卿殿との一件"がプレイヤーの見えていないところで起きた事件なのだとしたら、「燈火のシニエ」がアズレン世界の時系列でどこに当たるのかは全く分からなくなります。「光と影のアイリス」の前だったとしても矛盾は起きません。

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 アルジェリーが敵側であるはずのロイヤルの支援を期待するのは変なので、アイリスとヴィシアが2つに割れる前、どちらもアズールレーン側の陣営だった頃のお話と考えることもできそうです。史実に沿って時系列が流れていっているのだと考えるのが仮説のBパターンです。
 ただ、「燈火のシニエ」の中でアルジェリーやリットリオはアイリスとヴィシアを明確に区別して話していました。そこが仮説Bの怪しいところです。アイリスは2つに割れる前は単なるアイリスだったはずで、ヴィシアという単語が出てきているなら、すでに割れてしまっていると考えたほうが良いのではないかというのが個人的な主張です。これ以降では仮説Aに基づいてイベントを整理していこうと思います。

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 とはいえ仮説AでもBでも、他のイベントと照らし合わせて時系列的に大きな矛盾が生じる箇所はありません。これは逆に言うと時系列がそこまで重要なイベントではないのかなと考えられます。フォッシュを登場させるのであればこういうストーリーがぴったりだったというだけのことなのかなと思いました。ヴィシアとサディアがこういう小競り合いを起こしたことがあるということと、KAN-SENたちが語った上層部の意味深な動きだけは今後のために覚えておきたいところです。
 「燈火のシニエ」は1940年6月18日に起きたヴァード作戦を下敷きにしているので、何が起きたのかを理解するためには史実を見るのが手っ取り早いです。この頃のヨーロッパ情勢は日々目まぐるしく変化していました。

史実のヴァード作戦

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 1940年6月頃はナチスドイツ軍がドイツの西側の戦線を優位に進めていた時期です。6月14日にはフランスがパリを防衛することを諦め、ナチスドイツ軍は無血入城を成し遂げました。
 ちょうどそのころ合いを見計らって、イタリアもイギリスとフランスに宣戦布告しました。ナチスドイツがイケイケなので、自分たちも領土拡大を狙ったのですね。
 北部ではナチスドイツ軍に侵攻を許したとはいえ、フランスはイタリアの参戦を黙ってみているわけにはいきません。イタリアへの対抗策として、領土を侵略されるよりも前に牽制を行う目的で、ヴァード作戦を立案しました。
 フランス海軍は戦力が比較的整っていた一方で、イタリアの海軍戦力は心もとない状況でした。例えばフランス側は戦艦を5隻動かせましたがイタリアは2隻のみというように。フランス海軍は大胆にも海上からイタリア本土のジェノヴァ軍港周辺へ艦砲射撃を撃ちこむ奇襲作戦を計画します。これがヴァード作戦でした。
 この作戦は肝は素早く奇襲をかけて、敵と海戦を行う前にさっさとフランス側に引き上げてくることにありました。なので足の遅い戦艦ではなく、スピードが出る重巡洋艦がメインの火力に据えられました。アルジェリーとフォッシュはこのメイン火力の一員として出撃しました。
 フランス側の作戦通りに計画は進み、艦隊はヴァード・リーグレ、サヴォーナ、ジェノヴァのあたりに艦砲射撃を浴びせ、ほぼ無傷で戻ってくることができました。イタリア側はそこまで手酷い損害ではなかったらしいですが、一方的に国土を破壊されたのは気分が良くなかったことでしょう。



燈火のシニエ時点の陣営関係

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 燈火のシニエは史実と同じような経過をたどりましたが、前提の部分が大きく異なっている点に注目です。上の図は仮説のAパターンに基づき、アイリスとヴィシアが割れた後としています。
 史実ではヴァード作戦の後に、ナチスドイツの傀儡政権であるヴィシー政権がフランスに誕生しました。一方でアズレン世界では燈火のシニエの時点ですでにアイリスとヴィシアに分かれています。
 アルジェリーとフォッシュはヴィシア側のKAN-SENのため、ヴァード作戦を「再現」した結果、なぜかレッドアクシズの中で仲間割れするという妙な事態になってしまいました。
 サディア側も史実と事情が異なります。史実ではイタリアがイギリスとフランスに宣戦布告を行ったことが、フランス側の攻撃の口実になりました。しかしサディアはこのタイミングでレッドアクシズに加入したわけではないので、理由なく突然奇襲を受けた形になったのではないかと思います。
 また、形の上ではサディアは鉄血に従うレッドアクシズ側の国なのですが、サディアのKAN-SENたちは鉄血を信頼しているわけではありません。この辺りの事情を踏まえて、なぜこんな奇妙なことが起きたのか考えていきます。


登場人物たちの思惑

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①ヴィシア上層部の思惑

 ヴァード作戦の「再現」を計画したのはヴィシアの上層部のようでした。フォッシュは"上層部から「再現」を預かった"という言い方をしていました。そして上層部の思惑はたかがKAN-SEN1人には見通せないとも言っていました。

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 「再現」の動機は「レッドアクシズに傾くサディア帝国に、アイリスの聖裁を下す」というものです。形式上の攻撃理由自体は史実のヴァード作戦と大体同じです。

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 ここで気になるのが、ヴィシアの上層部が「アイリスの聖裁を下す」と書いている点です。史実の「再現」だからと言ってしまえばそれまでなのですが、なぜヴィシアはこれを代行して「再現」するのでしょうか。この「再現」を行うべきタイミングが今だとして、ヴィシアではなくアイリス側のKAN-SENが行ってもよかったはずです。
 ヴィシアの上層部が何を目標に動いているのかを考えてみます。「神穹を衝く聖歌」の中で、ヴィシアの上層部は鉄血に執心していると言われていました。下画像はル・テリブルの発言です。彼女は"変わらず"と言っていたので、しばらくずっとこの体制が続いているものと思われます。

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 「燈火のシニエ」の時点でもヴィシア上層部が鉄血へとさらに近づこうとしているなら、鉄血を疑っているサディアへ攻撃をしかけ、レッドアクシズを抜けさせないようにする脅しの意味合いがあったのかもしれません。鉄血への忠誠心のアピールとして、サディアを攻撃したのではないかという仮説です。


②アルジェリーとフォッシュの思惑

 アルジェリーは上層部からの命令を「想定内の再現」と言っていたり、ヴィシアの「大義」のためには仕方ないことだと言っていたことから、上層部から預かった作戦の意義をある程度理解しているものと考えられます。

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 ただ、上のル・テリブルの発言のトーンからもわかるように、KAN-SENたちは上層部と一心同体ではありません。KAN-SENなりの想いがあります。

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 アルジェリーが「神穹を衝く聖歌」で気にしていたのは、トゥーロンで沈んだジャン・バールたちを鉄血が救出した結果、彼女たちの身柄が鉄血に押さえられたことでした。ジャン・バールたちが安全にヴィシアに帰還できるようにするためには、鉄血に少しでも恩を売らねばなりません。
 そういう意味では、「燈火のシニエ」の時点ではヴィシアの上層部とKAN-SENの思惑は一致していて、鉄血の顔色を伺いたいということだったのかなと思いました。

③リットリオの思惑

 ヴィシアの作戦に対してサディア側は奇襲を受けたという立場でしたが、丸腰というわけではありませんでした。リットリオはヴィシアの「再現」をあらかじめ把握していて手を打っていました。その1つがザラへの指令です。

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 もう1つが戦艦であるリットリオ自身が先回りをしてアルジェリーたちの行く手を塞いだことです。作戦を知っていなければこんな芸当はできません。

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 作戦を知っていたなら、リットリオは全力で奇襲を阻止すべく動くこともできたはずです。しかしアルジェリーたちの本土への艦砲射撃は黙認し、そのあとで行く手を塞いだ時も全力では戦いませんでした。リットリオにはこの「再現」を本気で止める理由はなさそうでした。
 サディアにはサディアなりの思惑があってこの「再現」に対処しているようだということは、フォッシュも気づいていたように思います。上層部の存在は一旦置いておいて、現場のKAN-SENたちはある種の茶番を演じていたように思いました。

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 アルジェリーとフォッシュはサディアの本土を砲撃したという戦果を持ち帰りました。一方リットリオはヴィシア艦隊の奇襲に素早く気づいて追撃をしたが、あと一歩のところで逃してしまったという戦果を得ました。その物証になるのがフォッシュが投げたダガーですね。

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 EN版の「燈火のシニエ」のタイトルは「The Flame-Touched Dagger」と翻訳されています。このダガーがそのままタイトルになっているというわけですね。日本語版の"シニエ"はフランス語の"Signet"で本を読むときのしおりを指す言葉です。このダガーが未来のヴィシア-サディア関係における転換点になっているよという意味なのかなと思います。
 ダガーによって成立した今回の茶番は、当然この舞台にいない人に向けたデモンストレーションです。具体的にはヴィシア上層部とサディア上層部、そして鉄血とロイヤルでしょうか。
 戦闘前、リットリオはアルジェリーたちを史実になぞらえて"アイリスの騎士"と呼びましたが、戦いの後はこっそりと"ヴィシアの騎士"と言い換えていました。このあたりからも、リットリオにとってあの戦闘が芝居じみたものだったと推測することができます。

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 KAN-SENたちの企てがどのように結実していくのか、今後が楽しみなところです。

④サディア上層部の思惑

 リットリオが気になることを言っていました。

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 史実に沿った事件を起こすことは「再現」というキーワードで表現されてきましたが、「配役」という言葉が今回は意味ありげに登場しました。
 上の発言のトーンから察するに、リットリオがヴァード作戦の「再現」が行われることを先んじて把握していた理由は、サディアの上層部が彼女に知らせたからなのではないかと思いました。「再現」が行われるから参加すべしという命令が「配役」なのかなと。
 セイレーンが「再現」という言葉を使うとき、それは史実に沿った戦闘の中で、KAN-SENが自らの運命を超克して覚醒するための「実験」というような意味がありました。ヴィシアやサディアの上層部も「再現」や「配役」を通してKAN-SENの覚醒を狙っているのでしょうか。それとも単に政治的な活動の一環としてこういう作戦が行われているのでしょうか。
 レッドアクシズ側のヴィシアとサディアが仲間割れをしているのは相当奇妙な出来事なので、上層部同士が繋がっていて、KAN-SENたちは手のひらの上で転がされているだけなのかもしれません。
 「神穹を衝く聖歌」の復刻を行ったあと「燈火のシニエ」が開催されたことは、ヨーロッパ側の次の大型イベントに繋がる布石だと思います。ヴィシアとサディアの小競り合いという形ではありましたが、ヨーロッパは狭い地域に陣営が入り乱れる場所のため、どこへ飛び火していくかは予測不能です。
 セイレーン作戦以降、このような史実をベースにしたお話が全くなかったので、久しぶりにこういうストーリーが読めて楽しかったです。実在の軍船を擬人化したゲームですから、やはり史実を絡めてくれた方が深みが出てよいですよね。



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