2021年5月21日開始のイベント「頑張るあなたにBreak Time!」と5月29日に公開された「アイノマテリアル」のフルバージョンがあまりにも素晴らしかったので、その感想を書き殴ることにしました。
※イベントのネタバレを含みます
目次
元国民的アイドル桐谷遥
プロセカのオリジナルキャラ20人は、どのキャラも現実にいそうな等身大の高校生として描かれています。その中でもひときわ目立つ、「特別な地位」を経験したことがあるキャラが桐谷遥という人物です。
遥は幼いころからアイドルとして活躍し、引退間際には"国民的アイドル"の称号を得るまでに人気を博しました。ステージで輝くアイドルグループの不動のセンターであり、テレビにも引っ張りだこのお茶の間のスーパースター。
「頑張るあなたにBreak Time!」で垣間見えたのは、いかにして遥がその地位を得て、キープしてきたかという裏側の物語です。ルックスや歌唱力といった生まれ持った才能だけでなく、自分を磨くための努力を無意識的にできてしまうストイックさが、遥を国民的アイドルたらしめていた由縁だったのだと語られました。
あらゆる世界において、「努力できる天才」に勝るものはありません。自分を叱咤激励しながら苦しい努力を重ねていくタイプの人もいると思いますが、遥はそのさらに上をいきます。アイドルでいることを楽しみ、意識せずとも努力をしてしまう。その努力を自分でコントロールできないほどだと言われていました。
このイベントストーリーで描かれた遥の姿は、「アイドルの鑑」というような生やさしいものではありませんでした。高校生離れしたストイックさで努力を重ね続ける遥の姿は、言葉は悪いですが「異常性」のようなものとして私の目に映りました。ものすごい人間だなと思ったのです。
作られたアイドル日野森雫
遥と対になる存在として、このイベントでは雫にもスポットが当たりました。イベントバナーは遥でしたが、実質的にダブル主人公の物語と言ってよいと思います。
雫は歌やダンスが最初から完璧にこなせるタイプの人ではありません。裏で何度も何度も練習をして、ようやく人に見せられるパフォーマンスを体得していきます。
それだけでなく、生まれ持った美貌に似つかわしいキャラクターをブランディングするために、本人だけでなくたくさんの大人がアイドルとしての雫像を作るために動いていました。たくさんの人の努力の結晶が日野森雫というアイドルでした。
誰に言われるでもなく理想のアイドル像に向かって一直線に走り続けることができた桐谷遥に対して、周りの人のサポートと本人の血のにじむような努力によって輝いてきた日野森雫。雫がメインのイベント「Color of Myself!」のストーリーなども合わせて、その対比が非常に鮮やかに浮かび上がってくるのが今回の「頑張るあなたにBreak Time!」というイベントでした。
遥と雫の出会い
この2人は実は印象的な初対面をしていたのだというエピソードが語られました。
大きなアイドルグループであるCheerful*Daysのセンターを務めることになった雫が、テレビ番組でファンへ言葉を届けようとしている直前の舞台裏。不安でいっぱいの雫に、遥が優しく言葉をかけます。
遥はアイドルとして最前線を走り続けているからこそ雫の努力を感じ取ることができます。雫からしてみればトップアイドルである遥に努力を認めてもらえること、センターとしてふさわしいと言ってもらえることが何よりも嬉しかったことでしょう。数年経ってもこのときの会話を鮮明に覚えているのは、雫の心に深く刻まれた出来事だったからに違いありません。
この会話で際立った構図は、2人はアイドルグループのセンターを務める者同士なのだということ、そしてセンターであることに対する2人の姿勢に大きな差があることでした。
遥はASRUNのセンターでいることに重圧を感じないと言います。ここからも遥の天性の才能が垣間見えます。センターとしてグループをまとめること、ステージやテレビに出て大勢の人の前に立つことに対して、普通の人間は大きなプレッシャーを感じて緊張するのが当たり前です。そんな当たり前が通用しないのがこの天才のすごいところなのですよね。
雫が心配している理由
このイベントで雫は遥のことを1人で非常に心配しています。同じように遥の姿を隣で見ているのにもかかわらず、みのりや愛莉はここまで遥のことを気にかけていません。
この差がどこから来るのかを考えた時、理由は3つぐらいあるかなと思います。
1つ目は雫本人の性格です。少し心配症気味に周りの人を気にかけ、お姉ちゃんらしくあれこれ世話を焼こうとしてしまうのが彼女らしいところです。
2つ目はイベント「Color of Myself!」を経て、雫が周りのことを気にかけるだけの余裕を持ちだしたことです。これにより生まれつきの性格が前へ前へと出てくるようになったのでしょう。
3つ目は遥の見てきた景色を理解できる人物が雫だからということでしょう。努力の仕方という点では非常に対照的な2人ですが、大きなアイドルグループのセンターを務めていたという点でこの2人は繋がるのです。
アイドルがアイドルらしく振舞うこと自体、大変なことです。その点ではみのりも愛莉も同じ目線を持っています。しかし個性豊かなメンバーを束ね、グループの顔として機能し、方向性を背負っていくセンターの重圧は、雫にしか理解できません。
モモジャンのセンターが遥であるというよりは、モモジャンの方向性を決めるプロデューサーが遥であると言ったほうが適切かもしれません。遥の両肩に乗るのは、センターにかかる重圧と同じかそれ以上のものだろうと雫は想像しているのではないでしょうか。過去の会話で遥本人はセンターに重圧など感じないと言っていたものの、雫は自分にしか遥の大変さが理解できていないような気がして、雫はみのりと愛莉に相談せずに、遥を心配していたのでしょう。4人だけの活動で、遥の負担は相当大きなものだったようですし。
そんな雫の想いが、最終的に遥に届くことになったのはよかったですね。イベントストーリー8話は非常にほっこりしました。遥もあんな表情をするのだなと驚きでした。アフターライブでの会話にもあったように、遥が休むことも大事だと認識してくれてほっとしました。
妹の志歩に対してもそうですが、雫の思いやりはときに不器用に見えます。でも一生懸命なんですよね。「天使のクローバー」の雫のソロパート「頼りなくても不器用な愛でも♪」がまさに思い浮かびます。
アイノマテリアルが柔らかい曲であること
このイベントのためにJunkyさんが書き下ろしたのが「アイノマテリアル」という楽曲です。
遥がメインのイベントということで、遥のために作られた楽曲なのですが、こういう優しさ全開の楽曲になったのは予想外だなと最初は思いました。遥といえばクールな歌声、かっこいいイケメンボイス、イメージカラーは青。「天使のクローバー」の「勇気を出して踏み出してみたって♪」のところとかがすごくよく似合います。
しかしフルバージョンで明らかになった2番やラスサビの歌詞と、イベントストーリーで語られたことを照らし合わせると、いまの遥を表現するのにぴったりの曲なんだなと思いなおしました。
遥がアイドルとして振舞い、アイドルとして努力を重ねることをストップさせることは誰にもできません。本人も望んでいることですし、それはもはや彼女の生き様なのです。「アイノマテリアル」という曲は、そんな遥の姿を否定しません。「努力する天才」の歩いてきた道のりを正しく直視し、認め、理解し、包み込み、一緒に歩いていこうと呼びかける歌なのですね。だからこの曲の曲調は優しいのかなと思いました。
アイドルとしての遥は寒色クール系かもしれませんが、素の遥には柔らかい一面もあります。それが初めて見えたのがこのイベントで、だからこそこのイベントの書き下ろし楽曲が柔らかくて優しい曲調であることには大きな意味があると思います。「ギャップ」と言うとわかりやすいのですが、それもあるけれどこの柔らかさも含めて遥なんだなと思わせてくれる楽曲でありイベントなのだと自分は感じました。
歌詞に込められた想い
一番最後に歌詞と誰が歌っているかの割り振りを書いておきました。遥へのメッセージになりそうな「呼びかける部分の歌詞」はほとんど雫が担当しています。雫が一番の理解者だからですね。
その「呼びかけ」に押し付けがましさは一切ありません。「甘えてもいいんだよ」というメッセージにとどまります。「一緒に歩いていきたいんだよ」という決意表明にも聞こえます。モモジャンの4人の中における遥の立ち位置を完璧に理解した言葉の使い方だなと思いました。
逆に遥が担当する部分は「辛くないよ、もっとがんばるよ」「キミなら笑顔で出来ちゃうけど」といったまさに遥を想像させる部分です。遥本人は辛いとも思っていないし、なんでも笑顔でやってのけるだろうと、他の3人含めてみんな分かっているんですね。分かってはいるけど、一緒に歩いていくメンバーとしてたまには頼ってほしいという温度感は、モモジャンのいまの在り方をドンピシャで表した曲だなと思いました。
ラスサビで「もっともっと飛ぼうよ」という歌詞があるのがJunkyさんのモモジャンへの愛ですね。まさにMORE MORE JUMP!!なのです。曲としても自然に、そしてそこまでの歌詞と違和感なく繋がるようにこのフレーズを入れられるのがまさに職人の仕事という感じです。
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参考:アイノマテリアル歌詞
【雫】(I know アイノシンパシー)
【遥】(I know アイノマテリアル)
【みのり】(I know アイノシンパシー)
【all】(コレモ)
【愛莉】(I know アイノマテリアル)
【all】(ココニ)
【MEIKO】(I know アイノシンパシー)
【all】(ダッテ)
【遥&雫】(アイノマテリアル)
【遥】不意にキュンって寂しくなる 空は今日も星を隠した
【みのり】聞こえた声が嬉しいの 花は頬をパッと色付けた
【愛莉】キミが見つめていた未来 連れていく事は出来ないのかな
【雫】キミが歩き続ける隣 支えられたらいいな
【コーラス】(アシタヘジャンプ)
【みのり】星が降りそうな
【コーラス】(いつでも)
【愛莉】キラキラ笑顔だって
【コーラス】(笑顔で)
【遥】辛くても隠して
【コーラス】(会いたい)
【雫】見せないで笑ってたんだね
【愛莉&MEIKO】いつでも笑顔でいたいから
【遥&MEIKO】辛くないよ、もっとがんばるよ
【雫&MEIKO】そんなウソ、ギュっと抱きしめて
【みのり&MEIKO】ずっと歩いてたのかな
【愛莉&MEIKO】高くもっともっと飛べるよ
【遥&MEIKO】キミなら笑顔で出来ちゃうけど
【みのり&MEIKO】ほんのちょっとだってでもいいから
【雫&MEIKO】そっと甘えてもいいの
【雫】(I know アイノシンパシー)
【all】(コレモ)
【遥】(I know アイノマテリアル)
【all】(ココニ)
【MEIKO】(I know アイノシンパシー)
【all】(ダッテ)
【愛莉&みのり】(アイノマテリアル)
【遥】ほんのちょっと肌寒いと
【みのり】袖にしまうその仕草にキュン
【愛莉】笑い合う星降る夜
【雫】キミの手をギュっと離さないと
【雫&遥】決めたの
【みのり&愛莉】キモチ繋がるように
【MEIKO】いつでも
【雫&遥】ココロ潤いますように
【コーラス】(ミライヘスタート)
【愛莉】星が降り始めた
【コーラス】(想いを)
【みのり】不格好な弱音だって
【コーラス】(届いて)
【雫】聞かせてほしいの
【コーラス】(一つに)
【遥】いつだって傍にいるから
【愛莉】「大丈夫」なんて言葉も
【遥】「平気」だっていつもの笑顔も
【みのり】そんなのウソだって分かるから
【雫】その手を引いてくよ
【雫&MEIKO】いつでも笑顔でいてほしい
【みのり&MEIKO】辛くないふりはもうしないでよ
【遥&MEIKO】独りぼっちじゃない 抱きしめて
【愛莉&MEIKO】ボクと歩いていこうよ
【all】高くもっともっと飛べるよ
【all】一緒にもっともっと飛ぼうよ
【all】ほんのちょっとだってでもいいから
【all】そっと甘えてもいいよ
【all】むしろ甘えてほしいの
【遥&雫】(I know アイノシンパシー)
【MEIKO】(コレモ)
【愛莉&みのり】(I know アイノマテリアル)
【all】(ココニ)
【遥&雫】(I know アイノシンパシー)
【MEIKO】(ダッテ)
【all】(アイノマテリアル)