2020/10/28開始のイベント「ウォルモンドの薄暮」の考察と感想を書きます。
※イベントのネタバレを含みます。
※私は大陸版で先行して公開されている情報を追っていないので、その観点でのネタバレは含みません。大陸版の情報を基にしたコメントもありません。
目次
人物相関図
時系列整理
考察ポイント
①真犯人がいる
人物相関図に書いた通り、危機契約を実行した人物はトールワルドとビーダーマンの他にもう一人います。コイツをここでは真犯人と呼びます。真犯人が何をしたのかをちゃんと理解することで今回のイベントの全容が見えてきます。
トールワルドは火災で死亡しました。これは街の誰もが認めているので間違っていないでしょう。
ビーダーマンは火災以降行方をくらましていたため、てっきり火災に巻き込まれたものと思われていました。しかし、それは罠でした。ビーダーマンは生きていました。
火災を起こしたのはビーダーマンではありません。蓄音機はリターニアの高度なアーツ教育を受けた人物でないと起動できないので、ビーダーマンには火災を起こせません。火災を起こしたのは真犯人です。
ビーダーマンを殺害したのも真犯人です。氷のアーツがその証拠。ウォルモンドの民兵は火のアーツしか使えません。トールワルドが氷のアーツを使う描写が出てくるので、一緒にどこかで身に着けたものでしょうか。
真犯人はリターニア人であるという以外は一切情報がありません。トールワルドの「次の候補」というのがこの真犯人だと思うのですが、それだけではヒントになりません。
今後のイベントで出てくるのかもしれないですね。
②危機契約はトロッコ問題
ビーダーマンたちが遂行した危機契約はトロッコ問題だと捉えれば、彼らの不可解な行動が理解できます。
暴走したトロッコが5人の人を引き殺そうとしています。このまま放っておけば"事故"で5人の命が奪われます。しかしあなたは、分岐ポイントを切り替えることで、犠牲者の数を1人に減らすことができます。あなたがその1人を殺したということになりますが、あなたは犠牲者の数を減らしますか?
問題設定
大裂溝が発生してウォルモンドが北へ移動するしかなくなった瞬間に、頭の良い人たちは気づきました。このままでは食料がなくなって全員死んでしまうことに。
しかも、大裂溝の難民として感染者が街へ押し寄せてきます。食料の奪い合いになることは必至です。
食料がなくなる前に、ウォルモンドが十分に食料を得られる状態に戻さないといけません。
正攻法では解決できなかった
最初、トールワルドは正攻法で危機契約を達成することを考えていました。結婚式に行ってしまった憲兵隊をなんとかして連れ戻し、大裂溝を乗り越えるだけのマンパワーをウォルモンドに備えればよいのではないかと。
しかしトールワルドの力では貴族を動かすことができませんでした。
他にもいろいろな手立てを検討したようです。周辺の街に行っていたということで、援助を求めたのではないかと思います。しかしそれも叶いませんでした。
苦肉の策
追い詰められたトールワルドが思いついた作戦が、トロッコ問題的な解決法です。貴族たちにウォルモンドの事態を気づかせ援助を出させるために、あらかじめウォルモンドで騒ぎを起こそうという作戦です。
トロッコ問題で言うところの小さい犠牲を払うことで、大きい犠牲を回避するのが狙いです。注意しなければならない点は、小さい犠牲とは言っても、ウォルモンドの状況が相当ヤバイのだということをアピールできるような事件じゃないといけません。
そこでトールワルドが思いついたのが、アント先生を殺害することです。アント先生は感染者からも非感染者からも慕われている人物で、彼女を殺害することで大きな感情のうねりが発生します。それを利用するのです。
また、ウォルモンドの動力炉を破壊することで、人的な被害を発生させることなく、街の状況をさらに悪化させることができます。
エアースカーペが冷静に分析していますが、この作戦の目的はロドスを呼び寄せることではありません。ロドスのオペレーターがウォルモンドにやってきて、事を荒立てるかどうかは感情の問題で、トールワルドたちは感情をあてにしてないのです。
ロドスは1つの企業なので、ウォルモンドの街を恒久的に支援してくれるわけではありません。
頼るべきはあくまでリターニアを治める貴族です。国が1つの都市の支援をするという形を実現するのが、この作戦のゴールです。作戦の成否判定ポイントは、貴族がウォルモンドの状況の悪さを看過できず、支援に乗り出すかどうか、その1点のみなのです。
作戦は成功したか?
さて、トールワルドたちが思い描いた作戦は成功したでしょうか?
ロドス小隊が街を出発する日、ウォルモンドの近くに物資を積んだ輸送隊が現れたことが語られましたね。
どんなタイミングで、誰が意思決定をしたのかはわかりませんが、リターニアがウォルモンドを見捨てないことがこれで分かりました。暴動が起きていなかったら、この時点で犠牲者は出ていなかったでしょうが、補給が来ることはありませんでした。つまり作戦成功です。少数の犠牲を払うことで、街を救ったのです。
ロドスの視点でこの物語を見ると、仲間の殉職の真相を暴けず、暴動をかろうじて食い止めただけのただただ悲惨な出来事です。しかし、ビーダーマンたちからすると、このお話はハッピーエンドなんですよね。命を賭してウォルモンドの街を守ったのです。
しかしビーダーマンとトールワルドは正攻法ではこの危機契約を達成できず、トロッコ問題の分岐ポイントを切り替えるはめになってしまったことの重さに耐えられず、自ら死を選びました。(ビーダーマンは真犯人と戦った形跡があったようですが)
真犯人の目的や感情はまったくわからないのでそこだけ未知ですが、本当に救いのないお話なのです。
何もしなくてもよかったのでは?
作戦決行前にビーダーマンの心は揺れ動きます。自分が何もしなくても結果は変わらないのではと考えることさえありました。
一方、トールワルドはどこまでも物事を悲観的に考えて、最悪のケースを想定するタイプの人間でした。自分たちがこのタイミングで事を起こさないと、もっと酷いことになってしまう可能性がある、その可能性はゼロではない、だからやるしかないのだという思考を持っています。
例えば、トールワルドたちが何もしなければ、食糧庫が空っぽになって初めて暴動が起きるかもしれません。食糧がゼロになってようやく貴族が援助を出すということになれば、援助がすぐに到着するわけではないので、暴動と飢餓で大量の人が死にます。
また、季節がどんどん冬に向かって行っていることも悪い判断材料です。雪に閉ざされて援助が到着できないかもしれません。天候まで予想することはできませんから、最悪のケースを想定しなくてはいけないという理屈もわかります。
トロッコ問題の分岐ポイント切り替えるべきだったのかという問題は、どこまでいっても結果論にしかならないのですね。ビーダーマンたちが火災を起こしたおかげで、食料がゼロになる前に暴動が始まり、貴族の援助は間に合いました。我々にはその結果だけが見えます。
アント先生が死ななかったIfの世界線を見ることはできません。この世は常に取り返しのつかないことだけで進んでいきます。死者は蘇ることがありません。その無情なる現実を受け止めて、生き残ったものは生きていくしかないのですね。
感想
ここから先は感想です。メインストーリー6章のお話なども混ぜますので、ネタバレが気になる方はここで止めてください。
フォリニックとグレースロート、ロドスのオペレーターとして
今回の物語はフォリニックの目線で進む場面が多いです。彼女はこの物語の一番の被害者ですが、一番常識的な感覚で客観的にウォルモンドを見ていた人でもあります。間違っていることには怒り、悲劇に悲しみ、立ち向かうべき悪に立ち向かったヒトです。
ロドスはマドロック小隊を撃退するという大仕事をやってのけましたが、それ以外の問題に関してはほとんど貢献できていません。ウォルモンドの感染者問題という大きなうねりの中では、流されるしかないちっぽけな存在でした。
救うべき人を救えず、意味のない戦闘の中で命をすり減らすという無力感を、一足先に経験していたのがグレースロートです。メインストーリー6章のお話ですね。
グレースロート本人がウォルモンドで多くのことを語るわけではありません。しかし、我々プレイヤーは彼女がどんな経験をしてきたかを知っています。
グレースロートがウォルモンドの問題に冷静に対処し、フォリニックを慰めようとさえするのをみて、私はグレースロートの成長を感じずにはいられません。あの壮絶な経験が、ちゃんと次の現場に活かされて、今度はフォリニックへと繋がっていくのだなと思います。
ただ、これを「成長」だと言い切ってしまっていいものかは疑問符が残るところです。ただの「諦め」なのではないかと。
仲良しの同期を殺され、真相を追える立場にもあるのに、諦めるのが最善の選択だなんて、そんな酷い話があるのかと気分がふさぎます。
ロドスのオペレーターとして仕事を続けるなら、今後もこのような場面に何度も出くわすでしょう。少しずつ心が死んでいってしまっているのではないかと不安になります。オペレーターとして習熟するということは、諦めを知るということだけでしょうか。決してそうではないはずです。
ロドスのオペレーターたちの過酷な境遇を想うとき、燦然と輝くのがスズランの姿です。幼いが故の行動もありましたが、彼女は自分の中のまっすぐな正義感に背を向けず、堂々と戦い抜きました。フォリニックをはじめとする大人たちのメンタルまで気にしながらです。まさにすべてに恵まれた天才と言ってよいでしょう。
スズランのような傑物が自分らしくこれからも戦い抜けるよう、ロドスの大人たちは頑張っていってほしいものです。
レユニオンのエンブレムを背負うこと
レユニオンの立場というのは単純なものではないのだなと思わされるイベントでもありました。感染者にとってレユニオンは希望の星で、自分たちの願いを叶えてくれる組織だと認識している感染者は、実は多くないのかもしれません。
ウォルモンドの感染者たちは、自分たちの都合の良いようにマドロック小隊を利用しようとし、都合の良い時だけ「俺たちはレユニオンだ!」と騙ります。レユニオンたちからすると、仲間から裏切られるような出来事です。
マドロックがどういう人間なのかまだわかりませんが、レユニオンのエンブレムを背負うことは相応の覚悟がいることです。マドロックにはマドロックなりの信念や理由があってレユニオンを名乗り続けるのでしょう。
アークナイツの物語は、ロドスとレユニオンの対決のお話ではなく、感染者を取り巻くすべての問題をロドスが解決していく長い旅のお話です。その過程でレユニオンという組織と衝突することが多いだけで、レユニオンを撲滅することは何の解決にも繋がりません。
レユニオン側は、どんな信念を持って、何をゴールに戦い続けているのでしょうか。それが今後徐々に明かされてくるのではないかと思います。
危機契約に巣くう闇
危機契約のスローガンとでもいうべき「出身不問、種族不問、善悪不問。全ては、より多くの命を救うため」という文言は、非常にカッコイイものだなと以前は思っていました。
ロドスにはあらゆる種族の、様々な思想を持ったオペレーターが集まってきています。彼ら1人1人が持ち味を発揮して、難しい課題を一丸となって解決していく姿に、このスローガンが非常によく当てはまるなあと思っていました。
しかし、ウォルモンドの物語を見たあとだと、このスローガンが違った意味に見えてきてしまうからアークナイツって怖い物語だなと思います。
「より多くの命を救うために」。目標がシンプルで分かりやすいほど、組織は強くなります。構成員の判断基準が同質化し、迷いなく一丸となって結果を追求することができるからです。
シンプルで強力なスローガンがあるからこそ、危機契約はいままでものすごい結果を出し続けてきたのでしょう。依頼の難易度が上がり、報酬もどんどん高額になるはずです。
善悪不問とスローガンに書かれている以上、ウォルモンドでのビーダーマンたちの行いを危機契約側は咎めません。むしろ正しい行いだと評価するでしょう。
エアースカーペはこのことを課題意識として持っているようでしたが、いったい誰がビーダーマンたちを糾弾することができるでしょうか。
ブレーキがついていない暴走機関車。シンプルな燃料でどこまでも加速していきます。ロドスも報酬を獲得するためには乗り込まなくてはいけません。
ただのゲーム内イベントのシステム名称だと思っていた危機契約の、不気味な本性を知ってしまいました。こういう世界観の作りこみが、このゲームは本当にすごいのです。
次回のイベントも楽しみですね。
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闇夜に生きるについても同様に書きました。
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ウルサスイベントについても同様に書きました。
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メインストーリー6章の考察です。
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