3度目のサザンドラ

元々ポケモンブログでしたがいまはゲーム全般について書いています

【アークナイツ】ストーリー考察/感想 - ウルサスの子供たち編

 2020/10/09開始のイベント「ウルサスの子供たち」のストーリーのまとめ・感想の記事です。
 鬱々とした酷い過去が回想されるイベントなのですが、行間で語ることが非常に多く、実際に何が起きて、何がトラウマになっているのかは意外と直接語られません。予想も交えながら、読み解いてみようという記事です。

 イベントのネタバレを含みます。少々刺激の強いお話のため、そういうのが苦手な方は読まないことをお勧めします。知らなくてもゲームの進行に影響はありません。

イベント概要Q&A

Q1:何が語られるストーリーなの?
A1:ズィマーたち「ウルサス学生自治団」がロドスに来てから1年後の「今」から、彼女たちがロドスに来ることになった経緯を振り返るお話だよ。

Q2:過去に何があったの?
A2:レユニオンがチェルノボーグを侵攻した際に、学生たちが学校に監禁されて、中で殺し合いをしていたんだ。

Q3:なぜ学校に監禁されていたの?
A3:優しいパトリオットは学生を争いから守りたいと思って閉じ込めたんだ。ウルサスとの取引に使う算段があったのかもしれないね。しかし複数あった学校のうち一校(ペテルヘイム高校)だけ、「貴族と平民を一緒の学校に閉じ込めたら面白いことになるんじゃないか」と考えたメフィストのたわむれによって、ズィマーたちは酷い目にあったんだ。

Q4:学校でズィマーたちに何があったの?
A4:食糧庫の1つが火事で燃えてしまい、食料の奪い合いが起きたよ。2個目の食糧庫を貴族が占領して、それを取り返そうとズィマーがケンカをしかけたら、意図せずその食糧庫も火事になってしまって食糧難が加速し、本当に酷いことになったよ。

Q5:ズィマーたちはどうやって脱出したの?
A5:天災が来てレユニオンが逃げ出したので、学校から脱出できたよ。救助活動をしていたロドスにたまたま見つけられて、ロドスに来ることになったんだ。

それぞれが抱える闇について

グム「習慣」

 1個目のストーリーなので、一番マイルドなお話だなあと"思っていました"。7話すべて読むと、グムのお話が一番キツイかもしれないと思うようになりました。
 1話目では「今」の話しか出てきません。「今」のグムはそれなりに元気そうに暮らしているため、マイルドなお話だと錯覚してしまうのですね。
 なぜ「今」の話しか出てこないのか考えてみると、過去の話が一切できないぐらい、グムの精神状態が悪いのだろうなという答えに行きつかざるを得ません。
 飢餓状態になると暴走してなんでも食べてしまう「習慣」、3撃目はまな板を叩き割ってしまうほどのパワーが出てしまって制御不能なため、2撃目で止める「習慣」。そしてズィマーの「朝食の悪夢」に出てきた、生臭くて血がついたソーセージ。
 あまりの食糧難に、グムは人肉を調理して仲間に振舞っていたのだろうと考えられます。食べるのが苦痛すぎて、食べるときに「無」になってしまったり、調理するのが苦痛すぎて「いちにのさん」で力を籠めるクセが抜けなくなってしまったりしたのでしょう。「習慣」というマイルドな言い方をしていますが、要は自らの心を守るための防御反応です。
 ズィマーはリーダーとしてその事実を知っていたから夢に見ているのでしょう。他のメンバーたちは人肉だとは知らずに食べていたのかもしれません。そうであってほしいです。
 他のメンバーと違って、グムはトラウマの正体を直視しようとしません。迷惑をかけていることは認識していますが、それ以上のことは突っ込めないのでしょう。

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 ロドスに救助されてからも「習慣」が増えたと言っているので、グムの精神状態は良くなるどころか、悪化した時期もあったと考えられます。
 また、グムは自らをコードネームである「グム」と呼び続けます。他のメンバーは本名とコードネームの両方を意識する場面があるのですが、グムはグムです。彼女自身が本名「ラーダ」に触れることはありません。よっぽど過去のことを思い出すのが辛いのでしょう。
 幸い、グムは人とコミュニケーションをするのが得意なので、交流の中で徐々に心がほぐされていくといいなと願ってしまいます。

イースチナ「選ばされた答え」

 イースチナはグムと違って分かりやすく悩んでいて、その悩みの種も明確です。しかし明確だからといって悩みが軽いわけではありません。
 地獄の学校生活の中で、ヴィカという名の親友を殺したことをイースチナは気に病んでいます。1年経ってもクマのぬいぐるみにヴィカの幻覚を見続けているほど、その事実に固執をしています。
 ヴィカが死ぬタイミングは、ズィマーが貴族の本拠地を襲撃して、食糧難が一層ひどくなったあとのことです。

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 ズィマー(ソニア)はヴィカの死のタイミングを関知していません。なのでイースチナが手を下したことも知らないままでしょう。

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 何かのトラブルかケンカがあってヴィカは高いところから落ちそうになっています。その場に駆け付けたイースチナ(アンナ)は、引き上げるどころか、指を引きはがしたかのようなことが書かれています。
 なぜ殺したのかはまったく書かれていません。方針の対立があったのかもしれません。食糧難が一層厳しくなったあとのことなので、口減らしの意図があったのかもしれません。
 理由はわからないのですが、友人を殺害するという異常な選択が「選ばされた答え」というテーマになっているわけですね。

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 他のメンバーは、イースチナがヴィカを助けようとして、間に合わなかったと誤認をしています。つまり、イースチナの抱える闇は誰にも共有されていませんし、ウソをついてしまっているという罪悪感もあるのかもしれません。
 この一件があったことで、イースチナはズィマーに対して複雑な感情を抱いたままです。ズィマーがヘマをしなければヴィカを殺す必要はなかった可能性がありますから。
 朝のルーティンでイースチナがグムを起こし、グムがズィマーを起こすのは、イースチナが直接ズィマーに触れられないからだと思います。
 自分の中で言語化できているだけ、グムよりはマシです。向き合わなければならないと本人もわかっています。しかし、周りを頼れないイースチナ本人の性格が回復を邪魔するでしょう。
 ぬいぐるみからヴィカの幻影が消える日は訪れるでしょうか。

ズィマー「夢の中で」

 ズィマーの抱える闇は、もっとも描写が鮮やかになされ、もっとも分かりやすいものになっています。描写が激しく、本人が厳しい苦悩の最中にあることがわかります。
 悪夢をたどるなかで、彼女が一番気に病んでいることが徐々に明らかにされます。仲間のためを思って貴族学生の本拠地を襲撃したら、逆に食料を燃やしてしまって状況を悪化させてしまったことですね。
 ズィマー(ソニア)は昔から粗暴な一匹狼でしたが、仲間を想う優しさを持ち合わせています。

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 仲間のためと思って起こした行動が、逆に仲間をひどい目に合わせることになってしまいました。

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 悪夢の中でメンバーがズィマーのことを責め立てるのは、ズィマーが彼女たち全員に対して罪悪感を持っているからでしょう。一番近くにいる仲間なのに、夢でこんなことを見てしまうなんて、絶望以外の何物でもありません。

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 ロサ(ナターリア)だけに対しては、想いを打ち明けようと行動を起こせるようです。ロサ編でズィマー側からロサにアプローチしますからね。結局ズィマー本人は悩みを打ち明けられないのですが。
 イースチナたちには話せないということを自覚しているのがまた悲しいですね。
 腕っぷしの強さと、責任感の強さが生んでしまった悲劇を、ズィマーは一人で背負おうとしてしまっています。

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 ロドスの大人たちがズィマーの本質をちゃんと理解していることが、唯一の救いですね。ズィマーはとても強いヒトです。周りの助けも借りながら、なんとか回復をしていってほしいものです。

ロサ「ジレンマ」

 世間知らずのお嬢様だったロサ。教育されてきた価値観がすべてひっくり返ってしまったあげく、自分の犯してしまった罪に向き合わなければならない状態に追い込まれました。
 貴族学生を一致団結させなければならないという命題を与えられたロサ(ナターリア)は、平民からの略奪を指揮することになってしまったのです。

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 そのままの状態であれば、ロサは自らの行動を罪だと認識できなかったかもしれません。しかし、生き延びて現実を知ってしまったロサは、自分の犯したことの重大さを知ってしまいました。
 「今」感じている良心の呵責に耐えられず、あのときズィマー(ソニア)に殺されていたほうがマシだったと言っているわけですね。

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 ロサはもともとメンタルがそこまで強い人ではないのでしょう。とても生真面目な性格をしていることも相まって、自殺しようと思い立ち、それが周りの迷惑になってしまうことまで考えて思いとどまる、ということを何度も繰り返すことになってしまいます。

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 ただ、ロサはかなり回復に近そうだなと思います。理由はズィマーとちゃんと会話をできているからです。ズィマーのぶっきらぼうで率直な優しさだけで、ロサは十分な燃料を得て生きていけるのではないかと思います。
 このイベントでロサはオペレーターへの転向を果たします。状況が一歩前に進むんですよね。そうやって自分の環境を動かしていくことは、回復を早めるでしょう。

リェータ「デタラメ冒険譚」

 一番よくわからないのがリェータです。

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 周りにいる仲間からも状態が見えていませんし、今回のイベントストーリーを呼んでも彼女の精神状態は見えてきません。
 学校にいる間の精神状態と、「今」の精神状態があまり変わっていないように見えるのですね。

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 ドーベルマン教官もリェータだけは例外だと言っています。
 あの学校での出来事が辛くないわけないので、大事な何かが壊れてしまっている可能性もゼロではないと思います。
 しかし他のメンバーがそれぞれ苦しんでいるのだから、一人ぐらい悩んでいない人がいてほしいなと願ってしまいます。

※コメントにて鋭いご指摘を頂いたのでご興味ある方は一番下のコメントまで読んで頂けますと幸いです。

アブサント「春になったら」

 アブサントはウルサス学生自治団の一員ではありません。チェルノボーグの学生であることには変わりありませんが、メフィストが仕掛けた地獄の監禁生活の外にいた人物です。
 何が因縁になっているかというと、ズィマーたちがいた学校に彼女の父が調査に入ったことです。

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 アブサント自身がその学校に乗り込んだとき、学生同士の殺し合いの跡と、それに巻き込まれて殺害された父を発見してしまいます。

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 その後アブサントもズィマーたちと同様にロドスに救助され、オペレーターになることを決意するわけですが、そこで鉢合わせになってしまうわけですね。

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 ここでこのイベントはすべて終了になるため、アブサントの心の動きはわかりません。あの学校の生き残りを、父の仇として恨んでしまうのかもしれませんし、真相を知りたいと願い仲良くなろうとするのかもしれません。

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 リェータ(ロザリン)のエピソードの中で、警官が暴走した生徒に殺されてしまったという描写がわざとらしく出てきます。これは逆に"ズィマーたちは警官を殺していない"ということを知らせるための描写です。
 仮にアブサントがズィマーたちを親の仇だと恨んでしまったとしたら、それは完全な誤解なのですね。そんなことでまた傷つけあう事態になってしまったら、事件が終わったのに負の連鎖が続いていくことになります。最後の最後まで、絶望の香りがする物語だなあと思いました。

このイベントで本当に鬱なことは何か?

 ここからは全体を通しての感想です。
 もともと明るい話ではないアークナイツのメインストーリーの中で、このウルサスのイベントは突出して鬱な話だと言われています。その噂だけが先行して、身構えていたぶんそこまでショックを受けなかったヒトもいるのではないでしょうか。僕自身もそのクチです。
 具体的な描写をあえて少なめに抑えているのがその理由だと思います。やろうと思えばもっと暴力的で、もっと悲劇的な記述にすることは容易でした。
 ただ、ウルサス学生自治団の「今」の状態をよくよく考えてみると、このイベントで語られたことはやっぱりとても辛いのですね。そういう話をします。

明るい未来をイメージできない

 他人の感情を読み取れるアーミヤが持論を語っている箇所がありました。

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 ズィマーたちが負った心の傷はあまりにも深いです。悲しいとか苦しいという感情が表出せず、アーミヤが読み取れるのは無力感だけになってしまっています。
 このイベントでは、取り返しのつかないことが起きてしまったという過去だけが語られます。「今」の話も多少は出てきますが、回復のきっかけが描かれるわけではないのですね。アーミヤの言う「壁」が、前進を阻んでしまいます。
 このお話を読んだ我々は、明るい未来を描くことがどうしても難しいのです。彼女たちがすべての過去と向き合って前を向ける姿をイメージできません。
 どんどん絶望に沈んでいってバッドエンドで物語が終わってしまう小説やアニメは一定数存在しますね。世界が滅亡したり主人公が死んでしまったりして、物語がそこで幕切れするから実はまだ幸せなのではと、このイベントを読むと思うようになりました。
 アークナイツは今後も続きますし、ズィマーたちは今後もたまにストーリーに顔を出すでしょう。スタメンオペレーターとして活躍させている人もいると思います。
 回復のきっかけがつかめず、心の闇に囚われてもがき続ける彼女たちの姿を我々は見続けることになるのですね。それが非常につらい。
 もちろんポジティブにとらえれば、どこかで回復した姿を見せてもらえる可能性があります。ただアークナイツというゲームはこれまでも相当骨太なストーリーを展開してきていますので、魔法のようにケロッとズィマーたちが回復した姿を見せてくれる気はあまりしません。

辛さを共有していない

 グム、イースチナ、ズィマー、リェータ、ロサは、お互いが何に悩んでいるのかを全ては把握していません。イースチナとズィマーのように、お互いが気まずくて、話し合うことすらできない組み合わせもあります。
 彼女たちがウルサス学生自治団として心を1つにして辛さと向き合ってくれていればまだよかったのですが、仲間内ですらギスギスしてしまっています。それが僕はけっこう辛いのです。
 もちろん、彼女たちはこれからも助け合って生きていけるでしょう。それはとても尊いことなのですが、だからこそこのメンバーの中では辛さを分かち合っていてほしかったなと思います。
 唯一の信頼できる仲間に対して、本心を打ち明けられないまま寄り添い続けるなんて、逆にとても辛いではありませんか。

すべてを知っているのはプレイヤーだけ

 ウルサス学生自治団の面々ですら気持ちを共有していませんから、アーミヤやドクターは彼女たちの辛さの原因をほとんど知りません。
 すべての事実を知っているのは、神視点で物語を見てきた我々プレイヤーだけなのですね。これがまた辛い。
 たとえばアーミヤがすべての事実を知っていてくれたら、我々はアーミヤの発言に同調することができますし、アーミヤが辛さを代弁してくれたかもしれません。
 「ウルサス学生自治団を理解してあげられるのはオマエだけ」「1人でこの悲しみをすべて受け止めよ」「他のキャラクターは絶対にオマエに共感しないぞ」そんなふうに言われているような気がするのですね。
 ただまあ幸いなことにアークナイツプレイヤーはこの世界にたくさんいますから、みんなで感想を共有できます。一緒にウルサス学生自治団を支えていこうではないかと、励まし合うことができるんですね。

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 というわけで長々と書いてきましたが、この辛さを胸に刻み込んで、ウルサス学生自治団が少しでも回復することを祈りながら、次のアークナイツのイベントを待つことにしましょう。



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