3度目のサザンドラ

元々ポケモンブログでしたがいまはゲーム全般について書いています

【アークナイツ】ストーリー考察/感想 - ドッソレスホリデー 編

 2022年1月14日開始のイベント「ドッソレスホリデー」のストーリーを整理していきます。

※1と2ではメインストーリー8章までのネタバレをします

1. イベント時系列整理

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 他の出来事との時系列関係から整理していきます。
 イベントストーリーの中で描かれていたように、「青く燃ゆる心」と「ドッソレスホリデー」は時間軸的にはほぼ並列して走っています。メインストーリー8章でレユニオンとの決戦が終わったあと、ロドスのオペレーターは休暇を楽しんでいるようでした。
 「ドッソレスホリデー」の主役であるチェンの心情を深く理解するには、その間で起きた「彼方を望む」のホシグマの回「続かず」とチェンの回「剣と天秤」が副読本になります。メイン8章のラストでチェンはロドスに来ることになりました。龍門に残ってチェンを見送ったホシグマとスワイヤー側のお話と、ロドスのオペレーターとして任務に励むチェンの様子がそれぞれ描かれていました。
 「彼方を望む」の段階では、チェンが抜けた龍門近衛局特別督察隊の隊長をホシグマが引き受けていました。ホシグマはすぐに異動になる見込みであり、「ドッソレスホリデー」ではそのポジションをゆくゆくはスワイヤーが引き継いでいくのだと言われていました。ホシグマがチェンのことを「隊長」ではなく呼び捨てするようになったのも「彼方を望む」からの伏線でした。

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 チェルノボーグ事件の後、大きな罪を犯してしまった義姉タルラをチェンはどのように裁けばよいのか考え続けています。全ての人を平等に裁くことのできる場を作れないだろうか、と。彼女は主に外勤任務をこなし、様々な国を自分の目で見つめてきました。そんな長い道のりの途中で訪れた転機が「ドッソレスホリデー」の出来事でした。

2. メイン6章 -チェンの怒り-

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 もう1人の主役であるリン・ユーシャはメイン6章で登場しました。「ドッソレスホリデー」でチェンとユーシャはものすごく険悪なムードですが、なぜこういう関係性になっているのかを理解しておくとより味わい深くなります。
 メイン6章でレユニオンが龍門に攻め込んできたとき、街を守る龍門近衛局に加えて、黒蓑と呼ばれる特殊部隊もレユニオンと交戦していました。この特殊部隊は龍門総督であるウェイが動かしていました。彼は自分が特殊部隊を直接動かしていることが知られるとマズイと考え、黒蓑たちにユーシャの言うことを聞くようにと指示し、連絡を断ちました。
 なぜこんなことをしたかというと、黒蓑がレユニオンに対処する際に、レユニオンへの関与が疑われたスラム街の感染者たちも合わせて抹殺していたからです。死体は龍門の排水システムに捨てられました。ウェイは感染者に排他的な人間です。レユニオンに煽動されたスラムの感染者が龍門襲撃のきっかけを作ったため排除したのだと言っていました。
 チェンとスワイヤーは異なる見解を持っていました。感染者への理解が進み、スラムが龍門の正式な地区として共存する未来を彼女たちは思い描いていました。メイン6章のラストでチェンがものすごい剣幕でウェイに歯向かっていったのは、思い描く未来をウェイがぶち壊したからです。
 スラム街を守ってきた鼠王もウェイの作戦には強く反対していたと言われていましたが、鼠王の娘ユーシャはウェイの指示を実行に移しました。メイン6章ではチェンの怒りの矛先はウェイただ1人に向かっていました。「あんな命令を下せるのはお前しかいない」と言っていた通り、指令の出元がウェイだと分かっていたのです。チェンがユーシャに言及することはありませんでした。
 しかし、チェンの心にはわだかまりが残っていたのだなというのが「ドッソレスホリデー」でわかりました。なぜユーシャはウェイの言うことを素直に聞いて、あんな酷いことを実行してしまったのかとチェンは怒っていたのですね。
 ユーシャがこのような形で手を汚していたかどうかというのは曖昧に書かれており、「ドッソレスホリデー」を最後まで読んでも確定的なことが書かれていません。我々にはまだ見えていない真実が裏にはあるのかもしれません。


※追記
 心優しきお方にコメント欄にてご指摘を頂けたので追記。
 メイン8章のラストの鼠王とウェイの中で、「鼠王・ユーシャ・影衛が組んで何かを企んだ」という記載があります。「ウェイが罪を犯すのを黙って見過ごせなかった」と言っていることから、彼らはウェイを騙し、スラムの感染者を排除したように見せかけたようでした。排水システムに捨てられていたのは無垢な感染者の死体ではなかったようです。
 では一体チェンたちが見たものはなんだったのか、というのは気になりますが、影衛はレユニオンと戦闘をしていたので、その戦死者だったのかもしれませんね。

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3. ドッソレスへの招待 -ユーシャの重責-

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 メイン6章でチェンとユーシャは直接顔を合わせることはありませんでした。その後はスワイヤーの誕生日会に同席したかも?と言っていましたが、2人の記憶は曖昧でした。メイン6章の件が起きたあと初めて本格的に言葉を交わしたのがドッソレスでの出来事でした。
 カンデラはドッソレスをさらに発展させるべく、大都市龍門とお近づきになりたいと考えています。総督であるウェイと、裏社会を取り仕切る鼠王と仲良くするため、毎年招待状を送り続けていました。
 ウェイも鼠王もドッソレスがどういう成り立ちの街なのか知っています。彼らはもうドッソレスの華やかな雰囲気に浸っても楽しめないので、招待を受ける気はありません。そこに目をつけたのがフミヅキでした。チェンとユーシャに代理でドッソレスに向かうように手配をしました。
 ウェイへの招待状を代わりに使うからには、龍門総督の代理としてのそれなりの人物がドッソレスへ向かう必要があります。カンデラはウェイに加えて鼠王にも招待状を送っていることから、鼠王のことも重要な人物だと認めています。その娘のユーシャは代理で向かうだけの資格があるということでしょう。
 一方のチェンは龍門近衛局を抜けたため、いまは龍門とは何のかかわりも持ちません。ロドスという私企業の社員であり、本来招待状を代理で使えるような身分ではありません。ユーシャとセットにすることで体裁を保つことができるとフミヅキは考えたのだと思います。
 フミヅキはチェンには休暇を、ユーシャにはチャンスを与えたいと言っていました。チェンは実はシエスタで休暇を満喫しているところだったので、フミヅキの心配は取り越し苦労でした。一方ユーシャにかけられた期待は、ユーシャの心情を理解する鍵になります。
 メイン6章で黒蓑の指揮をウェイから任せられたように、ユーシャは父の後を継いで龍門の裏社会を守る次期トップとしての期待をかけられているようです。期待はしつつもウェイと鼠王はあくまで冷徹にユーシャの器を見定めようとしています。「鼠王の娘が鼠王の器であるとは限らない」とイベントストーリー中で何度も語られるように、血筋からくる重責と戦っているのがユーシャという人物なのだなと初めてわかりました。
 責任の重圧と戦うユーシャに対して、チェンは自らの生き方に悩んでいるところです。それがユーシャから見ると気に食わないのも理解できます。誰に対して責任を負うでもなく、見ず知らずの人の事情に土足で踏み込み、勝手に理想を掲げてヒーローごっこを続ける幼稚な奴とチェンを評しているのも頷けます。
 一方でチェンからすると、ユーシャは6章に続いてまたもやウェイの代理として動いているわけで、素直にその理由が気になっているのですね。「なぜウェイの小間使いをしている?」と。ユーシャからすれば自分が鼠王たる実力を持っていることを示すために必死なわけで、そんなバカげた質問をされて余計に苛立ってしまいました。
 チェンとユーシャの生き方は違いすぎて、お互いを理解するのはとても難しそうだなと思ってしまいます。しかし、若者であればそういう立場の違いも乗り越えられるのではないかと未来に希望を持っているのが、フミヅキという人だったのかなと思います。彼女は言葉にこそ出しませんでしたが、チェンとユーシャがお互いを深く理解し、龍門の未来を支える双璧となってもらえないかと、ウェイの傍らで動いているのかもしれませんね。

4. ボリバルの歴史

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 ドッソレスでパンチョが起こした反乱に対処する中で、チェンとユーシャの関係に変化が起こります。パンチョの事件の背景を理解するにはボリバルという国の成り立ちを把握しておかねばなりませんので、少し歴史の授業の時間とします。
 上表はボリバルの統治者の移り変わりを示した図です。気にしておくべきは2点あります。
 1点目は、ボリバルという土地に最初に根を下ろしたのがイベリア人だったということです。ボリバルはテラの北西、イベリアは南東にあるので地理的には非常に離れています。なぜイベリア人がこの地を見つけるに至ったのかは今後も気にしておきたい話だなと思いました。
 ドッソレスはボリバルの北西にあり、街の北側には本物の海が広がっているとカンデラが言っていました。昔のイベリアは陸に上がってきたエーギル人たちの技術で発展していたので、海というのが繋がるポイントだったのかもしれません。
 また、ドッソレスの人工海に浮かぶ船はイベリア人の技術を復元したものだとカンデラが自慢をしていました。ボリバルを統治していたころにイベリア人が遺したものだと思うのですが、そんなものを復元して何か意味はあるんでしょうかね。

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 2点目は現在の分割統治に至る過程です。
 イベリア人が何らかの理由でボリバルの地を離れたあと、リターニア人がやってきました。リターニアも地理的には少し離れているので奇妙です。現在とは統治範囲が違ったのでしょうか。
 リターニアがボリバルの地を掌握し、シンガス王朝という傀儡政権を作りだしたのち、クルビアで内戦を起こそうとして失敗し、逆にクルビアに攻め込まれてボリバルには連合政府が樹立しました。2つの勢力による分割統治はボリバル人にとっては息苦しいでしょうから、不満が爆発してトゥルーボリバリアンという自治政府が出来上がりました。三政府体制の出来上がりです。
 アーツの研究が盛んなリターニアと、科学系企業が発達するクルビアという2つの大国に領土を狙われ、苦しい思いをしているのがボリバル人です。色々な勢力が入り乱れるのは、やはりボリバルの地に源石の鉱脈があるからでしょうか。

5. パンチョの反乱

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 パンチョ・サラスという人物はトゥルーボリバリアンに属する軍人でしたが、陰謀に嵌められて軍を追われ、ドッソレスに来ました。カンデラの作り上げたこの都市に絶望し、この都市を破壊せねばならないと息を巻いていました。
 パンチョは船の上でドッソレスウォーリアーチャンピオンを見物する三政府の大物を人質に取り、カンデラと交渉しようとしていましたが、チェンとユーシャの活躍で作戦は打ち破られてしまいました。カンデラを脅す手段については周到に用意していたものの、その先に何を為そうとしていたのか不明瞭だったパンチョの作戦は、拙いものだったと言わざるを得ません。
 長い歴史を振り返ってみても、ボリバルの地をボリバル人が統治したことは一度もありません。ボリバル人の国家というのがどういう形なのか、ビジョンを示せないと理想は実現しませんね。
 パンチョの息子であるエルネストは父を手伝っていましたが、カンデラの下で働くうちに父の掲げた理想に疑問を抱くようになりました。カンデラの作り上げたドッソレスが良い街ではないという父の意見には賛同を示していましたが、カンデラの方が真にボリバルを愛し、ボリバルのために行動しているのではないかと考えるようになったようです。一方で養子として育てられたラファエラはパンチョの考えに疑問を持っていない様子でした。
 チェンはエルネストへ、ユーシャはラファエラに自分の考えを話します。それらは自分自身へ言い聞かせているようにも見えましたし、チェンはユーシャへ、ユーシャはチェンへと語りかけているようでもありました。
 ユーシャは考え無しに大人に従うラファエラに対して、同じ道筋を辿っていくだけではだめだという説教をしました。鼠王の娘として鼠王の跡を継ぐにあたって、父と同じやり方をしているだけではダメだと思っているのでしょう。また、道なき道を切り開こうとしているチェンへのエールにも聞こえます。

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 チェンはエルネストに自分の迷いを打ち明けていました。自分を動かす原動力が何なのかはまだわかっていないが、それでも自分はなすべきことを為さねばならないと決意をしていました。

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 エルネストにはチェンの姿が眩しく映ります。彼は父とカンデラの間で揺れ動き、為すべきことが何なのか見極められないまま、流れに身を任せて父の反乱を手伝っていました。もちろん、今回を転機にして自分を見つめなおしたいとは言っていたものの、確固たる信念がないまま動いていたことを自覚していた彼は、チェンを見てうらやましく思ったことでしょう。
 自分の信念を信じて、為すべきことを為すのがチェン・フェイゼなのだという考え方は、一定ユーシャにも伝わったことでしょう。とはいえ、ユーシャとチェンが抱える事情が簡単に交わるわけではありません。でも、2人はお互いの抱える課題と、それに向き合おうとしている様子を知ることになりました。相互理解への一歩を踏み出したのです。いつかすべて正直に話せる日が来るといいですね。

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※「龍威鼠心」とは

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 最後に番外編です。
 ドッソレスウォーリアチャンピオンに出場するに当たって、チェンは自分たちのチーム名を「龍威鼠心」と名付けました。これを聞いたホシグマは大爆笑をしていましたが、その理由は特に解説されませんでした。
 大陸版の原文を見てみると、チーム名は「鼠胆龙威」となっています。これはアクション映画「ダイ・ハード」の中国上映版のタイトルをもじったものです。さらに言うと「ダイ・ハード」をパロディした映画に全く同じタイトルのものがあります。
 龍門が属する炎国は映画文化が盛んです。エフイーターがカンフースターだったり、ニェンが映画撮影が好きだという話が「エンシェントフォージ」で描かれたり、ホシグマが水銃で戦うチェンの様子をフィルムにまとめたがっていたり。そんな龍門で生まれ育ったチェンも、映画文化には一定の理解があるのでしょう。テラの世界にある映画のタイトルをもじるような形で名付けたのが今回のチーム名だったのかなと思います。特に本家ダイ・ハードで「虎」だったところがパロディ版では「鼠」になっていますから、バカにするニュアンスがあるのかなと想像されます。
 この原文を翻訳するときに、英語版もかなり洒落たことをしています。日本語版でもこの場面に映りました。「LUNG wRATh」ですね。

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 LUNGは中国語「龍」のローマ字表記です。龍門(ロンメン)の「龍」と同じです。wrathというのは"激怒"とか"怒気"を表す言葉です。合わせて「龍威」の部分を表現しています。
 wrathの中のRATが大文字になっていて、ここで鼠を表現しています。ちょうどwrathの真ん中にすっぽり入っている感じが、鼠が龍に恐れをなして縮こまっている感じに見えます。この表記もホシグマが大笑いしてしかるべきだなという面白い名付けになっています。

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 ちなみに遊龍チェンの英訳もなかなかおしゃれです。「Ch'en the Holungday」でHolidayにlungが入っている形ですね。
 日本語訳の「龍威鼠心」はどちらかというと英訳になじむような形で翻訳されている印象を受けます。日本語版でもLUNG wRAThはイラストの一部に描かれますから。
 チェンはウェイやユーシャに怒っていて、ユーシャは自身の抱える重圧と戦っているという構図になっているので、チェンとユーシャの状態を現した言葉としても「龍威鼠心」は機能しているような印象を受けて、味わい深いなあと思いました。



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