2023年2月17日開始のイベント「未完の断章」のストーリーを整理していきます。
1. ブラウンテイル
1-1. イェラグ三大名家
第一話「ブランテイル」は2022年6月のイベント「風雪一過」の続きのお話です。
「風雪一過」はイェラグ三大名家および巫女の間で起きた内紛を描いた物語でした。両親が亡くなり没落してしまったシルバーアッシュ家を建て直すべく、4年間のヴィクトリア留学後にエンシオディスは対外貿易を積極的に進め、財力により国内の地位を取り戻しました。ノーシスと共謀してペイルロッシュ家とブランテイル家を出し抜こうとして、大きな戦争が起こりそうになったのですが、ドクターやエンヤの活躍によって丸く収まりました。
第一話はその名の通り、ブラウンテイル家のその後を描いたお話です。スキウースとユカタンがヴィクトリア視察に出かけました。
出発前、スキウースはラタトスに、本当は自分が行きたかったんじゃないのかと問いかけます。これはラタトスの昔の様子を思い出したスキウースが、姉の本心を探り当てたコメントでした。
留学から帰ってきたエンシオディスは、イェラグを国外の勢力に売り渡すかのような勢いで、積極的に対外勢力と取引を行いました。彼の行動を少しでも理解して追い付こうと、ラタトスは独学で経済学を勉強しました。しかし、イェラグから一歩も出たことがないラタトスにとって、外の世界のダイナミックな経済活動をイメージすることは難しかったことでしょう。
スキウースは当時のラタトスの苦労を知っていて、思わず聞き返してしまったという感じでした。ラタトスもちょっと動揺していましたね。
ラタトスは当主として忙しくしていますが、イェラグの内紛が終わったいま、国外視察に向かうこともできなくはないはずです。しかし彼女はその役目を妹に譲り、自分は国内の足場を固めることに専念しています。時系列関係は不明ですが、「吾れ先導者たらん」でスキウースとラタトスがラテラーノに来ていたのも同じような理由だったものと思われます。
1-2. ブラウンテイル家が目指すもの
ブラウンテイル家のいまの体制がどのようにして作られたのか。
先代当主はラタトスの祖父にあたるルカという人でした。この人はラタトスに期待を寄せて後継者として育てていました。祖父の病状が悪化をし始めたとき、ラタトスはその事実を妹には教えず、1人でブラウンテイル家を背負う覚悟を決めます。妹に苦労をかけたくなかったからでしょう。
スキウースは今回、ヴィクトリア視察を任されて気づいたことがありました。本当はラタトスは自由に生きたかったのかもしれず、祖父から継いだこの家が彼女の足枷になってしまっていたのかもしれないと。
そんな2人をユカタンは一歩引いた立場から見ています。祖父も含め、ブラウンテイル家は代々強がりだなと言っていました。本当はお互いを思いやっているのに、意地を張ってしまって空回り。そういうところが逆にいいところなのかもしれませんが。
ラタトスはエンシオディスに一目置いています。若くして当主として家を預かる立場は彼女と似ていますが、エンシオディスのヴィクトリア留学はいままでのすべてを捨て去るような決断でした。そんな決断が自分にもできたらと、少し羨ましがっているような雰囲気を感じました。
一方、今回の視察で初めてヴィクトリアの発展具合を目の当たりにしたスキウースは、ようやくエンシオディスが目指したものの一片を理解したのです。ヴィクトリアのこの光景は、イェラグも持つべきもの。それはきっと、エンシオディスと同じ思いであるはずです。
1-3. ヴィクトリアとの取引
スキウースが行った取引について。
彼女たちはハリスンというヴィクトリアの商人のパーティに出席しました。ブラウンテイル家と商業取引の契約を結ぶためです。イェラグのことを舐めているハリスンはまともに取り合おうとしないのですが、幸運なことにスキウースにチャンスが巡ってきました。
ハリスンはエヴァンズ子爵という貴族と提携を結んでいたのですが、エヴァンズ子爵がリターニアで休暇をとっている間に協力会社の株を独占したり、彼が持つ土地を買い叩いたりとめちゃくちゃなことをしていました。
ハリスンの裏切りを元々知っていたと思われるエヴァンズ子爵は、ハリスンを不意打ちする形でパーティ会場に現れ、物理的に仕返しをしにきました。いくらお金を持っていても商人は平民。貴族の方が立場が上なので、エヴァンズ子爵が罪に問われることはないのでしょう。
ユカタンは暴れているエヴァンズ子爵の部下を倒してハリスンを助けました。風雪一過では彼はクーリエと張り合うぐらいでしたから、貴族の部下など敵ではありません。
ラストシーンはスキウースが改めてハリスンに対して提携を持ちかけるところで終わりました。エヴァンズ子爵との関係が切れてしまってハリスンが困っているのは明白。いますぐにハリスンと提携するとブラウンテイル家がエヴァンズ子爵からにらまれる可能性もあるのですが、しょせんエヴァンズは子爵なので、スキウースも強気だったのですね。
ラタトスがスキウースを外に出したのは、妹に経験を積んでほしいという思いのほかに、妹の方が自分よりも要領よく交渉を進められるだろうという期待もあったことでしょう。彼女は見事に期待に応えてみせたのです。
2. また会う日まで
2-1. 白天師を巡って
第二話「また会う日まで」は2022年7月のイベント「将進酒」の続きのお話です。
「将進酒」の最終局面のお話を振り返っておきます。歳をコントロールしたい司歳台と、歳を危険視する礼部は対立を深めていました。リィンとニェンとシーが尚蜀に揃い歳相が現れたとき、礼部の切り札である白天師に動いてもらいたい勢力と、動かれては困る勢力に別れました。
尚蜀知府(知事)のリャンは民の安全を願い、船頭のシェンに助太刀を頼みます。一方、ニンは礼部の意志として歳相を封じ込めなくてはいけません。ズオのお父さんも白天師に手を出させたがたっていると言われていて、緊張が高まりました。
天師府の要請で白天師を止めに来たのがレイズでした。レイズはいまは代理寺というお役人を監督する立場にいるのですが、雷のアーツを習っていたときに白天師が兄弟子だったため、説得が可能だったようです。レイズのおかげで炎国のお役人同士の関係も壊れずに済みました。
2-2. 太傅の命令
一連の事件が終わったあと、太傅というものすごく偉い人が尚蜀にやってきました。
太傅はリャンの才能を見出し、尚蜀知府を解任して自分と一緒に来るように命じました。一度都に戻り、そのあと玉門へ行くとのことでした。このとき、リャンは少し返答を言い淀みます。自分が尚蜀を離れてしまうこと、そしてニンと離れ離れになってしまうことが頭をよぎったのです。
それを横で見ていたニンは「おめでとうございます」と背中を押してあげました。リャンが返答に困っていることも彼女にはお見通しだったわけです。今回はその裏話として、リャンが躊躇いなく太傅についていくと返答したら、それはそれで怒っただろうと言っていました。可愛いですね。
優しい太傅はニンにも玉門へ向かうように命令を出しました。太傅とリャンは都を経由するので少しの間離れ離れになってしまいますが、後に玉門で2人は再会できるでしょう。「また会う日まで」というタイトルはそういう意味が込められていたと思います。
もう1人玉門へ向かう人物がいます。ドゥです。尚蜀で客桟をやっているより、外に出たいということで鏢局の若い衆を引き連れて玉門へ向かう決意を固めました。テイはドゥのことが心配でたまらないという様子でした。血の繋がっていない親子とはいえ、父が娘を心配するのはいつの時代も変わらないですね。
2-3. ズオとリン家
ズオとレイズが気になるやりとりをしていました。
ズオのお父さんは、レイズの家族であるリン家を懇意にしているということでした。ズオ家とリン家の間にはなんらかのしきたりがあるらしく、レイズは自分のことを「イェン姉さん」と呼ばせていました。
ズオはリィンたちに会いたがっていました。司歳台の人間として、彼女たちをこのまま放っておくわけにはいかないとでも思っていたのでしょうか。レイズは太傅のご判断なのだから見逃すべきと言っていました。「将進酒」のラストで太傅はリィンたちと親しげに会話をしていましたし、少なくともこの3人については人間の味方についてくれるだろうと判断を下したようでした。
尚蜀で起きた一連の出来事には様々な人間の意志が絡まっていました。名前が出てきただけでもたくさんのお役所がありました。レイズは裏で誰かが糸を引いているに違いないと言っていて、今後も「将進酒」で起きたことはキーになってきそうな予感です。
一方、ズオ自身は自分の意志で動いているのだと言っていて、若くてまっすぐな青年なんだなと思いました。次の炎国イベントがどういう展開になるのか楽しみですね。
3. 狼と群れ
3-1. 2人のしくじり
第三話「狼と群れ」は2020年5月のイベント「喧噪の掟」の続きとなるお話です。
シラクーザでマフィア同士の抗争に敗れて龍門にやってきたガンビーノとカポネは、龍門のトランスポーター業界に目を付けました。フェンツ運輸の社長の息子であるバイソンがペンギン急便を見学するという情報を掴んだ2人は、バイソンを誘拐して二社の関係を悪くさせ、漬け込む隙を作ろうとしました。
しかしエンペラーのレコードを破壊してしまってペンギン急便を敵に回してしまったことと、源石爆弾や実弾を使用して龍門のルールに背いたことで鼠王を怒らせてしまったことで、ガンビーノたちの計画は失敗に終わりました。
「喧噪の掟」のラストでは2人の前に突然ラップランドが現れました。顔見知りだったようで、ラップランドのことは裏切り者だの落ちぶれ狼だのと呼んでいました。「10秒あげるから逃げてごらん」とラップランドが宣言したところで終わっていたため、てっきり2人は始末されてしまったものと思っていました。
3-2. 手紙を受け取る仕事
しかし今回のイベントでガンビーノとカポネは生きていることがわかりました。ラップランドに生かされている、と言った方が正確だったかもしれません。
「狼と群れ」は2人が手紙を受け取ってラップランドに届ける仕事を請けている場面から始まりました。トマゾという運び屋から手紙を受け取るはずだったのですが、約束の時間になってもトマゾは現れません。実はガンビーノたちがシラクーザから連れてきたマフィアの残党が間違えてトマゾを襲撃しており、約束の時間に落ち合うことができませんでした。
トマゾは相当の手練れだったので、襲撃してきた不届き者を殺すことなく返り討ちにして、手紙は無事2人に渡りました。
3-3. ミズ・シチリアの判断
この手紙はミズ・シチリアからラップランドに宛てたものでした。
ミズ・シチリアは恥さらし2人は荒野に穴を掘って埋めると良いと手紙に書いてきていました。シラクーザマフィアはファミリーとしての繋がりを大事にするのですが、そのボスであるミズ・シチリアに切り捨てられてしまって、2人の命は崖っぷちです。
2人で殺し合って、勝った方を守ってあげるよとイカレた提案をしてきたラップランドに対して、ガンビーノとカポネは死ぬ気で立ち向かいます。ラップランドに剣を抜かせることすらできませんでしたが、2人のその行動を気に入った彼女は、手紙を燃やしてミズ・シチリアの命令をなかったことにしてしまいました。イカレていますねホントに。
ラップランドがガンビーノとカポネを生かした理由は、半分ぐらいは面白がったものだとは思うのですが、仕事を手伝ってほしいというちゃんとした理由もありそうでした。龍門にいるもう1人の一匹狼、つまりテキサスに関連したことのようです。
3-4. 一匹狼の対処
トマゾとミズ・シチリアにとっても、ガンビーノとカポネは些事でしかなく、一匹狼たちが真剣に考えるべき問題となっているようでした。
トマゾはラップランドに手紙を届けにきただけでなく、鼠王にメッセージを伝えにきていました。一匹狼たちが龍門に長居するようなら、シラクーザマフィアは手を出さざるを得ないと。対する鼠王はここでも、龍門のルールを守れと繰り返していました。
ただ、ミズ・シチリアにとっては群れを抜けることが何よりも許せない行為らしく、龍門のルールを守れるかは保証できないとのこと。血の匂いがしますね。ガンビーノとカポネはお詫びに処分してくれと鼠王に言ってきていましたが、鼠王は優しいのでそんなことはどうでもよいでしょう。
テキサスはエンペラーが見張っているから問題はないとしたうえで、ラップランドの方は鼠王の部下に見張らせていました。「喧噪の掟」の話のうち、エクシアとモスティマに関わるラテラーノの文脈は「吾れ先導者たらん」へと引き継がれていきましたが、シラクーザの話もいずれどこかで回収されることになるのでしょうね。楽しみです。
4. さらばロイ
4-1. 支配からの脱却
第四話「さらばロイ」は2022年4月のイベント「ニアーライト」の後の時系列のお話です。
カジミエーシュという国は行政を担う監査会政府と、経済を司る商業連合が激しく対立する国です。大昔から国を守ることに貢献してきた騎士たちの立場は時代の波に流されて征戦騎士と競技騎士に分かれ、商業連合は無冑盟という騎士殺しの暗殺集団を抱えています。
「ニアーライト」のラストで、マーガレットに敗れて連覇を逃したディカイオポリスは引退を選びました。田舎の村に移住して、静かに余生を過ごしたいと考えていたようです。そんな彼のもとに、無冑盟のロイがやってきて幕切れとなっていました。
感染者であっても実力さえあれば競技騎士として認められるのだという希望の象徴だったディカイオポリスは、当然多くの人の恨みも買っていました。彼がのうのうと生き延びることは許されず、処分の命令がラズライトに下ったのかなと想像させられるラストシーンでした。
しかし、「さらばロイ」でラズライトの2人はディカイオポリスを始末しにきたわけではなかったことがわかります。無冑盟を抜けたがっていたロイたちは、ディカイオポリスと相討ちになったフリをして、自分たちを社会的に抹殺したのです。もちろんディカイオポリスも生きているでしょう。彼も本当の意味で静かな余生を見つけられる場所に移動したものと思われます。
4-2. 飲み屋で出会った人たち
ロイは整形手術を受けて、別人として生まれ変わろうとしていました。その手術が行われる直前、彼は飲み屋で出会った人たちと一緒に飲んでいました。
飲み屋で一緒になったのは鉄腕騎士という感染者の競技騎士と、企業勤めの会社員でした。ロイは田舎から出てきた狩人と噓をついて接していて、競技騎士とサラリーマンの両方の辛さを語られていました。カジミエーシュは華やかで先進的なのですが、そこに生きる人々は誰しも必死に生きている感じがします。
会社を無断欠勤したサラリーマンは明日上司に詰められることでしょう。首を切られるかもしれません。一方、商業連合への協力を拒否した鉄腕騎士は無冑盟に消されてしまいました。今まではディカイオポリスが守ってくれていたのですが、その庇護はもうありません。
そんな彼らの悲劇を横目に、ロイも自分とおさらばをする時間がやってきました。
4-3. 何のために頑張っていたのか
飲み屋から帰ってきて、ロイは整形手術を受けました。
ロイとモニークの手術を担当してくれた医者は、ロイによって撃ち殺されました。口の堅い医者は自分で作るのだかとか。ロイはヨル・テイラー、モニークはターナ・テイラーという新しい身分を手に入れ、夫妻として生きることになりました。今後、この2人の立ち絵はもう出てこないと思いますが、もしかしたら名前でわかるかもしれません。
ロイはクロガネと会話したことを断片的に思い出していました。元々狩人だったロイを拾って、無冑盟という組織を作ったのがクロガネという人。「三二一の逆ピラミッド」と呼ばれる構造をしている無冑盟は、クロガネが3人いるのかと思われていましたが、ロイを拾ったクロガネは1人のようでした。他に2人いるのか、いないのか。
「ロイよさらば」の中では、ロイがただただ良い暮らしをしたかっただけだったのだ、ということが繰り返し語られました。モニークに何のために頑張っていたのか尋ねられた際も、よく覚えていないけどたぶんそうだったのではないかという曖昧な回答をしていました。
カジミエーシュでは誰もが良い暮らしを求めて働いています。ロイもその1人だったはず。「ロイよさらば」のラストは、モニークが「バカンスに行きたい」と言ったのに対して、「どこにでもお供するぜ」とロイが返して終わります。ラズライトとして一緒に仕事をするうちに、モニークに対して情が移ったのかもしれないですね。モニークと一緒に生きることが、実はロイが一番やりたいことなのかも。
5. 和して同ぜず
5-1. シエスタと火山
第五話「和して同ぜず」は2020年4月のイベント「青く燃ゆる夏」の続きのお話でした。
美しいビーチを観光資源として潤っていたシエスタに、火山の噴火という危機が迫っていることが発覚しました。火山にいたポンペイという巨大オリジムシと、トランスポーターという立場で暗躍していたクローニンを両方やっつけてイベントは終わりました。
シエスタはその後、火山から逃げるために移動都市化することを決定します。今まで産業の中心だったビーチを離れ、見知らぬ土地を放浪せねばなりません。
シエスタはどの国家にも属さない中立の都市です。後ろ盾がないまま、この難しい転換を実現することができるのか。市長のヘルマンの手腕が問われています。
5-2. フェンツ運輸は何を提供するのか
ヘルマン市長はフェンツ運輸にヘルプを求めました。
フェンツ運輸に求められたのは輸送能力でした。新しい移動都市へとモノやヒトを運ぶ輸送能力が足りていなかったとのことです。しかしピーターズはそれ以上の提携をヘルマンに提案します。フェンツ運輸はシエスタが抱える「転換」という問題を解決しに来たと言うのです。
ピーターズの提案は新しい物流会社を設立することでした。この会社を通じて、どの政治団体にも属さない新しい貿易ネットワークを構築し、シエスタが中立の立場で市場に参入できるようにサポートを行うというのです。
この提案により、シエスタが今まで守り抜いてきた独立性が維持できるとともに、新しい収益源が確保できるようにもなります。単なる物資の輸送にはとどまらない問題解決がフェンツ運輸には行えるのだと主張したのです。
打ち合わせの中でピーターズが例に挙げたのはクルビアにあるトカロントという街です。度々名前が出てくる大きな都市なのですが、シエスタと同じように独立都市なのだという話が出てきました。クルビア国内を周っていて、クルビア政府が推し進める開拓事業に沿った形で利益を提供しているとのことです。
シエスタはトカロントのように開拓をやっている土地を周るわけではありません。トカロントのように収益が上げられる事業モデルを、他に確保しないと立ち行かなくなってしまうでしょう。フェンツ運輸が設立する新しい物流会社がその解決策になると言うのですね。
5-3. 1人の父親として
ヘルマンはピーターズの提案を承諾し、彼とバイソンをビーチに連れ出しました。そこで2人の身の上話を聞くことができました。
ヘルマンの話は半分ぐらいは我々もわかっていることです。ヘルマンには娘が2人いると言っていました。1人は血のつながった娘であるセイロン。もう1人は自分を殺しに来た暗殺者であり、その後彼とセイロンを守るボディーガードとなったシュバルツです。
ヘルマンはシュバルツのことは心配していない様子でした。修羅場を1人で潜り抜けてきた人ですからね。ヘルマンに守ってもらうまでもありません。
セイロンのことはまだまだ心配だと言っていました。彼女の大学の様子をこっそり見に行ったときのエピソードが語られていました。忙しい父親に変わって代役を勝手に立てたこと、その男性をヘルマンは秘書として傍に置いていることが語られました。セイロンには人を見る目があるのだと。
それに対してピーターズもバイソンが小さかった頃の、運動会のエピソードを明かしていました。今後、バイソンはフェンツ運輸を継いでもいいし、好きなことを見つけたらそっちをやらせてもいいと言っていました。龍門にいる旧友のところに彼を預けてもいいと言っていたので、たぶんエンペラーのことを言っていたのではないかと思います。
この会談を通して、ヘルマンとピーターズはビジネス上の付き合い以上の関係性を築きます。それは1人の父親同士、自分の子供のことを想う気持ちで共感しあったのですね。自分もサラリーマンをやっているのでこの話は実感が湧きました。人間として相手が信頼できるかどうかはすごく大事なポイントなのです。
「青く燃ゆる心」のあと、シエスタがどうなってしまうのかはずっと語られることがありませんでした。このまま何も触れられず仕舞いなのかなと思っていたので、今回フェンツ運輸のおかげでなんとかなりそうで良かったなと思いました。随分と昔のイベントにも、こうやって再度光を当ててくれるのが嬉しかったです。
6. トゥルーストーリー
6-1. アンソニー争奪戦
第六話の「トゥルーストーリー」は2021年6月の「孤島激震」からの続きのお話です。
クルビアの建材業界の覇権争いで命を狙われたアンソニー・サイモンは、荒野を移動するマンスフィールド監獄に匿われていました。彼の命を巡って、ライン生命の部署間の争いが勃発。結局、暗殺者たちやミュルジスを出し抜いて、サリアが美味しいところを全部持って行ってしまったという幕切れでした。
「トゥルーストーリー」の主人公は、ハイドブラザーズ社に雇われた殺し屋であるジェッセルトンでした。彼はビーチブレラという製薬会社のエージェントなのですが、他社からの依頼を請けて監獄に潜入していました。お金をチラつかせてロビンをそそのかしたのもこの人でしたね。
「孤島激震」のドタバタ劇のあと、暗殺に失敗したジェッセルトンはなんとそのままマンスフィールド監獄に収監されてしまっていたというのが「トゥルーストーリー」の出発点でした。看守の身分を偽ったことと、殺人未遂の罪科に問われたということのようです。
6-2. 遊ばれていたのは
ジェッセルトンは獄中でどんな様子だったのか。
彼はMr. Kを名乗る人物からの手紙を頼みの綱としていました。Mr. Kはビーチブレラ社の人間で、機を見て助け出すから待っていろとジェッセルトンに手紙を送ってきていました。
ジェッセルトンは早く助け出してほしいので、Mr. Kの言うことを忠実に守り、模範的な囚人として暮らしていました。他の囚人たちを見下しながら。
その中でも、リックと呼ばれる人物に近づき、遊ぼうとしていた様子が描かれていました。妻がリックを裏切ったことにして憎しみに火をつけようと、わざわざ筆跡をまねて手紙を書いたりしていました。ロビンを弄んでいたときと何も変わっていません。
しかし、ジェッセルトンが遊んでいるのを獄長や看守たちは知っていました。そういうことが好きな野郎だとわかっていたので見張っていたのです。それどころか、リックが保釈されそうになっているという事実を掴んでおきながら、ジェッセルトンがオモチャにしようとしているので逆に面白がって放置していたとのこと。
人をオモチャにしようとしていたヤツが、実は看守たちのオモチャだったという構図なのですが、最後にもっと壮大なオチが明かされてこのお話は終わりでした。
ジェッセルトンの獄中の様子はテレビでフィクションとして放映されていたのです。その番組の名前が「トゥルーストーリー」というタイトルでした。Mr. Kからの手紙も噓っぱちで、ビーチブレラ社はジェッセルトンを助けるつもりなどなく、おそらくテレビ会社に売り飛ばしていたのですね。社内での成績は優秀なようでしたが、殺し屋として欠点を抱えていることは明らか。高い金を積んでマンスフィールド監獄から助け出すよりも、ビーチブレラは一番会社にとって利益になる方法で彼を処分したのかもしれません。
第一話から第五話までは、アークナイツには珍しく「愛」を見せてくれた物語だったのですが、最後に「愛」とは正反対の地獄を見せてくるあたり、ただでは終わらせてくれないこのゲームの底知れなさと意地悪さを思い知りました。油断できませんね。
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