3度目のサザンドラ

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【アークナイツ】ストーリー考察/感想 - 火山と雲と夢色の旅路 編

 2024年1月16日開始のイベント「火山と雲と夢色の旅路」のストーリーを整理していきます。

1. スワイヤーとバイソン

1-1. シエスタの移転

 イベントの舞台となるシエスタについて整理します。
 「青く燃ゆる心」で初登場したシエスタは、テラでは珍しい定住型の都市でした。ビーチとシエスタ火山を観光資源として経済を回していたのですが、火山の噴火の兆候が観測されてしまい、移動都市を作って移転することになりました。
 新しい移動都市の建設と並行し、住人の移住を準備していくことは簡単ではありません。「未完の断章」の5話「付和雷同」では、移転をするにあたって人的リソースなどが不足しているシエスタを、フェンツ運輸が支援しようと提案があった場面が描かれていました。
 「青く燃ゆる心」から2年後。「火山と雲と夢色の旅路」のタイミングでは、ほとんどのシエスタ市民が新しい移動都市ニューシエスタへ移住していました。ニューシエスタは旧シエスタの100kmほどの地点に停泊しています。
 シエスタが移動都市化したことをきっかけに、クルビアがちょっかいをかけてくるようになりました。もともと定住していたときもクルビアはシエスタを配下に収めようと企てていたのですが、市長ヘルマンの力量でシエスタは独立を守ってきました。今回もクルビアの要求を跳ねのけようとしています。
 旧シエスタは観光都市だったので、観光産業に従事していた人がたくさんいました。自分の仕事を簡単に変えることは難しいため、彼らはニューシエスタにも観光街を作りました。しかしビーチも火山もないニューシエスタに来る観光客は少なく、観光街の景気は良くありません。
 シエスタ火山からは天然の黒曜石が産出します。旧シエスタではこれも1つの名産品だったのですが、過度な採掘が環境破壊を引き起こしたため、市長は採掘を禁じました。黒曜石の取り扱い禁止もニューシエスタの経済への痛手となっています。

1-2. ニューシエスタへの入札

 ニューシエスタでは新しいプロジェクトへの入札が行われていました。
 不況にあえぐ観光街を立て直すため、再建プロジェクトが計画されました。複数社から入札があればコンペになります。バイソンとスワイヤーがそれぞれ入札を検討していく様子がこのイベントストーリーの軸の1つになっていました。
 バイソンの父はフェンツ運輸の社長のピーターズです。「未完の断章」ではヘルマンとピーターズの交渉の様子が描かれており、そのときからシエスタに物流センターを作る計画が提案されていました。ピーターズは実務をバイソンに任せており、バイソンが社長を務めるフェンレン貿易という新しい会社が立ち上げられていました。形式上フェンレン貿易はフェンツ運輸の子会社ですが、バイソンは父の力を借りずに入札に挑むのだと息巻いていました。ピーターズの動きが龍門商業連合会によって制限されているという側面もありました。
 バイソンの前に立ちはだかったのがベアトリクス・スワイヤーでした。彼女は龍門近衛局の時期局長です。ヴィクトリアや龍門を股にかけて活躍する財閥スワイヤーグループの後継者候補の1人という顔も持っており、この物語では後者の立場で動いていました。
 スワイヤーはバカンスでニューシエスタを訪れたという体裁にしていました。本当はこの都市を投資先として目を付けていたわけなのですが。
 ヘルマンはスワイヤーグループと長年やりとりをしたことがあり、ヘルマンの敏腕っぷりはスワイヤーの耳にも入っていました。シエスタが独立性を保ってこれたのは彼のおかげです。
 バイソンはこの入札になんとしてでも勝ちたいと考えています。スワイヤーは知り合いなので、入札から降りてもらえないか説得を試みました。しかし、勝ちたいなら公平に入札で勝てばいいじゃないかと断られてしまいました。手厳しい正論ですね。


1-3. 住民へのアピール

 バイソンとスワイヤーによる、住民に対するアピール合戦が始まりました。
 政府への入札で競合が起きた場合、判断するのは本来政府です。しかしシエスタ政府は住民からの支持率も考慮に入れながら判断をしようとしていました。なので2人は住民からの支持を得ようと選挙戦を繰り広げます。
 バイソンは国際商品展覧会を開くことにしました。ニューシエスタに物流センターを作るという彼の計画が採用されれば、シエスタには外国から様々な商品が流れてくるようになります。その恩恵をイメージしてもらおうとしたのです。元々物流センターに前向きでなかった住民たちも、各国の名産品を楽しむことで、バイソンの支持に回ってくれる人が現れました。
 ピーターズが最初に思い描いたこの物流センター計画は、シエスタが独立都市であるという点を活かした生き残り戦略です。大国の意志に振り回されず自由な貿易でテラの各地を繋げられれば、交易でシエスタは潤い、テラ全体のためにもなると彼は考えています。
 一方のスワイヤーはウォーターパークを作るというアイディアで対抗します。ペリペを展示品級の黒曜石で買収し、彼の温泉旅館を改造させてもらったのです。天才エンジニアのスノーズントの協力あってのものでした。
 ウォーターパークのオープン日は、バイソンが商品展覧会を実施する日に合わせていました。住民だけでなく観光客の集客にも繋がり、観光街は久しぶりに活気を取り戻しました。
 住民の支持率はと言うと、スワイヤーが33%、バイソンが21%、他の会社が10%ずつぐらいになり、このままいくとスワイヤーのウォーターパーク建設案が採用される結果となりました。

1-4. 世代交代

 バイソンとスワイヤーの戦いの決着です。
 世論調査では戦いを優位に進めていたスワイヤーですが、突如入札からの辞退をバイソンに提案します。このままいけばスワイヤーの提案が通る場面で、入札から降りる代わりにフェンレン貿易の株式を購入したいと申し出たのです。取引ですね。
 バイソンはこの取引を呑みます。というより、呑んだフリをしました。シエスタのお役人の前で演技をしたのです。
 スワイヤーの行動はシエスタに足を踏み入れた瞬間から監視されていました。スワイヤーグループの後継者争いに巻き込まれているのです。スワイヤーがフェンレン貿易に真正面から正当な手段で投資しようとすれば、動きを察知されて先手を打たれてしまう。それを危惧して、回りくどいやり方で株式を取得しようというのが今回のスワイヤーの作戦でした。
 結局フェンレン貿易には未登録の感染者がいるという密告でちょっかいがかけられたのですが、バイソンたちにはヘルマンとのコネクションがあるので対処が可能です。スワイヤーがおじいさまのアダムスに対して「今回はアタシの勝ちです」というビデオレターを送ったのは、フェンレン貿易に投資する算段が整ったことを意味しています。
 アダムスはウェイや鼠王と同じく、龍門を作り上げた世代の1人です。圧倒的な権力で経済界を支配しており、未知という恐怖でスワイヤーグループを束ねていると言われていました。
 スワイヤーはアダムスが亡くなったあとのことを見据えています。一族の連中はアダムスの遺産に飛びつくでしょうが、彼女はそんなことに興味はありません。次の世代を担う者として、地位を固めたいと考えています。そこで今回目をつけたのがフェンレン貿易との提携でした。
 ピーターズやバイソンと同様、スワイヤーもシエスタが国際貿易の拠点となっていくことに賭けたいと考えています。将来的には龍門のビジネスにも大きな影響を及ぼすことになると予見しているのです。いま投資しておけば、莫大なリターンとなって返ってくるでしょう。
 バイソンも大きな一歩を踏み出していました。親会社であるフェンツ運輸から、フェンレン貿易を勝手に独立させたのです。バイソンの真意はあまり記述がありませんでしたが、彼は父親の庇護を離れたがっていたので、自分の意志でシエスタの国際物流を差配していきたいという意欲が生まれたのかなと思いました。スワイヤーが株式を取得するにあたって、持ち株比率が変わるという事情があったのかもしれません。
 バイソンとスワイヤーはどちらも非常に明快な形で世代交代を行う意志を示しました。アークナイツに出てくる若者たちは優秀で眩しいですね。シエスタ政府は結局、物流センターもウォーターパークもどちらも作ってしまったようです。



2. セイロン

2-1. 鉱山王とバーバラ

 セイロンのお話は、シエスタの感染者にまつわる話題でした。
 セイロンが生まれるまでは、黒曜石の採掘は盛んに行われ続けていました。シエスタの鉱山王と呼ばれたベアーテ・ブラウンは採掘で多くの雇用を生み出しました。しかしベアーテは不慮の事故で鉱石病に感染してしまい、亡くなってしまいました。
 息子のペリペ・ブラウンは父の会社を引き継ぎますが、ちょうどそのころに黒曜石の採掘が禁止されます。ペリペは採掘を制限する動きに対して率先して対応します。それは1人の学者との出会いが印象に残っているからです。それがバーバラ・ドルクスでした。
 バーバラはヘルマンの奥さんです。セイロンが生まれてすぐに亡くなってしまったようでした。バーバラは学者で、ヴィクトリア出身でした。当時のシエスタはヴィクトリアからの圧力を受けており、市長のヘルマンはバーバラの出身地を隠したがっていました。セイロンはバーバラのことをあまりよく知りません。
 バーバラはシエスタの採掘場で鉱山労働者たちとコミュニケーションをとっていました。彼女の研究の目的もあったかもしれませんが、それ以上に鉱山労働者たちの待遇を心配していました。感染のリスクの高い採掘作業中にも、自分の身を守る方法を身に着けるべきだということで助言をしていました。また、夫であるヘルマンに働きかけて、労働者たちの待遇改善も目指しました。
 バーバラは当時のペリペに出会った際に、私が政府の目を感染者に向けさせるのだという発言をしていました。このときすでにお腹の中にいたセイロンのため、シエスタが愛と優しさで満ちた都市であってほしいと願っていたからです。バーバラの想いはヘルマンを動かし、ペリペに伝わり、そしてセイロンを取り巻く環境へと繋がっているのです。

2-2. シエスタの感染者の今後

 いまのセイロンの話に戻ります。
 セイロンはロドス本艦ではなく、シエスタ支部に滞在しています。現在のシエスタでは黒曜石の採掘は禁止されていますが、こっそりと掘っている鉱山労働者がいます。感染者が十分な給料をもらえる仕事は多くなく、裏ルートに流して日銭を稼いでいるのです。
 ペリペは黒曜石のコレクションを楽しんでいるものの、売買からは足を洗っていました。鉱山労働者たちは彼が黒曜石を買ってくれなくなったと文句を言っていました。ペリペはバーバラの理想に感銘を受けて、それを守ろうとしているのです。ドライバーなどの別の仕事を労働者たちに斡旋することで助けようとしています。
 しかしペリペの手元には1つだけ、晶洞のままの黒曜石がありました。バーバラがセイロンを身ごもっているとき、セイロンの生誕祝いにバーバラに渡そうとしていたものです。おそらくバーバラはセイロンの出産後すぐに亡くなってしまったものと考えられるため、渡す機会を失してしまっていたのでしょう。今回の騒動で、ようやく渡すことができました。
 ドリーの分身のちびめーちゃんたちの中で、標識や宛名を食べてしまう迷子の子がいました。この子はバーバラの魂と紐づいた存在で、鼓動の音だけでセイロンを探していました。バードにはこの子だけが見えていました。彼女は坑道で行われていた頃の黒曜石祭でバーバラとシエスタの未来について語り合ったことがあり、そのときに生まれた繋がりが効いているのだと思います。
 一方、ヘルマンはクルビアの使者から圧力をかけられていました。定住都市から移動都市に形態を変えるのであれば、クルビアの移動都市と同等の感染者対策をすべきだと。彼はクルビアに屈するつもりはありませんでしたが、難儀な相手であることは確か。
 セイロンは悩む父を𠮟咤激励しようとしていました。クルビアが感染者の隔離を要求してくるなら、立派な感染者区画を作って働き口も整備すれば良いじゃないかと。彼女は元々シエスタに感染者治療センターを作りたがっていたので、好機が来たと計画を前に進めていました。イベントの最後でようやくシエスタに辿り着いたポンシラスも、この治療センターの建設に貢献しました。
 シエスタを良い都市にしたいというバーバラの想いは、ヘルマンとセイロンに受け継がれました。今後もシエスタは健全に発展を続けていくことでしょう。

3. アデル

3-1. カフェ・モッキンバードの出会い

 アデルの両親とケラー先生の出会いからスタートします。
 ケラーはシエスタ出身です。ナウマン夫妻はシエスタ火山を調査し、火山警告花を探すためにこの地を訪れていました。
 3人が出会ったのはカフェ・モッキンバードでした。コスタのおじいちゃんが経営していたお店です。ケラーはこのお店の常連で、火山の本を読んでいるのをナウマン夫妻が発見して意気投合。火山研究の旅についていくことになりました。
 コスタはカフェを手伝いながら、エレキギターヘビーメタルを演奏している青年でした。「うるさいコスタ」というあだ名がつくほどで、黒曜石祭りのグランプリも狙えるぐらいの腕前だったとか。お役人仕事をしているいまの姿からは想像もつきません。
 コスタはコーヒーにサイダーを入れる奇抜な飲み物を発明しました。ナウマン夫妻はこれを気に入ったのですが、おじいちゃんが全然認めてくれなかったため、コスタはこっそり提供を続けていたのだとか。

3-2. 通り雨計画

 ケラーはナウマン夫妻と一緒にリターニアで研究を行っていました。
 リターニアでは20年ほど前に巫王が倒され、貴族たちを中心とする政治情勢が不安定になりました。ナウマン夫妻の研究室にも影響が及びます。そんな中、とある選帝侯(帝を選ぶ権力を持つ偉い貴族)の軍が彼らに接触してきました。
 カティアは軍と取引を行いました。研究成果の一部を提供する代わりに、安定した学術環境を保証してもらうという内容です。アーツが専門領域だったカティアは、「通り雨計画」なるものを軍に渡しました。兵器へ転用できるような研究だったと言われていました。
 アデルやカーン先輩が知りたがっていたナウマン夫妻の死の真相についても語られました。もともとはケラーも含めた3人でウナ火山の調査に行く予定だったのですが、出発直前に軍の使者が訪れてきました。夫妻に研究に専念してもらおうと、ケラーはひとり残って軍に対応。一方の夫妻は運悪くウナ火山の噴火に巻き込まれてしまい命を落としました。
 軍と繋がっていることを公にしたがらなかった夫妻の意志を継ぎ、ケラーは1人で黙々と軍とのやりとりの後処理をこなしました。カーン先輩からはケラーが怪しく見えてしまっていたのですが、他の人を巻き込みたくなかった彼女の優しさのせいでもありました。
 両親はアデルに興味のある研究を思いっきり続けてほしいと願い、騒動からは遠ざけていました。彼らが火山を求めてテラ中を飛び回っていたこともあり、アデルは両親が亡くなる1年前は全く会えなかったそうです。


3-3. シエスタへの招待

 ケラーはアデルをシエスタに呼びました。
 アデルにやってもらいたいことが2つありました。もうすぐ噴火しそうになっているシエスタ火山のデータ整理が1つ、もう1つはヴォルケーノ・ミュージアムに展示する両親の資料の整理でした。
 シエスタに来たアデルはドリーと出会います。ドリーは分身であるちびめーちゃんを世界中にバラまき、その一部とともにシエスタにきていました。噴火したシエスタ火山でマグマサーフィンを楽しむために来たのでしょうか。
 子供の頃にアデルは母マグナからちびめーちゃんをプレゼントされたらしく、ちびめーちゃんのことは前々から認識していました。しかし親玉であるドリーに会ったのは初めてだったようです。ドリーはアデルのことをずっと見守ってきたと言っていました。
 ドリーやちびめーちゃんの存在は、彼ら側が興味を持っている人間にしか感じ取れません。シエスタの一般人たちには全く見えていませんでした。
 ドリーはマグナのこともよく知っており、彼女は類まれなる知恵の持ち主だとほめていました。ちびめーちゃんをプレゼントしたこともあり、語られていない深い関係性があったのかもしれません。

3-4. ドリーのゲーム

 ドリーはアデルにゲームを仕掛けました。
 シエスタに来ても浮かない様子のアデルを見て、ドリーはクイズを出しました。北風と種と毛皮の3つを探せと。クイズが解ければ探しているものをご褒美にあげようとドリーは提案します。アデルは両親の死の真相を知りたがりました。
 ドリーは「羊主」という別名を持っており、獣主の1体と考えられます。「狼主」に追いかけられていたこともあると言っていました。動物の本能的な部分が残っているのか、単にそういう間柄なのか。
 エンペラーはドリーの分身に大事なアルバムを盗まれてしまい、取り返しにシエスタに来ていました。エンペラーからするとドリーは音楽について語り合える数少ない存在。2人とも音楽について深い理解があるように見えます。
 音楽家がもう1人登場しました。バードです。クルビア出身の歌手で、彼女にはエンペラーも期待を寄せています。ドリーのクイズの1つ目、「北風」は歌詞の一部でした。思い出せなくて困っていた楽曲で、バードが歌ってくれたことで解決しました。
 クイズの2つ目は「種」。ドリーたちにとって「種」とはサイダーのビンのキャップでした。見えているものは人によって違うのだと。ドリーの分身はクルビアでヴォルケーノコーヒーを味わい、それが印象深かったから「種」を求めていた様子でした。ヴォルケーノコーヒーはコスタが発明したコーヒーサイダーです。クルビアで受け入れられて根付いたのだとか。
 クイズの3つ目の「毛皮」は、マグナの防護服でした。ヴォルケーノミュージアムに展示されていたそれは、マグナをケガから守ったもの。アデルはシエスタ火山に向かう際にこれを借り、たまたま正解に気づきました。動物が身を守るために身に着けるものが毛皮なのだという、原義に戻るという問題でした。


3-5. 火山と夢

 ちびめーちゃんたちの正体について。
 クイズを解いたアデルに対して、ドリーはご褒美を渡します。アデルが探しているものを火山警告花だと勘違いしたドリーは、花はシエスタ火山の斜面に咲いているのだと教えてくれました。花を探しにきていたのは両親の方だったので、勘違いしたのかもしれませんね。
 ケラー先生が真実を伝えてくれたおかげで、アデルのもやもやは解けました。ケラーの名前もアデルだったことが明かされ、大切な友達の名前を子供にもつけていたのだというハートフルなオチもついていました。
 ドリーはちびめーちゃんたちの正体について語りました。彼らはドリーが人を真似て作った生物です。消えた命そのものではなく、ドリーがコレクションのために作った生き物。天国から語り掛けてくれているわけでもなければ、この世に未練があってとどまっていたわけでもありません。
 バーバラを模して作った分身がセイロンを探していたり、夢で両親の人格とコミュニケーションしたりしたのも、全部ドリーが作り出しただけの存在。アデルはそれを残酷に思うとドリーに伝えていました。帰らぬ人との再会に、残された人は期待を寄せてしまうものですから。
 しかし、アデルは夢で出会った両親の分身との会話を胸に刻み込んだことで、心の持ち方をポジティブに変化させていました。マグナの分身は傘を差した「穏やかな生き物」、カティアの分身は小さな火山を背負った「厳かな生き物」でした。
 彼らは火山に登る準備をしており、知識と勇気と運を購入していました。アデルに対しては、自分たちと同じように小石を火山に埋めるのだとアドバイスをしていました。
 2人は埋めた小石に愛と思い出を注ぎました。小石は情熱的なマグマとなり、振り返らずに彼らのもとを去っていきました。マグマになってしまったため見分けがもうつかないのだと。愛情をかけて育てたアデルとの死別を語っていたように見受けられました。
 雨が降ってきてしまって、夢の中の冒険は終わりました。厳かな生き物が雨を嫌っていたのも、穏やかな生き物が傘を差していたのも、通り雨計画を生み出してしまった心残りから来るものなのかもしれません。
 アデルは2人に花の冠を作ってあげようとしたのですが、時間切れで叶いませんでした。しかしこの話の続きは純燼エイヤフィヤトラのプロファイルに書かれています。彼女は両親が亡くなったウナ火山に登り、小石を埋めて、花の冠を2つ持ってきていました。シエスタで体験した不思議な出来事から気持ちを整理することができたのでしょうね。

感想

ここからはただの感想です。
「火山と雲と夢色の旅路」はアデルとドリーのやり取りを軸に、親と子の別れを描いた物語でした。夏のイベントらしく陽気ではっちゃけた展開の中で、随所に挿入されるエピソードに胸を打たれる良いお話でした。
 上には書けませんでしたが、拾われた子であるエニスと母ヘイリーの別れも印象的でした。家族の一員になろうと努力するエニスに対して、「何かと引き換えにしないと手に入れられない関係じゃないんだ」と語り掛けるヘイリーの優しさ。気持ちを汲み取ってシエスタに別れを告げ、冒険に踏み出すエニスの姿にも、親子の別れがにじみます。
 スワイヤーとバイソンの話も、見方によってはお別れの話でした。独立は決別であり離別。前途有望な若者たちは親の庇護下を離れ、新しい世界を切り開いていくのですね。
 死したものを分身の形で作り上げるドリーの能力を見て、アデルが「残酷に思う」と感想を吐露したのがこのお話で最も印象的な部分でした。イベント全体の雰囲気から受ける、優しいドリーミーなお話ではないのですよね。
 人格や魂そのものが蘇っているわけではないし、ドリー自身もそれを慈善としてやっているつもりでもない。ただ自分が楽しむために死者の人格を弄ぶ、超越者の遊びなのです。振り回された周囲の人間が、今回はたまたまポジティブに受け取ることができたというだけ。
 エンペラーはかなり人情味がありますが、「シラクザーノ」のときのザーロ然り、獣主たちは基本的には人間の理の外を生きる存在です。親と子の話なんて知ったこっちゃないでしょう。偶然が重なって死者の想いを汲むことが出来た、奇跡の話だったのかもしれないですね。





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