3度目のサザンドラ

元々ポケモンブログでしたがいまはゲーム全般について書いています

【アークナイツ】ストーリー考察/感想 - この炎が照らす先 編

 2023年7月13日開始のイベント「この炎が照らす先」のストーリーを整理していきます。

1. 過去振り返り

1-1. 200年前:最後のゲル王

 「この炎が照らす先」の物語はターラー人を巡るお話でした。
 ターラーというのはヴィクトリアに併合された別民族の国家の名前です。住民たちはターラー人と呼ばれます。現実におけるアイルランド問題を下敷きにしていると思われます。
 ヴィクトリアはアスラン族が、ターラーはドラコ族が統べる国でした。ターラーの国の成り立ちの伝承も少し語られていましたが、曖昧なところも多かったので、すでに失われてしまっている部分が多いものと思われます。
 ターラー王国が滅亡したのは約200年前。ヴィクトリアとターラーは激しい戦争を続けていたのですが、最後のゲル王はこれに心を痛め、アスラン王に和平交渉を持ちかけました。ゲル王は戦士の武器を炉で溶かし、平和への決意を示したと語り継がれています。
 アスラン王はゲル王の申し出を受け入れ、ヴィクトリアの王位をアスランとドラコで分かち合うことに承諾しました。しかし、ゲル王は臣下に暗殺されてしまい、分割統治の話は有耶無耶になったものと思われます。この暗殺にはアスラン王の臣下も関わっていたのではという疑惑も出ていました。
 ターラー王国の滅亡の際、ゲル王の子孫は王城から逃げ出し、それ以降は表舞台から姿を消しました。統治者不在となったターラーの土地は貴族によって分割され、ヴィクトリアに組み込まれました。ターラー人たちは不平等な扱いを受け、差別的な条例が制定されている地区もあります。


1-2. 8年前:ワーウィック伯爵

 ターラー人はいまも不当な扱いを受けていて、復讐の機会をうかがっていました。
 8年前のターラー人たちの様子が描かれていました。ワーウィック伯爵はゲル王の血を引くエブラナとラフシニーの姉妹の教育係を務めていました。伯爵はゲル王の末裔を王として再び担ぎ上げ、操り人形にしてターラーの国を作るという野望を持っていました。エブラナ姉妹の両親はアスランの刺客に殺されてしまったそうです。
 ターラーの歴史はヴィクトリアによって破壊されてしまっている部分が多く、現代を生きるターラー人たちは伝承を紐解いていくしかありません。メインストーリーにも出てきたシェイマス・ウィリアムズはこのころからターラーの歴史を取材して作品を作っていました。それがワーウィック伯爵に認められていたのです。
 ワーウィック伯爵は腹黒い人物で、陰謀や策略のやり方をエブラナたちに伝授していました。ターラーの歴史にはそういう権謀術数の話が多く、お家芸のようになっている節はあります。
 伯爵自身も使用人たちに裏切られて殺されてしまうという最期を辿りました。使用人たちを結託させたのはエブラナでした。自分が教えたことを実践で返されてしまったのですが、死に際の伯爵は満足気だったと言われています。エブラナが大きな野心を持ってターラーを再興してくれるのではないかと期待をしたのでしょう。
 一方、妹のラフシニーにはそいうった野望の類は持っていません。新作の小説を読めればそれが幸せだという子供でした。エブラナはそんなラフシニーに対して、自分の欲望が分からないならまずは私になれと言葉をかけます。これがラフシニーの姉の「影」としての人生の始まりでした。

1-3. ?年前:諜報員アルモニ

 アルモニが何者なのかという話題について、彼女の回想秘録の内容を簡単に整理します。
 アルモニはホルンと同学年で、王立前衛学校に入る前から知り合いでした。王立前衛学校の入学試験を突破すべく、ホーリーという教師に指導してもらっていました。2人はホーリーのことを尊敬していました。
 しかし入学試験の直前、ホーリーは軍事物資の密売の容疑で処刑されてしまいました。アルモニは知らないうちに手紙の運び屋をさせられており、彼女にもヴィクトリア軍の調査が入るのですが、本当に何も知らなかった彼女は見逃してもらえました。
 ホーリーは表向きは栄誉ある殉職という形で死亡が公表されており、アルモニは真実を誰にも話さないように釘を刺されました。彼女が王立前衛学校に入るためにホーリーの指導を受けていたという話を知った軍は、黙っておくことと引き換えに裏口入学を斡旋してくれました。
 アルモニはこの出来事を経て変わってしまいました。この世界には理不尽なことや、自分の力ではどうにもならないことが溢れているのだと。
 アルモニは王立前衛学校に入学後、先生に声をかけられ、諜報員にならないかと勧誘を受けました。ホーリーの件で裏の世界を知っていて、性格や能力もスパイに向いていると判断されたようです。彼女はこれを承諾しました。
 アルモニは諜報員としての活動のため、パーティーに足繫く通うようになります。昔のアルモニを知っているホルンは少し戸惑っていました。ホルンはホーリーの件や、アルモニが諜報員になったことを知らないのです。彼女たちの関係にも溝ができてしまいました。
 結局、アルモニは王立前衛学校を卒業することなく、在学中に姿を消したと言われていました。その後、ダブリンの参謀的ポジションで姿を現すまでに何が起きたのかは謎です。ダブリンを調査するために二重スパイとして潜入しているのか、ダブリン側に寝返っているのか。


1-4. 8か月前:ヒロック郡事件

 メインストーリー9章のヒロック郡事件からは8か月が経過していると言われていました。
 「この炎が照らす先」はメインストーリー9章から枝分かれし、10章と11章の裏で起きた事件を描いた物語です。10章のネタバレも含まれているので注意が必要です。
 9章で起きた事件を簡単に振り返ります、ヒロック郡でのダブリンの計画にはエブラナの意志はあまり反映されておらず、大部分は「雄弁家」たちの暴走だったと語られていました。もし「雄弁家」たちが生き残っていたとしても、エブラナはいずれ彼らを始末することになっただろうとも。
 想定外だったことがあったかもしれませんが、エブラナは計画通りヒロック郡でターラー人としてヴィクトリアに宣戦布告を行いました。虐げられてきたターラーの生き残りがついにヴィクトリアに反抗の姿勢を示したのです。広域の放送に乗せられたこの宣言によって、ダブリンは多くのターラー人からの支持を集めました。
 ヒロック郡の事件を現地で見てきたバグパイプはダブリンの行動に疑念を持っています。ヒロック郡では罪なき人がたくさん殺されました。ターラー人だろうとヴィクトリア人だろうと、国民の命は守られるべきだというシンプルな信条のもと、バグパイプはダブリンの情報を追っています。
 当時のヒロック郡にはエブラナもラフシニーも2人とも来ていて、それぞれがダブリンのリーダーっぽい動きをしていました。とある報告書にはダブリンのリーダーは1人ではなかったという記載があり、真相を追う者たちへの重要なヒントになっていきます。



2. スカハンナ原野の戦い

2-1. 地理関係と公爵たち

 イベントの時系列に入ります。まずは地理を整理します。
 「この炎が照らす先」はトレント郡のレッドリッジという都市から始まり、スカハンナ原野を抜けてオークグローブ郡へと至る物語でした。
 トレント郡を治めるトレント侯爵はターラー人に差別的な姿勢をとっており、政治にも反映されています。ターラー人たちはダブリンとの繋がりを疑われ、スカハンナ原野では夜間の灯火を禁じられています。
 トレント郡と隣接したところにオークグローブ郡があります。スカハンナ原野を越えた先にあるようです。
 オークグローブ郡を治めるウェリントン公爵はターラー人ながらこの地位まで登り詰めたスゴい人です。そのためこの地域はターラー人に寛容です。
 トレント侯爵はカスター公爵と友好関係を築いているということでした。ヴィクトリアには現在、10人前後の公爵がいると見られ、誰と仲良くするかは貴族たちにとって最重要課題と言えるでしょう。
 ではウェリントン公爵とカスター公爵はどのような関係性なのか。それがこのイベントで注目されるところです。

2-2. ラフシニーとターラー人たち

 ラフシニーはとあるターラー人グループと出会いました。
 ヴェンたちはトレント郡の巡回隊と諍いを起こしてしまい追われていました。薬が必要になった彼らはレッドリッジの薬屋に忍び込むのですがバレてしまいます。たまたまその場に居合わせたラフシニーは倉庫を燃やして彼らを助け、行動を共にすることになりました。
 巡回隊はトレント郡周辺に現れるようになったダブリンの部隊を追跡しています。ダブリンはトレント郡に用事があるわけではなく、隣のオークグローブ郡に行きたかっただけだとは思うのですが、トレントのターラー人排斥と相性が悪かったみたいです。
 セルモンには個人的にダブリン部隊を探す理由がありました。ダブリンに加わると言ったまま帰ってこなくなった兄を探すためです。ラフシニーもダブリンを追いかけていたため、彼らは同行することになりました。


2-3. フィッシャーの任務

 フィッシャーの任務内容について。
 彼はヴィクトリア軍の諜報員で、広い意味ではアルモニの同僚です。カスター公爵から直接命令を受ける立場にあり、アルモニがいまもヴィクトリア側なのかどうかを調査しています。ダブリンに寝返っているのかどうかは誰にも分からないのですね。
 カスター公爵は本人自らトレント群に来ており、何か重要な案件が動いているようだとフィッシャーも察します。フィッシャーは前の任務で感染してしまってそれを隠していたのですが、カスター公爵にはバレてしまっていました。
 フィッシャーは諜報員なので戦力を保持していません。そこで今回の調査ではヴィクトリア軍の特別行動隊の隊長が手伝ってくれていました。気前が良く理解のある隊長さんでした。
 「アルモニはどっち側なのか?」というお題に対して、フィッシャーは調査に利用できそうな事件を見つけます。それがラフシニーが起こしたレッドリッジの火事です。消そうとしてもなかなか消えない特別な炎は、ダブリンとの関連を示します。彼はアルモニに対して罠を仕掛けることにしました。


2-4. アルモニの任務

 アルモニはエブラナから任務を受けていました。ラフシニーの行方を把握することです。
 トレント群には「将校」と呼ばれる人物が来ていました。この人は表向きはウェリントン公爵の私兵である赤鉄親衛隊の隊長、裏ではダブリンの将校を務めています。ウェリントン公爵とエブラナの共闘が明らかになったあとでは、2つの身分の同居というのはあまり問題にはなりませんが、いままでは神経を使ってきたことでしょう。
 ウェリントン公爵には怪しい燃料取引の噂が流れていて、近々なにか行動を起こすのかもしれないという憶測が立っていました。
 「将校」はアルモニに忠告しに来ていました。アルモニは情にほだされてマンドラゴラをヒロック郡では処分しませんでした。ラフシニーに関してはそのようなことなく冷徹に任務を果たせと言ってきたのです。アルモニはダブリンの中でもヴィクトリア側に寝返るのではと疑われていたのかもしれません。二重スパイの辛いところです。
 任務を受けていながら、アルモニはラフシニーの行方を把握できていませんでした。しかしとある子爵のパーティーに出席したときに、消し止められない特別な炎の噂を聞き、ラフシニーが近くにいることを悟ります。
 ラフシニーはヒロック郡で大けがを負ってOutcastに助けられ、療養のためロドス号にいたはずでした。ロドス号そのものが隠密にロンディニウムに接近したこともあり、アルモニの気づかぬまにラフシニーはヴィクトリアに戻ってきたのです。なぜあんなことがあったのにエブラナの近くに戻ってきたのか。アルモニには疑問が尽きなかったことでしょう。


2-5. バグパイプとチェンの調査

 バグパイプとチェンはメインストーリーの続きで、ヴィクトリア内で調査をしていました。
 ヒロック郡事件のあと、バグパイプはチェンを訪ねようとして龍門まで移動し、そこからロドスにきました。事件の真相を暴きヴィクトリアの平和を守りたいバグパイプと、タルラの行方を追いたいチェンはヴィクトリアで調査をしています。
 2人はヒューズという人物を訪れました。王立前衛学校の同級生で、いまは商業連合会の副会長をしています。バグパイプたちが会いに行ったとき、ダブリンの情報を提供してくれました。一方で、手紙でやりとりする際には他人行儀な口ぶりになり、誰かに監視されているような雰囲気を2人は感じていました。
 バグパイプたちと入れ替わりでアルモニもヒューズのところにやってきました。特別に用事があったわけではなく、ヒューズに忠告しに来たと言っていました。バグパイプたちに情報を提供したことはバレており、ヒューズも含めて目をつけられてしまうぞと。脅しに見せかけて、ヒューズに対する優しさからの忠告にも見えました。
 ヒューズから情報をもらったあと、2人はダブリンを目撃したというキャラバンを見つけて、その場所まで案内してもらいました。そのキャラバンをセルモンたちが襲撃。ラフシニーとバグパイプたちが合流することになりました。
 近くでダブリンの部隊を発見するのですが、兵士たちはすでに亡くなっており、エブラナのアーツによって動かされていました。死んでもオークグローブ郡を目指すように命令されていたのでしょう。セルモンはここで兄の姿を発見するのですが、祈り届かず亡くなってしまっていました。
 みんながダブリンの行方を追いかけているものだから、一か所に合流するという流れになりました。さらに他の勢力も引き寄せていきます。

2-6. ラフシニーの争奪戦

 フィッシャーとアルモニの思惑がラフシニーを巡ってぶつかり合いました。
 フィッシャーにとっては、ラフシニーは直接の任務対象ではありません。あくまでアルモニがどちら側なのかを見極めるのが任務です。判断材料にラフシニーを利用しました。
 ダブリンには2人の「リーダー」がいます。ラフシニーを捕まえれば、「リーダー」の居場所が分裂するので、エブラナの影響力も弱まるのではないかと考えました。フィッシャーがラフシニーを捕まえてカスター公爵に献上しようとしたとき、ダブリンはそれを阻止に動くでしょう。アルモニがダブリンと同じ動きをすればヴィクトリアを裏切っていることになりますし、逆にそこでダブリンの意にそわないことをすればヴィクトリア側で行動していることがわかります。
 アルモニはフィッシャーが仕掛けた罠の仕組みを理解しつつ、ダブリンの一員としてラフシニーを救う道を選びました。これでもうアルモニはヴィクトリアの諜報員には戻れません。
 一方で、アルモニと一緒にラフシニーのところに来た「将校」は別の考えを持っていました。ダブリンは準備を整えており、リーダーはエブラナ1人で十分なので、不確定要素であるラフシニーは始末してしまっていいと考えていたのです。アルモニの行動はこの期に及んでも「将校」からは怪しく見えるのです。
 「将校」の表向きの立場はウェリントン公爵の部下なので、ラフシニーの身柄を巡ってカスター公爵とウェリントン公爵が衝突する可能性が出てきました。絶大な力を持っている公爵同士のぶつかり合いは誰もが避けたい事態です。
 当のラフシニーはダブリンには戻りたくはありません。エブラナの影として、自分の意にそぐわないことをしなくてはいけいない生活は辛いのです。エブラナもラフシニーを今すぐに捕まえたいという意志はないらしく、逃避行を黙認していました。


2-7. 決着

 チェンとバグパイプの支援もあり、ラフシニーは逃げ切ることに成功しました。
 ラフシニーとヴェンたちターラー人は、オークグローブ郡のウェリントン公爵領の方に逃げ切ることに成功しました。ターラー人に寛容なこの地区で、不当にターラー人に手を出すことはできません。
 フィッシャーはオークグローブ郡の駐屯軍に事前に連絡していました。ここで公爵同士の正面衝突のような大事件が起こる可能性があるので、事態を鎮静化するために兵士を詰めさせておけという内容です。フィッシャーはラフシニーの身柄に執着はしていないので、彼女が無事に逃げ切ることができるならそれで一件落着と考えていたようです。駐屯軍の大軍をみて、ダブリンがビビッてくれればいいなと。
 フィッシャーの思惑通り、ダブリンはラフシニーたちをこれ以上追撃できなくなりました。アルモニはラフシニーを逃がすことができて良かったと思っているような様子も見せていました。
 「将校」も負けを認めていました。ウェリントン公爵の親衛隊が、領内でターラー人に手荒なマネを働くことはできませんから。
 ターラー人たちの安全が確認され、チェンとバグパイプは別の場所へ向かうことにしました。バグパイプはラフシニーが戦闘する様子を見て、彼女がダブリンのリーダーであることを認識し、本人にも確認しました。ダブリンを捕まえて懲らしめればこれ以上の悲劇は避けられると思って行動してきたのですが、事態が複雑であることを知り、バグパイプは落ち込んでいました。ダブリンにも理想があることをラフシニーから聞いたのです。
 スカハンナ原野での戦いの際、ヴェンたちはラフシニーのことを遠くから必死に呼びました。ヴェンたちにとってラフシニーは希望の火であり、ラフシニーはエブラナの影としてではなく、自分がみんなに必要とされている感覚を得ます。


3. 戦いの後

3-1. ガストレル発進

 ウェリントン公爵とエブラナがついに力を合わせるときがやってきました。
 2人はウェリントン公爵高速戦艦ガストレルに乗船していました。水に浮いている船ではなく、移動都市をベースにした地上を移動する乗り物です。兵器を満載したロドスみたいなものでしょうか。ガストレルというのは伝承に残るゲル王の側近の名前です。
 高速戦艦は7年間ずっとヴィクトリアを巡航していたらしいのですが、この日ついにオークグローブ郡の移動都市に接岸することになりました。ターラー人の勢力と合流するためです。
 オークグローブ郡はウェリントン公爵の領土であると同時に、エブラナの故郷でもあります。両親が暗殺され、ワーウィック伯爵たちに育てられた都市です。
 いまオークグローブ郡は、ゲル城の遺跡が見えるところに停泊しています。ターラー人の中にはロマンチストが一定の割合でいるのですが、そういう人にゲル城はすでに崩れ去った過去のものだという事実を突きつけたいのだとエブラナが言っていました。
 ゲル城には200年前の最後のゲル王が使った炉が残されています。和平交渉の際に、戦士の武器を溶かさせた炉ですね。エブラナは城跡を訪れた際に、この炉に自分のアーツの炎を灯して帰りました。
 ラフシニーはエブラナのアーツに気づき、ゲル城跡を訪れました。エブラナの炎を見ながら過去の自分と対話し、自分の進むべき道に気づいていきます。エブラナの死者を操る炎のアーツを、ラフシニーのアーツはかき消すことができます。自分の炎でターラー人たちの道を切り拓き、最後にはエブラナを止める。自分にはそれができるのではないかと考え始めるのです。
 高速戦艦ガストレルはヴィクトリアの旗を降ろし、ウェリントン公爵とダブリンの勢力を載せてロンディニウムへ向かうことになります。平和な時代だったら政府に対する公爵の反乱ということになるのですが、ロンディニウムではいまサルカズが反乱を起こしているので、それどころではない事態と言えます。ヴィクトリア情勢は混迷を深めてきました。

3-2. アルモニの今後

 アルモニはなぜロドスに来ることになったのか。
 エブラナはラフシニーを急いでどうこうしたいという意志はなさそうでした。それ故に、アルモニの任務も急を要するものではありません。二重スパイとして双方に怪しまれてしまった彼女は、自分の存在を忘れさせる時間を稼ぐため、ロドスへ向かうことにしました。
 表向きはウェリントン公爵の使者としてロドスを訪れています。ウェリントン公爵がダブリンと結託していることがわかったあとなので、アルモニはダブリンの人間としてロドスに来ていることになります。
 「将校」は相変わらずラフシニーを処刑したがっており、行方を捜索しているとのことでした。しかしエブラナはラフシニーの死を望んでいるわけではありません。リーダーの命令に背く行為ですが、執着する理由があるのでしょうか。
 アルモニは「将校」を陰から妨害することでラフシニーを助けているらしく、ラフシニーを守ろうと動いているように見えます。口では「将校」がエブラナから怒られるのを防いであげていると言っていましたが。アルモニがロドスに行く理由の1つには、ラフシニーの近くにいようとしているというのもあるのかもしれません。


3-3. フィッシャーの今後

 フィッシャーはなぜロドスに来ることになったのか。
 彼の任務はいったん終了しました。アルモニはおそらくダブリン側の人間なのだろうという結論が出たと思います。任務の過程で取り逃したラフシニーに関しては、他の人に捕えさせるとカスター公爵は言っていました。
 フィッシャーは新しくウェリントン公爵の監視という任務を授かりました。ガストレルを監視していたのですが、すごい速さで移動してきてビックリしていました。
 ウェリントン公爵がガストレルをロンディニウムに向けて発進させたことは、ヴィクトリア中にすぐに伝わったと思います。ウェリントン公爵とターラー人側につくか、ヴィクトリア側につくか、貴族たちは立場を選ばなくてはいけません。トレント侯爵は今まで通りターラー人を排斥する路線を継続し、ヴィクトリア側の立場であることを示しました。
 フィッシャーが驚いたのは、カスター公爵が自分の領地をガストレルが横切ることを黙認したことです。戦力差があったのかもしれませんが、反ウェリントン公爵の立場をとるならスルーはないはず。ウェリントン公爵はカスター公爵の最大の敵だとフィッシャーは思い込んでいたのですが、実は違ったのかもしれないという疑念が湧きあがりました。
 フィッシャーが直接カスター公爵と会話した際、彼女はターラー人の文化を素晴らしいと思っていると言っていました。単なるお世辞か、ポジショントークか、それとも本音だったのか。
 ダブリンは単なるマイノリティ勢力ではなく、覇権を狙えるようなポジションへと駒を進めるのかもしれません。


3-4. 2人の「リーダー」

 エブラナとラフシニーが同時に演説するシーンがイベントのクライマックスでした。
 2人の主張はそこまでかけ離れてはいません。ターラー人はヴィクトリア押し付けられた不幸から脱却すべきだと2人とも言っています。ヴィクトリアは「ターラー」という名前すら消し去ることで、彼らの不幸を認識できないようにしていました。境遇を自覚し、生活を取り戻すべきだと2人は主張します。
 2人が立場を異にしているのは力の使い方です。エブラナはアーツで死者を呼び起こし、ヴィクトリアへの武力による対峙を選びました。一方のラフシニーはどのような方法で現状を変えていくでしょうか。
 ターラー人の物語は、今後メインストーリーに合流していくのではないかと思います。今後の更新が楽しみですね。


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【アズレン】イベントストーリー考察:覆天せし万象の塵 編【アズールレーン】

 2023年5月25日開始のイベント「覆天せし万象の塵」のストーリーを整理していきます。

1. 背景

1-1. Tower XVIとDevil XVの確執

 「覆天せし万象の塵」で明らかになったことを時系列順に並べると、「積重なる事象の幻界」の話が冒頭に来ます。
 「積重なる事象の幻界」をざっくり振り返ると、アンカレッジのリュウコツにリアリティレンズを繋いだらDevil XVに襲われて酷い目に遭ったという話でした。
 まず、Tower XVIの姿が新しい情報でした。いままで出てきていた怪獣の口のようなものはTower XVIの本体ではなく兵装だったとのこと。名前にTowerとつくので早とちりしてしまっていました。アビータはⅡ型兵装の技術に着想を得て、兵装を持っているというのが以前から語られていたのが伏線になっていましたね。
 そして、リアリティレンズはTower XVIの管轄下にあるというのも新しい情報でした。「私のレンズ」に勝手に入り込んで暴れたDevil XVに怒っていたのです。
 Devil XVは「影」と呼ばれる謎の力を使役します。黒いモヤがかかったように見えるその敵は、量産型の形をしているのでわかりにくいのですが、KAN-SENたちからは近づいてもよく見えないらしいです。リアリティレンズの中でもこの「影」が襲ってきて、指揮官たちはピンチに陥りました。
 「影」の襲来を感知して、兵装であるTHE TOWERが浄化プログラムを発動させて仮想世界を丸ごと削除してしまったのが「積重なる事象の幻界」のクライマックスでした。つまり、Tower XVIがDevil XVを攻撃したともとれるわけです。いままでそれなりに連携をして動いているように見えていたアビータたちも、こういう確執を持っているのだなと知ることができました。
 Tower XVIは自ら指揮官をリアリティレンズに招き入れたというような口ぶりでした。指揮官はここでⅡ型兵装のヒントを得ています。Tower XVIはこれを意図していたのでしょうか。


1-2. 余燼の作戦行動

 プレイヤーの視点の裏で余燼たちも作戦を行っており、これがビスマルクたちの戦いに繋がっていきます。
 余燼のメンバーたちはHermit IXに攻撃を仕掛けていました。撃破するのが目的ではなく、スペアボディを鹵獲してコントロールを奪ってやろうという大胆な作戦を実行していました。
 スペアボディを奪うための鍵は2つ。まずは主機とそのスペアボディの接続を切断する必要があります。この技術はエンタープライズMETA(コードG)がアンジュ博士の訓練を見学しているときに知っていたもの。
 鍵の2つ目はスペアボディの起動コードです。本来アビータたちはオブザーバー・零の命令しか聞きません。しかしアンジュ博士が持っていた緊急識別コードを使えばコントロールが効くようになるとのこと。これもアンジュ博士の一番近くにいたエンタープライズMETAだからこそ知り得た情報です。
 Hermit IXはStrength VIIIとTemperance XIVと一緒に行動をしていたのですが、余燼たちはHermit IXだけを隔離して空間を封鎖することで、分離することに成功していました。Strength VIIIとTemperance XIVは撤退していきました。
 この作戦にはフリードリヒも同行していました。「吟ずる瑠璃の楽章」でコンパイラーの主機を撃破した際にビスマルクが華々しく復活を遂げ、鉄血の指導者の座に返り咲いていました。フリードリヒは次なる野望のために余燼と一緒にいます。アビータを戦果として持って帰ってきてくれるかと思われました。
 しかしHermit IXの鹵獲は失敗に終わったと思われるような幕切れになっていました。THE TOWERがいつものようにトランスポートプロトコルを発動させたのです。おそらく余燼たちは別の空間に転送されてしまったのではないかと思います。Tower XVIがHermit IXを助けた形になりました。
 また、Devil XVもこの余燼たちの作戦に気づきました。ここでDevil XVはHermit IXに目を付けたのではないかと思います。余燼たちが攻撃したおかげで弱っているHermit IXの主機を乗っ取るチャンスなのではないかと。


2. ビスマルクたちの戦い

2-1. ウルリッヒへの催眠攻撃

 「覆天せし万象の塵」での戦いはDevil XVによって仕組まれたものでした。
 Hermit IXは相手に幻覚を見せる能力を持っています。セイレーン作戦では赤城たちにこの攻撃を使っていました。
 Devil XVはすでにHermit IXの一部をコントロールすることに成功しており、幻覚攻撃の狙いをウルリッヒに定めます。ウルリッヒを操り、ミッドガルドの塔を起動させて、Hermit IXの主機がある鏡面海域に誘導したのです。KAN-SENたちにHermit IXを攻撃させることで、完璧にコントロールを奪ってしまおうというDevil XVの作戦です。
 Hermit IXの催眠攻撃はウルリッヒだけを狙ったものだったのですが、攻撃の影響で他の鉄血KAN-SENも眠ってしまいました。鉄血陣営以外に効かなかった理由は謎ですが、起きていたグナイゼナウMETAと瑞鶴はウルリッヒを追いかけることができました。
 瑞鶴は重桜でワタツミの謎に迫ろうとしていたところ、武蔵から突然鉄血への視察を命じられてここに来ていました。さすがに武蔵がここまで予見していたとは思えず、偶然だったのかなと思われます。
 瑞鶴たちの後を追う形で、ビスマルクたちが救援に入るというのがイベント開始の流れでした。

2-2. Zwei型艤装とは何なのか

 ビスマルクZwei型艤装という新しい力を披露しました。
 このゲームのチュートリアルビスマルクは黒いメンタルキューブの力に溺れてフッドを撃沈します。再現が進行すれば鉄血は滅ぼされてしまう運命にあるので、オブザーバーに渡されたこの力に手を出してしまったのです。
 その後長らくの間、ビスマルクは黒いメンタルキューブの浸食に苦しんできました。しかし最近になってこれに抗う術を思いつき、ついに復活を遂げたのです。その方法を思いつくヒントは2つありました。
 1つ目は指揮官がリアリティレンズでの戦いを経て開発したⅡ型兵装の力です。メンタルキューブから生まれたKAN-SENたちに対して、外からさらにメンタルキューブを使用してリュウコツを補強することで強化する技術です。
 2つ目はクイーン・エリザベスからもたらされました。「誠閃の剣 搖光の城」での戦いの末、ロイヤル陣営は余燼を抜けたレパルスMETAとレナウンMETAとコミュニケーションを取れるようになりました。彼女たちからMETA化とは何かを教えてもらったので、その情報をビスマルクにも提供したのです。
 この2つを組み合わせて、科学者のビスマルクは自らのリュウコツ浸食に抗う方法を見つけました。メンタルキューブで具現化した自立型の艤装を生み出し、それにフネの概念を与えることで浸食の対象をそちらに移すという方法です。ゲリュオンは艤装でありながら疑似的なKAN-SENのような存在で、身代わりの術のように使われているということになります。
 鉄血内でグナイゼナウMETAが実験に付き合ってくれて、この方法が完成したとのこと。Zweiの姿はこのタイミングのビスマルクにだからこそできた方法という感じがします。ユニオンが手に入れたⅡ型兵装の方が転用が楽そうに見えます。
 また鏡面海域の攻略中にU-556がMETA化してしまうというアクシデントがありました。「黒鉄の楽章 誓いの海」で黒いメンタルキューブの力を使って沈みかけたビスマルクを、U-556は懸命に引っ張り上げてました。そのときに、浸食を受けてしまっていたようです。彼女はZwei型艤装ではなく、ヴェスタルMETAのおかげでもとに戻ることができました。




2-3. 砂時計の鏡面海域

 Hermit IXの主機がある鏡面海域の攻略について。
 この鏡面海域は砂時計のような構造をしています。扉をくぐるたびに時間が進み、砂が上から下へと落ちていきます。
 Devil XVは「影」をこの鏡面海域に忍ばせて、徐々に制御を奪おうとしていました。「影」はリュウコツの浸食と同じ力を持ち、砂のように流れてKAN-SENたちを脅かします。これを使ってKAN-SENたちをHermit IXの主機まで誘導しようとしていました。
 砂時計がひっくり返ったり、時間が進んで砂が流れたりした結果、逆さまの街がビスマルクたちの目の前に現れるタイミングが発見されました。その街の一番高い塔には、Hermit IXの主機が見えます。ただ、街に辿り着く方法がわかりません。
 鍵はモニタールームにありました。幻覚を見せられてしまうというトラップが仕掛けられていたのですが、この幻覚は対象者の記憶を反映していません。幻覚の中でDevil XVの艦載機を見たビスマルクは、これがただの記録を見せられているのだということに気づきます。この記録からHermit IXの主機がある場所までたどり着けるぞと。



2-4. Devil XV攻略の決め手

 ビスマルクたちはHermit IXとDevil XVと戦うことになりました。
 この海域にあったHermitのスペアボディはDevil XVに浸食され、ほぼDevil XVの支配下にあるような状態でした。そのため普段の青白い光ではなく、赤い光を放っていました。
 Devil XVはHermitのスペアボディの支援、Hermitの主機の掌握、KAN-SENたちへの攻撃、そして鏡面海域の制御と、様々なミッションを同時並行でこなしていました。支援が得意なアビータならではの戦い方だったのですが、さすがのDevil XVでもリソースが苦しいだろうというのが攻略の鍵になりました。
 ビスマルクがHermitのスペアボディにとどめを刺すのと同時に、アリゾナMETAが外の世界からこの鏡面海域をハッキングすることで、決着となりました。Devil XVが鏡面海域の制御にリソースを回し切れなくなったのですね。
 アリゾナMETAはハッキングを行ったあと、THE TOWERをこの鏡面海域に送り込み、Purification programを発動させました。「影」の浄化を行ったのだと思われます。戦闘後に黒いモヤが消えたとビスマルクたちも言っていました。
 Devil XVはHermitの制御と、鏡面海域の制御を失い、退散していきました。この戦いは彼女の負けでした。


2-5. Tower XVIとMETA KAN-SENたち

 怪しげに示されたのがTower XVIとMETA KAN-SENたちの繋がりです。
 アリゾナMETAがTHE TOWERの力を使ったというのが第一のポイント。兵装だけを借りているのか、Tower XVI本体と緊密に連携がとれるのか。
 また、Tower XVIからヴェスタルMETAに宛てて通信があったという描写もありました。ヴェスタルMETAに指示を出しているような雰囲気でした。KAN-SENとアビータはエックスを倒すという同じミッションのために生み出されているので、方向性が違っているわけではありません。しかし、まさか今までボスとして登場していたアビータと手を組むということになるのでしょうか。
 そもそもヴェスタルMETAがこの鏡面海域にいたのは、ヘレナMETAの指示でした。おそらく余燼たちの行動でHermitの主機に影響が出たため、様子を見に来たものと思われます。ヴェスタルは工作艦なので自分では戦えません。Devil XVが来るなら彼女を行かせたのはミスだったとヘレナMETAは悔いていました。
 戦いの後、アリゾナMETAがヴェスタルMETAに資料を送りました。欲しかったものは手に入れたとヴェスタルMETAは言っていたため、彼女個人も何か狙いがあったような雰囲気でした。
 ストーリーの最後、ヴェスタルMETAはビスマルクに、そちらの世界のミッドガルドの塔を破壊してくれとお願いしていました。鉄血が技術の粋を結集させて完成させたミッドガルドの塔ですが、Hermit IX、Devil XV、Tower XVには座標がバレてしまったものと思われます。アビータが自由に飛んでくるようになるのはさすがに危険なので、ビスマルクウルリッヒは泣く泣くミッドガルドの塔を破壊することにしました。
 せっかく異世界との扉を手に入れた鉄血ですが、ここで1つ後退をしてしまったことになります。ユニオンのリアリティレンズと、ロイヤルのキャメロットは健在。この差が今後響いてくることになるのかもしれませんし、キャメロットが早速きな臭い感じになっていたので、他の扉も閉じられてゆくのかもしれません。
 コンパイラーの撃破後、下級ユニットたちを1体ずつ攻略していく流れになるかと思いきや、アビータの仲間割れという新たな局面を迎えることになりました。今後の展開が読めなくてワクワクしますね。



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【アークナイツ】ストーリー考察/感想 - シラクザーノ 編

 2023年5月23日開始のイベント「シラクザーノ」のストーリーを整理していきます。

1. 背景

1-1. 狼主のゲーム

 シラクーザの物語の根底には狼主という存在がいました。
 狼主は人間ではありません。この大地の他の生物とは異なる存在で、不死であり不滅の存在。エンペラーは彼らの同胞で、まとめて獣主と呼ばれるらしいです。
 狼主の中で最も強い個体はリーダーになります。昔は自分たちが直接戦っていたようなのですが、悠久の時を生きる彼らは直接戦ってリーダーを決めることに飽きてしまいました。そこで別のゲームで優劣を決めることにしました。
 狼主たちは1人ずつ人間を選び、その人間同士を戦わせています。選ばれた人間は「牙」と呼ばれます。育成ゲームみたいで面白いのでしょうね。しかし選ばれた側の人間からするとたまったものではありません。自らの人生を生きることができず、操り人形として一生を終えるわけですから。
 「シラクザーノ」の物語はベッローネというマフィアのボスであるベルナルドが引き起こした事件を巡るお話でした。ベルナルドはザーロという名の狼主の「牙」です。狼主たちは荒野にいて人間社会に関わろうとしないのですが、ザーロだけは人間社会に興味を示して、深くまで入り込んでいました。
 ベルナルドはザーロに従っているフリをしていました。彼は強い意志をもって操り人形として生きる人生を拒否し、ザーロを利用することで自分の野望を叶えようとしていました。身分を隠して靴屋で働いていたときに芽生えた「シラクーザからファミリーを消し去る」という野望のために。ベルナルドが己の人生のすべてを賭けて練り上げた計画が発動する瞬間に、我々は立ち会うことになります。


1-2. ミズ・シチリアの「銃と秩序」

 シラクーザの体制を作ったミズ・シチリアという人物について。
 約60年前。シラクーザはマフィア同士の争いが絶えず、人々は苦しんでいました。ミズ・シチリアはこの国に平和をもたらすヒントを求めて、ラテラーノへと向かいました。ガイドをしてくれたアグニルと一緒に、シラクーザを変える方法を検討します。
 アグニルという人は当時のラテラーノの中では非常に有望視されていた人でした。現在の教皇と並ぶぐらいの実力を持っていたのだと言われていました。法が人為的に作れると証明したいという野望を持っており、ミズ・シチリアと共鳴します。ラテラーノの法は「アレ」から与えられたものなので、人間の手で抗えるのか挑戦したかったのかもしれません。
 ミズ・シチリアが描いていた理想は、アグニルが持っていた考えと一致する部分がありました。アグニルはシラクーザが実験台にできると考えたのか、ミズ・シチリアに同行することにしました。無法地帯だったシラクーザを法で治めるという挑戦の始まりです。
 2人が長い検討と論争の果てにシラクーザに持ち帰ったものは「銃と秩序」と呼ばれ、これが現在のシラクーザを形作りました。「銃」はラテラーノの守護銃のことではなくミズ・シチリアの持つ暴力そのもののこと、「秩序」はラテラーノの法ではなくシラクーザにおけるマフィア間のルールを指します。バラバラだったファミリーたちに統一されたルールを持ち込み、それをミズ・シチリアの圧倒的な暴力を持って従わせることで、シラクーザに平穏が訪れたのです。
 シラクーザで有力なファミリーは12個あり、そのまま十二家と呼ばれています。ミズ・シチリアは十二家すべてをグレイホールという1つのテーブルに集めて議論をさせることに成功し、お互いに争うことを禁じました。十二家は代々移動都市を治めており、その数は22個ありました。この数はミズ・シチリアが現れるずっと前から変わっていません。停滞するシラクーザを象徴するものの1つです。
 ミズ・シチリアはラテラーノにならって裁判所をシラクーザに導入しました。裁判官たちはミズ・シチリアの意志を体現するものたちです。十二家を見張る役割を期待されました。
 しかし残念ながら裁判所はあまりうまく機能しているとは言えない状態です。マフィアたちはミズ・シチリア本人には逆らえないのですが、裁判官のことはコントロールすることができます。このギャップに裁判官たちは苦しんでいます。


2. テキサスファミリーの歴史

2-1. マフィアのクルビア進出

 シラクーザマフィアの歴史を見ていきます。
 ミズ・シチリアの敷いた体制が徐々に変わり始めているというのが「シラクザーノ」のお話でした。そのきっかけを作ったのがテキサスファミリーです。
 テキサスファミリーの創始者であるサルヴァトーレ・テキサスはもともとシラクーザで生まれました。約20年前、クルビアの開拓がはじまったばかりのころにサルヴァトーレはクルビアに移住し、かの土地でテキサスファミリーを結成しました。テキサスファミリーはクルビア中のマフィアからの尊敬を集め、サルヴァトーレは信仰そのものだともいわれていました。
 サルヴァトーレを巡るラブロマンスは現代のオペラの演目として好まれていると言われていました。ジョヴァンナの祖母であるヴィヴィアンもサルヴァトーレに惹かれた1人。結局別の人と結ばれたらしいのですが、ヴィヴィアンの息子はロッサティファミリーのドンまで登り詰め、テキサスファミリーと良好な関係を築いたと言われています。
 サルヴァトーレの孫娘であるチェリーニアと、ヴィヴィアンの孫娘であるジョヴァンナは幼馴染としてクルビアで幼少期を過ごしました。ロッサティとテキサスの次代を担う者同士期待されていたのでしょう。1080年に撮影された写真が物語中に登場しましたね。
 チェリーニアはクルビア生まれクルビア育ちです。なのでテキサスのオペレータープロファイルにもクルビア出身と記載されています。


2-2. テキサス家の親子喧嘩

 サルヴァトーレの息子のジュセッペは、父とそりが合いませんでした。
 サルヴァトーレは故郷に誇りと愛着を持っており、シラクーザマフィアの伝統を大事にした人物でした。一方息子のジュセッペは、目覚ましく発展するクルビアに未来を感じ、シラクーザは野蛮だと考えていました。どちらかが間違っているというわけではないのですが、両者の主張は対立してしまいました。
 サルヴァトーレは孫のチェリーニアを可愛がりました。チェリーニアに自らのルーツを知ってほしいと願い、彼女を数年間シラクーザに行かせました。そのとき滞在したのがサルッツォファミリーのお屋敷でした。テキサスファミリーとサルッツォファミリーは仲が良かったのだと思われます。
 ここでチェリーニアはサルッツォの次期当主であるラップランドに出会います。運命の邂逅ですね。彼女たちはそこで何度も手合わせをしました。実力は互角だったと言われています。
 クルビア生まれクルビア育ちなのに、シラクーザ人らしいと褒められていたチェリーニアのことをラップランドは気にしていたようでした。なぜそう思われるのかはチェリーニア本人も不思議がっていたのですが、サルヴァトーレの影響だったということでしょうか。ラップランドのチェリーニアへの異様な執着は、このあたりが源流になっているものと思われます。


2-3. ミズ・シチリアの大粛清

 チェリーニアがクルビアに戻ってきたあと、事件が起きました。
 ジュセッペとサルヴァトーレの対立は激化し、ついにジュセッペがサルヴァトーレを殺害。ドンの座を乗っ取ったジュセッペは、テキサスファミリーがシラクーザマフィアの枠組みを抜けると宣言したのです。古臭いシラクーザにこれ以上囚われたくないと思っていたのでしょう。
 「銃と秩序」でシラクーザマフィアを支配しているミズ・シチリアにとってこれを許すことはできません。テキサスファミリーの粛清を発令しました。サルヴァトーレのことは認めていたのですが、ジュセッペは息子ですし。
 シラクーザ中の精鋭がミズ・シチリアの号令によって集められ、クルビアに差し向けられました。サルッツォからはダンブラウンやラップランドが召集されて出撃しました。テキサス家はたった一夜で1人残らず殺されたということになっています。
 チェリーニアは父と祖父の殺し合いを間近で見てしまいました。何もかもが嫌になったのか、テキサスのお屋敷に自ら火を放ちました。屋敷から出てきたチェリーニアはラップランドに鉢合わせをします。
 このときすでにラップランドはチェリーニアに対する執着心を抱いており、命令に背いてまで彼女を追撃しようとしたのですが、断固たる意志を持っていたチェリーニアに惨敗。サルッツォに大きな損害を出してしまいました。サルッツォのドンのアルベルトは自分以外の人間がファミリーの行く末を決める判断を下すことを極端に嫌うため、娘のラップランドシラクーザから追放してしまいました。
 チェリーニアがたった1人で逃げ切ることは難しい状況。助けてくれたのがザーロでした。コイツに貸しを1つ作っておけば、「牙」同士の戦いで有利になると考えたのでしょうか。もしくはベルナルド本人もクルビアまで来ていたのかもしれません。チェリーニアはクルビアから安全に立ち去ることができました。
 チェリーニアとザーロの取引をエンペラーが見ていました。狼主がクルビアの都市に入ってくる匂いを嗅ぎ取り不審に思ったのだとか。エンペラーは行き場をなくしたチェリーニアに龍門に来ることを持ち掛けます。ペンギン急便が結成されたのはこのときでした。最初はエンペラーとチェリーニアの2人だったわけです。


2-4. ロッサティのシラクーザ帰還

 クルビアマフィアは中心的存在だったテキサスファミリーの滅亡により大混乱に陥りました。
 この状況をまとめたのがロッサティファミリーでした。このときにはすでにジョヴァンナがドンの座についていて、彼女は多くの苦労を重ねることになりました。サルヴァトーレの心血を無駄にしないようにと、路頭に迷ったクルビアのマフィアたちをまとめあげたのです。ジョヴァンナのチェリーニアに対する個人的な感情も入っていたことでしょう。
 ロッサティファミリーはクルビアからシラクーザへ戻ることになりました。この経緯は明らかになっていないのですが、テキサスファミリーが滅亡したことと無関係ではないでしょう。ジョヴァンナはミズ・シチリアのところに出向いて交渉し、報償としてネックレスをもらい受けました。ロッサティの中には少なからずテキサス家への恨みが残ったようです。
 ロッサティはクルビアの最新技術をシラクーザに持ち帰り、様々なメリットを提供することで、シラクーザのマフィアたちの信用を得ようとしました。その中の1つに移動都市を建設する技術がありました。
 23個目の移動都市を作る計画は約5年前からスタートしました。ロッサティはタダ同然でこの新しい移動都市の建設に尽力し、誰がこの都市を治めるかがファミリー間の新たな争いのタネになりました。最終的には現在の十二家の中で最も力を持つベッローネが勝機を得て、新しい移動都市を治めようとしていました。新しい移動都市はウォルシーニの第二区画を切り離す形で建造されていて、ヌオバ・ウォルシーニと呼ばれています。
 ここまでが「シラクザーノ」の前日譚です。


3. ウォルシーニの戦い

3-1. 龍門からシラクーザへ

 ここからがイベントの時系列のスタートです。龍門でペンギン急便の一員として働いていたチェリーニアのもとに、ザーロが現れました。
 ザーロはベルナルドが他の「牙」に勝てるかどうかの正念場に来ていると判断をしていたようです。新しい移動都市をベッローネが治めることになれば、ベルナルドは絶大な権力を持つことができます。ベルナルドの勝利に貢献することで7年前の借りを返せとチェリーニアに迫りました。
 ザーロがどういう存在なのかを理解しているからか、チェリーニアは逆らえないと判断したようでした。仲間に危害が及ぶ可能性もありますしね。彼女は1人でシラクーザに向かうことを決意します。エンペラーは彼女の意志が固いことを確認し、休暇扱いにしました。
 ザーロとエンペラーはお互いのことをよく知っている様子でした。エンペラーの過去についても少しだけ触れられました。ペンギンの見た目をしているだけあって、寒いところにゆかりがあるようです。細かいことはよくわからなかったのですが…。
 チェリーニアは他のメンバーを心配させないようにしていたのですが、結局エクシアとクロワッサンとソラはシラクーザに来てしまいました。何も言わずに出ていったチェリーニアを心配したのです。
 ソラは所属するMSRという音楽事務所のツテでデッラルバ劇団にキャストとして潜り込むことにしました。デッラルバ劇団の団長はベルナルドです。応募したのは本当にたまたまのようでしたが、応募を受けたベルナルドの方は何かに気づいていたかもしれません。


3-2. カラチの死

 ウォルシーニで起きた最初の事件がカラチの死でした。
 チェリーニアはベッローネの客人として迎えられ、次期当主のレオントッツォの用心棒という立ち位置になりました。新移動都市の主導権争いでベッローネが狙われる立場になったため、テキサスファミリーの生き残りを抱え込んだと宣言することで、他のファミリーを牽制する狙いがありました。
 レオンとチェリーニアはとあるパーティに出席することになりました。そこでチェリーニアは政府のお役人のカラチを守る任務を受けるのですが、パーティが殺し屋に襲撃され、カラチは車に積まれた爆弾によって殺害されてしまいました。
 カラチは民衆を想う優秀なお役人でした。彼のおかげで新しい移動都市は非常に良い設計になったと言われています。比較的ベッローネに近い立場だったのですが、あくまで中立の立場で立ち回っていました。レオンはカラチの秘書として働いていて、そんなカラチから大きな影響を受けていました。
 カラチの暗殺を遂行したのはディミトリであり、ドンのベルナルドから指示でした。このときベルナルドは、自分はミズ・シチリアの統治を転覆させたいのだというウソを語ってディミトリを動かしました。内部からベッローネを攻撃することで弱みを見せて、他のマフィアの野心に火をつける作戦です。
 ディミトリ個人としてもカラチの爆殺には意味がありました。次期当主のレオンが最近カラチから影響を受けすぎていて、考え方が軟弱になってしまったと懸念をしていました。レオンの目を覚ましたいという思いもあったのです。
 ディミトリはレオンのためにもう1つ行動を起こしました。彼はレオンに悪影響を及ぼすラヴィニアのことも牽制したかったのです。ディミトリはカポネとガンビーノを使い、ラヴィニアに警告しようとしました。
 もともと裁判官をやっていたボルトロッティという人は裁判官の道を諦めて殺し屋をしていました。ガンビーノたちにボルトロッティを捕まえさせて、ラヴィニアの目の前に突き出せば、元同業者の哀れな姿を見てショックを受けるだろうと画策したのです。
 ドンに対する強い忠誠心をベルナルドに利用され、ディミトリがベッローネを内部から攻撃していたというのが序盤の展開でした。ベルナルドはベッローネそのものも葬り去ろうとしているわけなので、方向性が合っているのですね。レオンを試したいという狙いもあったようです。


3-3. 犯人は誰か

 カラチを暗殺した犯人探しが行われました。
 ベッローネが弱みを見せたことで街が騒然としてきました。新しい移動都市の支配権は、まだ確定していないのかもしれないと。
 レオンとラヴィニアにはカラチ暗殺の首謀者がわかりませんでした。チェリーニアはベッローネへの借りを返してさっさと龍門に帰りたいと思っており、事態を鎮静化させるために自分が犯人だと名乗り出ることを提案します。このウソの自供に対するリアクションで、真犯人をあぶり出すという狙いがありました。
 チェリーニアが表舞台に出てきたことで、ロッサティが動き出そうとします。彼らはテキサスファミリーに因縁がありますから。しかしレオンはこれ以上自体を複雑化させたくありません。彼はウォラックと直々に交渉を行って、行動を起こすのを待ってもらうことにしました。ウォラックは義理堅いので、7年前にベルナルド(ザーロ)がチェリーニアを救ったことに免じて、今回は一歩引くことにしました。
 一方でディミトリは困りました。ベッローネが首謀者だと名乗り出るわけにもいかないのですが、かといってチェリーニアはベルナルドのキーカードなので殺すわけにもいきません。ディミトリ自身は手を打つことができず、レオンに真犯人だとバレてしまいました。レオンに追及されたディミトリは、この作戦はベルナルドがミズ・シチリアの統治をひっくり返そうとしている計画の一部であることを暴露します。
 ディミトリの動きを利用したのがラップランドでした。カポネとガンビーノを経由してディミトリにたどりついた彼女は、ディミトリと交渉を行いました。ベッローネの代わりにサルッツォが罪を被ることで、ベッローネに対して恩を売る形になったのです。ベッローネが一番弱っているときに手を貸し、コントロールする狙いがありました。
 アルベルトはこの作戦を否定はしていませんでした。策略の筋は悪くないと思ったのでしょう。しかし、自分に代わってファミリーのことを決められるのは許せません。ラップランドはまたお父さんに怒られていました。


3-4. ベッローネ-サルッツォ同盟

 ラップランドがベッローネを救った形になり、ベッローネとサルッツォが接近します。
 アルベルトはベルナルドと腹を割って話すためにパーティに招きます。ベルナルドはそこで、ロッサティを叩く作戦を提案しました。
 ベルナルドはファミリー同士の抗争を激化させて最終的にミズ・シチリアの統治を転覆させるウソの大義をアルベルトにも伝えました。一方で2人はまだミズ・シチリアには勝てないと認識しています。
 ロッサティの現在のドンであるジョヴァンナは穏健で義理堅い運営を行っています。新しい移動都市の技術の提供以降、勢いを増して十二家への加入も果たしました。彼女がトップに居座る限り、ロッサティはミズ・シチリアに対して戦いを吹っ掛けるようなことはしないでしょう。その手腕にはベルナルドさえも敬意を持っているようでした。
 そこでロッサティのドンを交代させて、武闘派のウォラックがドンになれば、ロッサティも争いに加わってくるだろうとベルナルドは展望を述べました。アルベルトはその提案に乗ったのです。
 ベッローネとサルッツォが束になったとしても、一大勢力であるロッサティを打ち破るのは大変です。ベルナルドは攻略のキーマンとしてチェリーニアを起用することにしました。
 チェリーニアはウォラックと会話をした際に、ジョヴァンナに会う必要性を感じます。一方で、ジョヴァンナがテキサスファミリーに対して特別な感情を持っていることを知っているウォラックの胸中は複雑でした。
 また、このパーティのあとでラヴィニアはベルナルドから「ゲームは終わった」という言葉を告げられます。ベッローネとサルッツォが手を組んでロッサティを攻撃しようとしているときなので、ラヴィニアは昔の約束が裏切られたのだと解釈します。ベルナルドはシラクーザに公正を実現しようと約束していたのに、結局は暴力で物事を推し進めようとしていたわけですからね。
 「ゲームは終わった」の真意はラヴィニアがのちに気づくことになりました。ベルナルドは狼主たちのゲームから抜けようとしていたのです。そんなことラヴィニアが知るはずないので、ラヴィニアを危険から遠ざけたのちに、あとあとになって気づいてくれればいいと思っての一言だったのかもしれません。


3-5. オペラ劇場の戦い

 オペラ劇場での戦いを見ていきます。
 ジョヴァンナが脚本を書いた「テキサスの死」の第二幕。彼女がチケットを購入したことを劇団の主であるベルナルドは把握していたので、待ち伏せが可能でした。
 十二家同士が手を組んで戦争を仕掛けるということはミズ・シチリアの敷いたルールに背く行為です。この瞬間から、ベッローネとサルッツォはミズ・シチリアへ反旗を翻したものとみなされていきます。アルベルトは洗車工をしていたダンブラウンを呼び戻していました。そのぐらい大きな戦いだと考えていたのでしょう。
 チェリーニアはベルナルドから、ジョヴァンナを殺せば借りを帳消しにすると告げられます。演奏者の代役として舞台に上がり、ターゲットの位置を見定めました。劇の途中でベッローネとサルッツォによるロッサティへの攻撃が開始し、チェリーニアもジョヴァンナのもとへと迫りました。
 チェリーニアはジョヴァンナのもとに辿り着くと武器を下ろしました。彼女はジョヴァンナを殺すつもりはありませんでした。
 逆に手を結ばないかとジョヴァンナ側からチェリーニアへ提案がありました。クルビアで幼馴染として育ったもの同士として、そしてテキサスファミリーとロッサティファミリーの跡継ぎとして、昔の関係性を取り戻そうという提案です。しかしチェリーニアは「もう昔には戻れない」と言い残して去っていってしまいました。ジョバンナは過去に囚われすぎていると。チェリーニアは警告するためにわざわざ会いに来たのかもしれません。
 ラップランドの見立てでは、ジョヴァンナはチェリーニアを唯一シラクーザに連れ戻せる存在でした。チェリーニアにとってシラクーザで付き合いが長いのは、自分を除けばジョヴァンナのみですから。しかしその予想は外れました。チェリーニアがシラクーザに興味がないことを強調するエピソードとなりました。
 劇場での戦いの裏で、ルビオはベルナルドのもとに直談判に向かいました。カラチの後任に自分をつけてくれという自己推薦です。ルビオは権力に目がくらんだ愚か者のフリをしていましたが、彼には市民の前で演説を行いたいという狙いがありました。ベルナルドもルビオが腹に抱えているものには気づいていて、これは自分の作戦に使えると考えて提案に乗りました。
 劇場にフラフラと入り込んできたラヴィニアはダンブラウンに殺されそうになるのですが、ルビオが助けてくれました。自分の部下にするので殺さないでくれと。ルビオはラヴィニアと接点を持ちたがっていたので、この機会を上手く利用することができました。 


3-6. ロッサティのドンの座

 劇場の戦いのあとの出来事。
 チェリーニアがジョヴァンナを取り逃がしたことを口実に、ベルナルドは彼女との契約を打ち切ることにしました。これでチェリーニアはベッローネの庇護下を離れます。
 次にベルナルドはウォラックをけしかけて、ロッサティのドンの座を奪わせようとしました。ミズ・シチリアの統治を転覆させるには、ロッサティにも暴れてもらわねばなりません。慎重派のジョヴァンナがドンの座にいてはそれが叶いません。
 ウォラックはジョヴァンナがチェリーニアに執着しすぎていると考えていました。チェリーニアがベッローネの庇護下を離れるということは、彼女を攻撃してもベッローネが援軍に駆けつけることはないということです。ウォラックはチェリーニアを殺そうとしました。
 ウォラックから見ると、ベッローネは新しい移動都市を使って新しい時代を築こうとしていました。それに乗り遅れるとロッサティは落ちぶれてしまう可能性があります。誰よりもファミリーのことを考えているウォラックは、ジョヴァンナの目を覚まさせようとしたのです。ジョヴァンナが乗り気になってくれれば、自分がドンの座を奪う必要はないと思っていたはずです。
 チェリーニアに直接攻撃するのは分が悪いので、ウォラックはファミリーを連れてソラたちを誘拐しようとします。そこにソラたちよりも先に現れたのが、ソラやチェリーニアを守ろうとしたジョヴァンナでした。彼女はミズ・シチリアにもらったネックレスを持ってきていました。
 ウォラックとジョヴァンナの姿勢は完全に対立してしまい、どうにもならなくなってしまったことを2人は悟りました。多くの構成員の賛同を得ていたウォラックの方がドンの座を引き継ぐことになり、裏切りものであるジョヴァンナはファミリーの目の前で処分されなくてはいけませんでした。それが落とし前というものです。ウォラックの情が急所を外させたのですが。


3-7. ルビオの死

 ルビオは何がしたかったのか。
 新しく建設部長になるとテレビで演説をすることができます。ルビオはウォルシーニの一般市民に向かって呼びかけるチャンスを得ました。一般人がマフィアに支配されるこの国の在り方はおかしいじゃないかと呼びかけたかったのです。
 ルビオはカラチが亡くなってしまったことに対して大きな怒りを抱えていました。同期で政府の役人となり、マフィアに媚びずに立派に仕事をやり遂げるカラチのことを尊敬して信頼していたからです。
 建設部長になったからといって、いますぐルビオにできることは多くありません。しかし自分でやり遂げられなくても、多くの人にメッセージを届けることはできます。自分がここで殺されることになっても、メッセージを受け取った人が後を継いでくれればそれで良い。そんなふうにルビオは考えていたに違いありません。
 シラクーザはマフィアが支配する国です。しかし、マフィアだけでは生活は回りません。一般市民に頼らざるを得ないのです。一般市民が自らの持つ力を自覚することが、支配を覆す第一歩だと考えたのでしょう。
 しかしそんなことを声高に宣言してしまっては、マフィアが許してくれるわけがありません。マフィアに己の命を奪われるぐらいならと、彼はBSWから購入した拳銃で自殺を図りました。
 ルビオの命がけの演説は、聞いた人の行動を明確に変えていきます。顕著だったのがダンブラウン、ラヴィニア、そしてチェリーニアの3人でした。
 ダンブラウンは演説会場にいたので、ルビオと直接言葉を交わしました。マフィアから足を洗おうとして立ち止まっていたダンブラウンには、新しい時代の到来が響いたことでしょう。
 ラヴィニアには娘の世話を任せ、日記帳で真意を伝えました。一般市民の力は創造した生活そのもの。マフィアを特別扱いせずに公正に裁くことができる場を目指す彼女を勇気づける言葉となりました。
 そしてチェリーニアも心を動かされていました。いままでは早く龍門に帰るために行動をしていたのですが、本気でシラクーザを変えようと頑張っている人たちを見て気が変わっていきます。そういう人がいることは彼女にとって予想外の驚きであり、ルビオが演説を行うためだけに命を賭けなくてはいけなかった現状に怒りを覚えたのです。


3-8. ダンブラウンの死

 ルビオの演説はダンブラウンの行動を変えました。
 レオンはこの段階でベルナルドの計画に気づきました。ベルナルドはファミリーのいないシラクーザを作ろうとしている。ディミトリにもそれを伝えました。レオンはベルナルドを止めるため、アルベルトとウォラックに協力を要請しようとします。
 アルベルトは怒っていました。ベッローネとサルッツォはロッサティを倒そうと共闘しました。ゆくゆくはミズ・シチリアを倒そうという計画でしたが、ルビオが早々にそれをばらしてしまったため、ミズ・シチリアの怒りを突然買ってしまったのです。ベッローネは本当に協力する気があるのか、誠意が見えてこないと。
 この会合にダンブラウンも来ていたのですが、彼は突然ドンであるアルベルトに武器を向けました。最近ずっと腹に抱えていたモヤモヤがルビオのメッセージによって我慢ならない状態になり、それをアルベルトに伝えました。シラクーザマフィアは自分の利益のことばかりを考える化け物になってしまったと。
 カチンときたアルベルトは一瞬のうちにダンブラウンを殺してしまいますが、その場にいたレオンにダンブラウンの想いが伝搬します。マフィアは偽るのが上手くなっただけで、暴力を使ってやりたい放題やるという本質は昔から変わっていません。ファミリーの跡継ぎとして自分の努力が足りていなかったわけではなく、初めからやり方を間違えていたことに気づいたのです。彼はもうこれ以降、マフィアのやり方で物事を解決するのはやめようと心に決めます。
 一触即発の状態となったとき、ベルナルドが新移動都市を起動させて一同に動揺が走ります。レオンはベルナルドを追いかけ、アルベルトのことはウォラックとディミトリが足止めをしてくれました。
 亡くなったダンブラウンの亡骸はベンが片付けてくれました。昔からの知り合いだったようです。ベンもダンブラウンの主張を認めていました。文明の名のもとに振るわれる暴力がマフィアの本質なのだと。


3-9. ベルナルドの死

 次に命を落としたのがベルナルドでした。
 ベルナルドはエンジニアを脅して新移動都市を起動させ、街をさらなる混乱状態へと陥れました。新移動都市を手に入れようと、各勢力や街中のマフィアが動き出したのです。
 本人は教会に足を運んでいました。レオンは父親の行動を読んで詰め寄ります。すでにベルナルドの狙いに気づいていたレオンは、父が成し遂げたかったことに一定の理解を示しました。しかし、それだけでは足りないのだとダメ出しをしました。
 たとえすべてのファミリーを消し去ることに成功したとしても、ファミリーによる支配しか知らないシラクーザ国民はファミリー制度を復活させてしまう。だから、新しい時代を作っていくプロセスに一般市民を巻き込んでいかねばならないのだとレオンは主張しました。旧体制の破壊だけではダメなのですね。これにはベルナルドも納得を示していました。
 レオンは新移動都市を抑えるために先に教会を出るのですが、ベルナルドが追い付いてくることはありませんでした。ミズ・シチリアのルールを破ったベルナルドは殺される運命にあり、それを受け入れていたのです。
 教会にやってきたのはアグニルでした。ベルナルドはアグニルに対して、レオンが成し遂げることを見てみたくなってしまったと未練を語るのですが、死を免れられるとは思っていなかったようです。ここでアグニルはただならぬ気配が近づいてきていることを感知します。自分が手を下さなくてもベルナルドが殺されることを理解し、教会を出て行きました。
 教会にやってきたのはザーロでした。ファミリーを破壊するというベルナルドの行為は、ベルナルドが築き上げてきた権力を自ら放棄することに等しいです。ザーロが育ててきた「牙」としての強みを自ら放棄してしまったので、ザーロは怒っていました。
 ザーロはベルナルドが人間社会の中でかなり強い権力を持っていると認識していました。シラクーザを支配するマフィアの中で一番強大なファミリーのドンがベルナルドですから、普通に考えればそれは正しいです。しかしそうではないのだとベルナルド自身に否定されていました。真の権力は時代を牽引するもの。自分の持っている権力は大したことないのだと諭していました。ザーロは権力というものを誤解していると度々指摘があったのはこれが理由です。
 狼主が「牙」を支配する方法はいくらでもあるので、ザーロは強硬手段に出ようと思っていたでしょう。しかしベルナルドはそれを拒みます。彼は毒を飲んで自殺してしまいました。いくら狼主でも死にゆく人間を生き返らせることはできません。狼主同士のゲームにおいて、ザーロの敗退が決まった瞬間でした。


3-10. ザーロとの決戦

 怒り狂ったザーロとの対決がこのイベントのボス戦でした。
 ザーロの行動にもはやロジックはありません。長年手塩にかけて育ててきたつもりだったベルナルドに、利用されまくった挙句勝手に死なれて敗北してしまったのです。子孫を根絶やしにしてやるとレオンに襲い掛かりました。
 チェリーニアやエクシアたちも参戦していたのですが、ラップランドもこの戦いに馳せ参じてきました。アルベルトと対話してサルッツォファミリーを抜け、シラクーザのすべてを敵に回す決心がついたのです。7年前にチェリーニアがテキサスファミリーを捨てたような決断もアリなんだと心の整理がついたのでしょう。
 最終的にザーロを追い返してくれたのはエンペラーでした。ペンギン急便のピンチに駆け付けたエンペラーは、今回の狼主のゲームですでに敗北済みの他の狼主たちを連れてきました。敗者は大人しく去るべきなのに、人間社会に干渉しようとするのはルール違反です。狼主は他の狼主の苦しめ方も理解しています。束になられては敵うわけがないので、ザーロは街の外へと消えていきました。
 ザーロが撃破されたタイミングで、ミズ・シチリアがようやく街に降り立ちました。ベルナルドが引き起こした混乱に収拾をつけるためです。マフィアたちは粛清を覚悟したのですが、レオンは意を決して交渉にに臨みます。対話するチャンスが欲しいと。
 それに対してミズ・シチリアは、最初から対話をするつもりだったとあっさりチャンスをくれて、アグニルを連れて去っていきました。ミズ・シチリアはベンと合流し、彼の意見を求めます。
 ベンが何者なのかは最後まではっきりしませんでした。「巨狼の口」というミズ・シチリアのお抱えの戦力の一員のようでしたが、かといってベンが戦ったり、ミズ・シチリアのために動いているシーンはありませんでした。名前も特徴的ですし、何か尋常ならざる存在のように見えます。
 ちなみに、「未完の断章」でミズ・シチリアからラップランドに届いた手紙の中で、ラップランドも「巨狼の口」にお誘いを受けていました。彼女は子飼いになることを拒み手紙を燃やしてしまったのですが。
 ベンはレオンのことを評価していました。この時代に芽吹いたきざしだと。いままでミズ・シチリアがルールを破ることを認めていなかったのは、満足できる答えを出してくれる挑戦者がいなかったからということですが、レオンには期待をしていました。


3-11. 旧時代と新時代

 ミズ・シチリアと新世代は交渉を行います。
 いまのシラクーザの形を造ったミズ・シチリアとアグニルはさながら旧時代の番人のようでした。自分たちよりも良い社会を作れるのかと、若者たちを見定めています。
 レオンからミズ・シチリアへの要望はシンプルでした。新しい移動都市を貸してほしい。そしてそこにはマフィアを入らせない形で新しい都市運営を実行させてほしいという要望です。変化する時代にあって、シラクーザにマフィアはもう必要ないことを証明したいのです。父のベルナルドと同様に。
 ミズ・シチリアは人間が常に正しい判断をできるとは限らないことを知っています。将来的にレオンの判断が間違うこともあるでしょう。レオンは自分のやり方を否定する若者が現れたのなら、その人たちの考えを聞くつもりだと言っていました。ミズ・シチリアが自分たちの意見に耳を傾けてくれているように。
 ラップランドとチェリーニアはお互いの因縁に決着をつけてからレオンたちに合流しました。生き残った方がより強くなれると殺し合いを始めたのですが、ソラたちを見るチェリーニアの目に宿る名残惜しさが、ラップランドの想像を超えました。龍門の仲間にこんなに執着するのもまたチェリーニアだったのだなと。ラップランドも、1人の人間として生きるべきだと己を見つめ直しました。
 ラップランドは父親のアルベルトと決別した理由をここでも持ち出しました。彼女はシラクーザのすべてを敵に回す覚悟でいます。それはすなわち、現体制を壊そうとしているレオンたちの道に通ずるだろうと。
 チェリーニアはシラクーザに残ってレオンとラヴィニアの手助けをする決意を示しました。シラクーザを変えたいという周りの意志に引っ張られたのです。
 チェリーニアからもミズ・シチリアにお願いがありました。ロッサティを見逃してほしいというものです。真意は語られませんでしたが、ジョヴァンナのためでしょうか。ジョヴァンナはもうドンではありませんが、彼女が大事にしたファミリーを救いたかったのでしょう。
 ジョヴァンナは変わってゆく時代にあって、変わらないものをチェリーニアに求めた自らの傲慢さを自覚しました。チェリーニアとソラの目の前から彼女は姿を消し、台本だけを残していきました。「テキサスの死」の第三幕は、チェリーニアが幻想の産物だったというオチをつけていました。チェリーニアという存在を誰かが定義すること自体が傲慢なのだと語るように。
 ラヴィニアからのミズ・シチリアへの挑戦は、裁判官としてのものでした。いままでシラクーザで起こるすべては最終的にミズ・シチリアが裁いていましたが、その現状を変えていきたいという挑戦です。
 ラヴィニアはアグニルへの挑戦も宣言していました。シラクーザの秩序はファミリーによってもたらされています。それを法による支配に置き換えたいのだというものです。アグニルが成し遂げられなかったことを自分がやってみせるという宣言。道のりは長いことを理解していますが、新移動都市の中から一歩ずつ進めていくしかありません。
 交渉を終えたあと、ベルナルドのお墓の前でディミトリはレオンと決別しました。ディミトリは旧来のファミリーの生き方を捨てることができませんでした。ベッローネの残党をまとめて新しいファミリーを作るとのことです。最終的にはすべてのファミリーの存在をなくそうとしているレオンの道に、ゆくゆくは立ちはだかることになるでしょう。この2人の在り方も、対照的でエモーショナルでしたね。


3-12. 狼主のゲームの続行

 ザーロが敗退しましたが、狼主たちのゲームは続いています。血掟テキサスのプロファイルによると今回のゲームは終盤戦を迎えているらしいです。
 レッドはオバアサンと呼ばれる狼主の「牙」です。シラクーザに1人でやってきて、真狼と呼ばれる「牙」を殺しました。これでまた一歩、レッドとオバアサンは勝利に近づいた形です。
 真狼はリュドミラのお師匠さんでした。身体が不自由な真狼はリュドミラに戦いを教えてくれたとのことです。「牙」である真狼に関わることは不幸なのだと本人は捉えていたようで、リュドミラにそれを漏らしていたこともありました。
 レッドは「牙」にしか興味がないので、リュドミラには何もせずにどこかへ行ってしまいました。リュドミラはこのあとどうするのでしょうか。新生レユニオンに加わるのでしょうか。
 シラクザーノの途中から登場していたルナカブは、アンニェーゼという狼主の「牙」です。ルナカブのプロファイルに書かれていることですが、アンニェーゼは非常に理性的で、ルナカブを不毛な「牙」の役割から解放したいと考えているようです。一方で、アンニェーゼ自身は狼主としての本能に抗うことが非常に難しく、結局はルナカブにも「牙」としての生き方を強いてしまっているとのこと。
 ルナカブはウォルシーニの事件終結後に、エンペラーに声をかけられてロドスに来ました。ロドスには「牙」が2人いることになります。レッドとルナカブが抱える問題は、今後へと引き継がれた形になりました。
 ザーロはすぐさま次のゲームに備えようとしていて、ラップランドに目をつけました。彼女たちは3か月間も戦い続け、ついにザーロの方が折れました。思想を育まない満たされた抜け殻。ラップランドをそのように評し、彼女に勝つことができないことをザーロは悟りました。自分の理解を超越する未知なる存在こそが、勝利に導いてくれる「牙」にふさわしいと思ったのか、ザーロはラップランドに対して身を伏せました。
 ラップランドシラクザーノの物語を経てチェリーニアとのいざこざに区切りをつけるとともに、ザーロが力を貸してくれるようになったのではないかと思います。ますます戦闘能力に磨きがかかっていくと思うのですが、今後どんな物語を引き起こしてくれるでしょうか。楽しみですね。




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【アークナイツ】メインストーリー11章・まとめ・考察・感想【淬火煙塵】

 2023年4月27日に実装されたアークナイツのメインストーリー11章「淬火煙塵」の物語を整理していきます。


 11章は時系列が入り乱れるお話なのですが、大別すると下表の4つに分けられます。それぞれ登場人物が移り変わっていくので、意識して整理していきます。

 

1. 200年前

1-1. サルカズとはなんなのか

 スタートはここです。サルカズとはそもそもなんなのか。200年以上前の話です。
 現在のテラに住んでいる人々は先民と呼ばれます。フェリーンは猫、ペッローは犬といったように、動物の特徴を取り込んでいます。その中にあって、悪魔のモチーフを取り込んだサルカズは独特な存在感を持っています。彼らは魔族と呼ばれ、差別の対象となっています。
 11章で語られた衝撃の事実は、サルカズは種族として先民とは全然別物だということです。先民に該当する種族は血縁でいうと各々が比較的近いらしいのですが、サルカズは遠いとのこと。
 サルカズに近い立場にあるのが天使をモチーフにしたサンクタです。サンクタが堕天するとサルカズになってしまうと思われる描写が「吾れ先導者たらん」で出てきました。表と裏の関係性なのかもしれません。そして、サルカズ側からするとサンクタこそが裏切り者だとのこと。
 もともとティカズと呼ばれていたサルカズの先祖は、テラの先住民族のような立ち位置だったようです。ティカズの目に映るすべての世界がテラと呼ばれていました。つまりテラにはティカズしかおらず、国という概念はなかったと考えられるのです。
 時代は移り変わり、神民と先民がテラにやってきて、ティカズはサルカズと呼ばれるようになりました。サルカズたちは自分たちの故郷であるカズデルを求めています。カズデルは都市や国家の名前なのかなと思っていたのですが、ティカズの来歴を鑑みるとテラの大地そのものと想像できます。
 現在に至るまで、サルカズたちは先民たちから受ける不公平な扱いに怒っているのだと考えられてきました。それは部分的には正しいのですが、サルカズの全てを理解できてはいませんでした。サルカズたちは自分たちの故郷を侵略され、奪われたことに怒っているのです。
 これらはテレシスやブラッドブルードの大君といったサルカズ側の人間が語っていたことなので、真実とは異なる部分があるかもしれません。しかし少なくとも、彼らの目線からはこういうふうに見えているというのは重要な情報だったかなと思います。


1-2. ケルシーが導いたカズデルの滅亡

 サルカズはすべての先民を恨んでいます。200年前にサルカズは復讐を企てていたのですが、それを潰したのはなんとケルシーでした。
 ケルシーはヴィクトリア・ガリア・リターニアの連合軍を率いてカズデルを潰しにかかりました。彼女曰く、サルカズの復讐は大地に癒えぬ傷跡を残すからという理由だったそうです。より大きな悲劇を防ぐために、サルカズたちに涙を吞んでもらうつもりだったのかなと考えられます。
 このときのカズデルには6名の英雄がいました。「VIGILO」で語られていましたがテレジアもその1人。英雄たちは果敢に戦ったようですが、ケルシーが率いる軍隊はあまりに強大で、カズデルは跡形もなく消え去ってしまいました。それ以降、テラにカズデルは現れていません。
 この経緯を知ると、ケルシーとテレジアがバベルで仲良くしていたのが信じられなく思います。2人は多くの対話と行動を持って信頼を築いたらしいのですが、そこに至るまでには長い物語がありそうな気がします。バベルの結成秘話だけでもかなりの濃密なストーリーが展開されそうな予感です。
 テレジアとテレシスは長命な人たちです。200年前のこの戦争も普通に体験しました。おそらくサルカズという種族がもたらしているものと考えられます。
 一方でケルシーは見た目はただのフェリーンなのですが、彼女の不老の身体はいよいよストーリーで直接言及されるまできました。テレシスは彼女が生き返るところを見たとさえ言っていました。




2. 26年前

2-1. ヴィーナとアラデルの幼少期

 話は一気に26年前まで飛び、今度はヴィクトリアの情勢を見ていきます。最初に語られたのはアラデルとヴィーナの幼少期の出来事でした。
 ヴィーナの父が国王を務めていた時代、度重なる戦争でヴィクトリアの財政状況は疲弊していました。前国王は税制を改正し、財政を立て直そうとしていました。議会、貴族、商人が力を強め、国王の権威は失墜していっており、関係が悪化していた時代です。
 ロバート・カンバーランド公爵は国王に最も忠実な友人として仕えていました。議会に対して強硬な姿勢を取る前国王をなだめ、穏健な政治を執り行うように助言していました。
 そんな中、ちょっとした事件が起きた日のことが描かれていました。前国王の娘ヴィーナが国剣の諸王の息とともに失踪してしまったのです。諸王の息は古のアスラン王が、当時ヴィクトリアを治めていたドラコ王と戦ったときに使用した伝説の剣です。
 ヴィーナは洞窟を冒険して諸王の息を発見し、無事に戻ってきました。国民たちはこれを奇跡だと讃え、お祭り騒ぎとなりました。しかし一部の貴族は前国王の企みに気づいていました。これは茶番。国王の権威付け、ヴィーナの神性の発揮、国民に対する息抜きなどの意図で前国王が仕組んだものでした。
 このとき、幼いアラデルはヴィーナを見ていました。3体のライオンを引き連れた姿です。しかし周りの人にはライオンが見えていませんでした。ライオンはアラデルに「ヴィーナと再び出会うだろう」という予言を残しました。
 このライオンはヴィーナがガウェインと呼んでいた存在だと思われます。ヴィーナの戦いの師匠です。ヴィーナは獣のような戦い方をするとインドラが評していたことがありますが、獣そのものがお師匠なのだからまあそうなるのも仕方ない。前国王もガウェインのことは認知しているらしく、こんな好待遇は自分すらも受けていなかったとヴィーナを羨ましがっていました。
 オペレーターの昇進イラストにはモチーフとなった動物が描かれていることが多いのですが、それが実体を持っていることがはっきりと語られるレアなケースとなりました。シージのプロファイルにもガウェインからの言葉と思われる記載があります。国王の血筋だからこういう能力が顕現するのか、また別の理由があるのかは謎です。



2-2. 前国王の処刑

 ヴィーナが諸王の息を見つけるという茶番からわずか数日後、前国王は処刑されてしまいました。
 前国王は財政を立て直そうと引き締め路線を強行し続けた結果、国民と議会の恨みを買って絞首刑になってしまいました。本来であれば国王は議会の暴力に対抗できるだけの武力を有して然るべきなのですが、議会は周到に国王側の戦力を削いでいました。
 ヴィクトリアの最高戦力である蒸気騎士は、議会が命令を出せる立場にあるため、全員をロンディニウムから離れさせていました。前国王の治世でリンチ卿という人物が蒸気騎士に任命されたのですが、それ以降は新しい蒸気騎士が生まれず、人員不足に陥っていました。これも議会が手を回していた結果だと思われます。
 塔楼騎士は国王を守る護衛隊です。彼らは議会が指揮する都市防衛軍との戦闘になり、抑え込まれてしまいました。国王の処刑以降は、国王不在の王宮を守り続けるという悲しい軍隊になってしまいました。塔楼騎士の栄光と苦難の歴史は11章サブコンテンツの「塔楼騎士の書」で見ることができます。
 ヴィーナは地下のパイプを通って逃げることができました。議会側からすれば国王の血は根絶やしにしたかったと思うのですが、罪のないヴィーナに対して過激な手は使えなかったのではないかと思います。
 これ以降、ヴィクトリアは国王不在のまま20年以上平穏が保たれることになります。次のヴィクトリアの王座を巡って貴族たちは対立を深めていくのですが、目に見えて大きな動きはありませんでした。


3. 4年前

3-1. ハイディのスパイ活動

 時系列がジャンプします。ロンディニウムではヴィクトリアの不穏な動きをハイディが監視していました。
 「遺塵の道を」で見たように、ハイディは父と同様にケルシーのスパイとして活動していました。4年前の時点でロンディニウムに入っていて、小説家として貴族の社交場に出入りしていました。
 国王が不在の時期、公爵の身分を持つ大貴族はロンディニウムに入れないという法律が作られました。公爵の動きを制限しようとした議会の思惑があったと考えられます。「遺塵の道を」などでも語られていました。
 ハイディはロンディニウムに入れないはずの公爵軍の情報を掴み、軍から追われていました。ロンディニウムで見つけた支持者のゴールディングに助けを求めます。ハイディとゴールディングはアダムスが開いた読書会で出会いました。アダムスも何かしらの諜報活動に関わっていたようで、のちにサルカズに殺されてしまいます。
 ゴールディングは聖マルソー学校の先生をしています。この学校は孤児院のようなものだったようで、貧しい子供たちを引き受けているようでした。おじいさんがガリア人のゴールディングは、同じガリア遺民のレト中佐とともにこの学校で育ちました。2人は昔はガリアのことを語り合っていたようです。また、レトの父がこの学校に資金援助してくれているという話もありました。

3-2. スタッフォード公爵の反乱

 ハイディが抱いていた懸念は現実のものとなります。戦争がやってきました。
 戦いを仕掛けたのはスタッフォード公爵でした。この人は自分の軍隊を率いてロンディニウムに侵攻し、議会を攻撃しました。国王不在のロンディニウムにあって、政治の中心は議会だったので、今度は議会が標的となったのでしょう。
 議会が動かせる戦力は都市防衛軍ですが、彼らはスタッフォード公爵の軍に勝てませんでした。このままスタッフォード公爵が次の王座に就くかと思われたのですが、別の公爵が代わりにこの反乱を鎮めました。キャヴェンディッシュ公爵です。
 キャヴェンディッシュ公爵は自身の軍隊に加えて、サルカズ軍も戦力に加えていました。ロンディニウムの市民たちは当初、このサルカズは公爵が雇った臨時の傭兵だと思っていたようです。しかしテレシス率いるこのサルカズたちがロンディニウムからいなくなることはありませんでした。
 都市防衛軍は公爵同士の戦いに巻き込まれボロボロの状態でした。本来であれば都市に入り込んでしまったキャヴェンディッシュ公爵の軍隊やサルカズ軍を追い出さねばなりません。しかし、それらの大軍と戦うだけの戦力があるはずもなく、司令官のレトはテレシスに投降しました。
 テレシスに投降の意志を伝える際に、レトはガリアを再建させたいという野望を語りました。カズデルを再建しようとしているサルカズと、自分は同じなのだと。自分にはヴィクトリアに対する忠誠はなく、ロンディニウムを守りたいとも思っていないという姿勢をアピールしたのです。
 テレシスの側からしても、孤立無援の状態でロンディニウムにいるよりは、都市防衛軍の後ろ盾があった方が格段に動きやすくなります。両者の交渉は成立しました。
 のちにアーミヤと対峙した際、レトのガリアに対する想いは建前であり、テレシスとの交渉の道具でしかなかったことが看破されます。レトは自分と都市防衛軍の命を守りたいという一心でテレシスに従ったのでした。人間味がありますね。
 スタッフォード公爵とキャヴェンディッシュ公爵がこのような動きをとった理由は詳しくは語られませんでした。スタッフォード公爵は自身の急病が引き金となって反乱を決意し、キャヴェンディッシュ公爵は自分がロンディニウムを支配したいと思っていたからだと言われていましたが、本当にそれだけかと疑ってしまいます。なぜならこの反乱がテレシスがロンディニウムを手に入れる最初の一歩だったので、裏にサルカズがいたのではないかと勘繰ってしまうからです。今後続報が語られるかもしれないなと思いました。


3-3. 蒸気騎士が嵌った罠

 サルカズがロンディニウムに入ってきたあと、衝撃的な戦いが密かに行われていました。蒸気騎士が全滅した戦いです。
 前国王を処刑した際はロンディニウムから追い出されていた蒸気騎士たちですが、今度は全員がロンディニウムに呼び戻されました。おそらく、諸王の息がサルカズに盗まれそうになっているなどとウソをつかれたのではないかと思います。
 30人以上いた蒸気騎士を全員呼び戻すというのは並大抵のことではありません。公爵の誰かが独断で仕組もうとしても無理です。議会や多くの公爵達が関わった陰謀だと考えられます。
 また、諸王の墓の扉を開けるには鍵が必要です。この鍵は2本あり、1本はアスラン王室が、もう1本はドラコ王室が管理していました。アスランの鍵は前国王が亡くなった際にヴィーナに引き継がれるべきものでした。しかしおそらく議会が処刑の実行とともに手に入れたと思われるので、ヴィーナはこの鍵の存在を知りませんでした。
 議会は鍵を使って諸王の墓に侵入。そこに陣取った精鋭サルカズたちは、帰還してきた蒸気騎士を待ち構えていました。大激戦の末、蒸気騎士は全滅しました。サルカズや議会の狙いはあくまで蒸気騎士だったため、諸王の息はそのまま放置されました。4年後になってわかることですが、実は1人の蒸気騎士が生き残っていたため、その人が諸王の息を守り抜いたのかもしれません。
 議会や公爵たちが蒸気騎士を葬りたかった理由ははっきりとは語られませんでした。国王派の残党の戦力を削ぐためでしょうか。蒸気騎士は1人1人が強い忠誠心を持っているので、ヴィクトリアのためにならないような命令には従わなかったのかもしれません。そういう意味で公爵たちにとっては邪魔だったのかも。
 蒸気騎士がいなくなって一番喜ぶのはテレシスなのかなと思いました。ロンディニウムでサルカズに抗う戦力を大きく削ぐことができます。テレシスが巧妙に裏から手を回し、議会や公爵を操っていたと考えるのが自然に思われます。


4. 現在

4-1. テレシスの開戦準備

 時系列は現在へと到達します。テレシスは4年の期間を経て、ロンディニウムの外にいる公爵たちと全面戦争する準備を整えました。
 サルカズが行っていた準備はいろいろありますが、大きいのがザ・シャードの建設です。人為的に天災を起こす兵器で、これがあれば何十万の公爵軍に対しても甚大なダメージを与えることができます。
 ザ・シャードの建設に必要な資源はロンディニウム内の生産能力だけでは賄いきれません。主要な機能は掌握しているものの、ロンディニウムは大きい都市なのでサルカズはいまだに孤立無援です。彼らは秘密の補給ルートを作り、都市外からも物資の補給を受けています。
 開戦の準備が整うのに合わせて、ロンディニウムの外に出ていたサルカズの主力部隊も戻ってきました。現在、ロンディニウム内で活動している王庭は一部なので、他の王庭も戻ってくるということでしょう。
 迎え撃つ公爵たちの情報も出てきました。「闇散らす火花」の中では8人の公爵がロンディニウムに出撃しているという情報がありましたが、11章で名前が出てきたのは5人でした。
 ゴドズィン公爵は「闇散らす火花」の舞台であるカレドン市を治めている公爵です。サルカズ側から見ると、この人に動きは特に見られないとのことでした。
 ノーマンディー公爵は「遺塵の道を」でヴィンセント伯爵を招待した人物。鋼材の流れが怪しまれていました。武器を作っているのかもしれません。
 カスター公爵はアラデルの後ろ盾となっていた人物です。女性のようです。シルバーアッシュの回想秘録でもちょっとだけ出てきます。
 ウェリントン公爵は10章から名前が出始めた人物。11章では立ち絵が出てきました。「アイアンガード」や「鉄公爵」といった異名を持ち、他の公爵たちからも恐れられているようです。ターラー人でもあります。
 ウィンダミア公爵は(私が知る限り)初めて名前が出てきた人物。女帝の声と接触したり、選帝侯の大敵だと言われていたりと、リターニアと関係が深い人のようです。
 真正面から戦おうとすると、公爵の1人1人がサルカズにとっては強大な敵になります。しかしそれぞれがストーリー上でどのぐらいの役回りを演じることになるかは不透明です。全員を覚えておく必要はないのかもしれません。




4-2. キャサリン救出作戦

 開戦の構えをとるテレシスに対して、ロドスは補給ルートを潰しにかかります。工業区域に詳しいフェイストのおばあちゃんのキャサリンに会いに行くことにしました。
 ドクターたちが工場を訪れたタイミングで、サルカズ傭兵は内情を知りすぎた工員たちを処刑しようとしていました。キャサリンは驚くこともなく、淡々と自らの運命を受け入れようとしていました。
 キャサリンは自分が書き溜めてきたノートをフェイストに渡しました。そこにはサルカズの資源集積場所と思しき候補がメモされていました。ロドスは欲しい情報を手に入れたのです。
 ノートにはフェイストの父の話も書かれていました。父ハービーはとても優秀な工員だったのですが、26年前の国王の絞首刑に伴う公爵の横暴に抗議活動をして殺されました。いまのフェイストにそっくりだとキャサリンは言っていました。
 工員たちはキャサリンが処刑されようとしていることに気づき、サルカズ傭兵と戦う決意を固めます。ドクターはアスカロンと一緒に手を貸し、キャサリンの処刑を止めることに成功しました。
 拙い戦力でも処刑が止められた理由としては、サルカズ側も戦意の低い傭兵団だったことが挙げられます。貴重な正式軍の戦力はこちらに回せなかったのです。
 パプリカとキャサリンのやりとりは印象的でした。パプリカがグリンという仲間のために編んであげた指サックが巡り巡って彼女のもとへ返ってくることになりました。傭兵なのに人を殺したことのないパプリカが異質な存在として描かれていましたが、本来は人を殺した経験のある方が異常なわけなんですよね。
 このあと、パプリカたちの傭兵団は失敗をマンフレッドに咎められて処罰の対象になります。ドクターはパプリカを助けようとしてWに援助を求めようとしていました。その結果はパプリカのプロファイルやボイスでちらちらとわかるようになっています。12章で描かれることがあるかもしれません。



4-3. 防衛軍司令塔を狙え

 補給ルート潰しのため、ロドスはさらに情報を集めようとします。都市防衛軍の司令塔をハッキングし、交通記録をぶっこ抜いてしまおうという作戦です。
 この作戦には自救軍とロドスの多くの戦力が割かれました。都市防衛軍の本拠地を狙うわけですから、守備隊も多いですし、マンフレッドとブラッドブルードの大君が応戦してくることも予想されました。
 サルカズと公爵軍の開戦が目前に迫るいま、自救軍には公爵軍の支援に回るという選択肢もありました。ヴィクトリア人の手でヴィクトリアを取り戻すという意味では、彼らの狙いは一致しています。
 しかしクロヴィシアは自救軍は公爵に希望を託すことはないと言っていました。いままでの経緯を見ても公爵たちは信用できませんし、戦争で多くの人が死ぬのを待つよりは自分たちでできることをしようとしていました。
 ハッキング担当のクロージャを全力で支援する体制が組まれました。彼女が狙うのは直近10日間の都市交通の記録です。補給ルートを巧妙に隠したとしても、なんらか記録が残るだろうという読みです。
 ブラッドブルードの大君については、アーミヤ、Logos、アスカロンが協力して食い止めることになっていました。グラスゴーのメンバー、Misery、ホルン、Wなどは別行動をしています。

4-4. 諸王の息を欲しがった者

 グラスゴーのメンバーは別動隊として、諸王の息を手に入れるという任務にあたっていました。
 諸王の息はもともとアスラン王がヴィクトリアに攻め込んだときに使っていた剣ですが、その後何度も打ち直され、ヴィクトリアを守る国剣となりました。天災を引き裂くことができるという伝説が残っているのですが、これがどうやら真実らしく、ロドスはザ・シャードに対抗する武器としてこの剣を欲しがりました。
 2本あった諸王の墓の扉の鍵のうち、アスラン王室の鍵は蒸気騎士の殲滅作戦に使われて行方不明になっています。一方、エドワード・アルトリウスが持っていたドラコ王室の鍵は、彼の遺品としてウェイが保管していました。メインストーリー7章で、龍門を守ったケルシーはウェイから鍵をもらい受けました。これを使って諸王の墓へ入ることができました。
 ここでヴィーナたちは4年前に起きた蒸気騎士の滅亡を目の当たりにすることになります。塔楼騎士出身で騎士の礼儀を身に着けているダグザが追悼の儀式を行いました。
 11章の1つのクライマックスが、アラデルの裏切りだったかなと思います。ここに至るまでコソコソと顔の見えない相手とやりとりをする姿が描かれていましたが、後ろ盾となっていたカスター公爵からの指示を受け取っていたわけです。
 26年前に前国王と一緒に父親が亡くなり、カンバーランド家は危機的状況にありました。アラデルはそこからしばらく経ったあとにカスター公爵に連絡を取り、援助を受けることになりました。ミノス産の貴重な花の種が送られてきたのが初回の援助でした。
 もちろん、ただで援助が受けられるわけではありませんから、今回のようにカスター公爵のためにいろいろと動いてきたのだと思います。栄光あるカンバーランド家を自分の代で潰すわけにはいかないというプレッシャーもあったことでしょう。アラデルは定められた道を歩くしかなかったと表現していました。自分の意志が介在できない世界になってしまったのです。
 今回の作戦でカスター公爵はトターを雇い、アラデルの援護をさせます。2人は首尾よく諸王の息を手に入れられそうになるのですが、思わぬ邪魔が入りました。全滅していたと思われていた蒸気騎士の1人が動き出したのです。
 この蒸気騎士は自分が誰だったのか忘れてしまうぐらいには苦しい思いを味わってきました。自分が守るべきだった国王、議会、民衆すべてに裏切られ、最後は諸王の息を自分が守るべきヴィクトリアだと定義し、守り続けてきました。
 最後はアラデルが自身の使命を放棄し、ヴィーナたちを助けて蒸気騎士を封じる幕切れとなりました。蒸気騎士に憧れ続けた彼女が、最後はヴィクトリアを裏切って蒸気騎士に殺されてしまう…。なんとも皮肉の聞いた終わり方となりました。明確に描かれなかったので、アラデルと蒸気騎士の結末については予想外の展開が今後明かされる可能性もありますが。


4-5. 聴罪師の会合

 本筋から少し逸れた立ち位置で、聴罪師たちのストーリーが描かれました。
 シャイニングはリーダーに呼ばれて家に戻ってきました。聴罪師がなんなのかいままでよくわかっていなかったのですが、ここでの会話で見えてくるものがありました。
 聴罪師はサルカズの中で研究を担う人たちを指しているようでした。魔王についての研究や、人間の魂に関する研究を行っているようです。王立科学アカデミーと関係があるようで、ヴィクトリアの学術界との繋がりもありそうです。
 サルースという人物が新しく登場しました。亡くなった人の声をこの世にとどめる実験をしているらしいのですが、最近は上手くいかず行き詰っているようでした。魔王の力ならできてしまうのにとぼやいていました。
 聴罪師のリーダーは最近テレシスに構ってばかり。リーダーも研究が本分のようなのですが、実験室には全然足を踏み入れなくなってしまいました。代わりにテレシスの補佐のような仕事ばかりをこなしています。
 サルースから見ればテレシスの身分は特別なものではありません。血筋が良いわけでもなく、ましてや王庭でもありません。リーダーやシャイニングの血筋の方がよっぽど良いと言っていました。一方リーダーは逆の見方をしていました。血筋が邪魔をしないからこそ成し遂げられるものがあるのだというスタンスでした。
 シャイニングが聴罪師を抜けてロドスにいるのは、リズのためのようです。リズは聴罪師によって生み出された実験体。他の人から苦痛と記憶を引き継がれた人物であり、そのうち抜け殻になってしまう古ぼけた檻でしかないとサルースたちは言っていました。一体どんな残酷な実験を受けたことやら。
 シャイニングは自分の家族はリズしかいないとして、取り付く島もありませんでした。リーダーはそんなシャイニングのことを許し、一時的に離れる許可を出していました。許可を出すということは襲ったりはしないということですから、シャイニングはこの約束を取り付けるために戻ってきていたのかもしれません。
 リーダーはシャイニングのことを姉上と呼ぶのですが、シャイニングはリーダーのことを父上と呼ぶので噛み合いません。リーダーはそこそこ若そうな外見をしているため、見た目上は姉と弟の関係性の方が正しそうです。だとすると魂は父親が乗っ取っているということなのでしょうか…。恐ろしいですね。



4-6. サルカズ頂上決戦

 本筋に戻って、都市防衛軍の司令塔での戦いを見ていきます。
 アスカロン、Logos、アーミヤはテレジアの思想に共鳴してロドス陣営として戦っています。マンフレッドとブラッドブルードの大君とは、基本的に意見が合いません。
 アスカロンとマンフレッドは同世代のようでした。テレジアに戦闘を教わったアスカロンと、テレシスに戦闘を教わったマンフレッドの戦い方は異なっています。
 Logosは今回初めて立ち絵が出てきました。ロドスのエリートオペレーターではなく、バンシーの主としてロンディニウムに来たと言っていました。十王庭の一員としてなんらかのケジメをつけるつもりでいる様子で、ブラッドブルードの大君からは王庭自体を滅すつもりかと問われていました。古い世代のサルカズがのさばっているせいで、新しく生まれてくる者の可能性を奪っているのではないかと主張していました。
 Logosとの会話でブラッドブルードの大君は頭に血が上り、血の壁を生成して戦場を封鎖します。中にいる人たちにとってはピンチなのですが、マンフレッドたちも閉じ込められてしまい、クロージャのハッキングチャンスを作ることになりました。
 アーミヤはテレジアからの影響を受けて魔王の力が暴走します。テレジアはアーミヤにサルカズの魂の声を聞かせました。その中には200年前に起きた戦いでケルシーに故郷を滅ぼされた怒りの感情も混じっており、アーミヤは大きなショックを受けます。戦場にいるサルカズたちは魔王の力の干渉を受けていました。
 いまのテレジアの人格がどうなっていて、どういう思想で動いているのかはまだわかりません。


4-7. ケルシーの奮戦

 戦いの終着点をみていきます。
 クロージャはハッキングを成功させて、欲しかったデータの70%ぐらいを手に入れました。上々の戦果でしょう。ケルシーが食い止めていたはずのナハツェーラーの軍がロンディニウムに戻ってきてしまい、ハッキングは中止。ロドスと自救軍は撤退を余儀なくされました。
 ケルシーはもう片方のリッチは最期まで食い止められていたみたいです。テレシスは頑張って探しても痕跡すら見つからなかったと言っていましたが、そこはさすがケルシーといったところでしょうか。テレシスが見つけられていないのならリッチは参戦しないのではとも思うのですが、経緯は不明です。裏でケルシーが何をやっていたかはいずれ語られるのではないかと思います。
 マンフレッドからの信号を受信し、テレシスは自ら戦場に降り立ちました。彼の狙いは魔王の殺害。テレジアの干渉を受けて動けなくなっていたアーミヤを、フェイスト、ドクター、シャイニング、ケルシーが援護して撤退させました。シャイニングは聴罪師のリーダーに離れてよいと言われたので、ロドスのために剣を振るっていました。
 ケルシーはテレシスの剣で大きく負傷。テレシスは200年前の恨みをいま一度果たした形になりますが、ケルシーの不老不死性を知っているからか、あんまり嬉しそうではありませんでした。凄まじい勢いで斬られていたスチルがありましたが、あれでも無事なのだろうなと思われます。味方ではありますが、200年前の話もあり、ケルシー先生がどんどん不気味な存在になっていきます。
 

4-8. トレーダーズミルとターラー

 最後に描かれたストーリーが今後に繋がるお話でした。
 10章の最後にも出てきていたバグパイプのお話が少しだけ進展しました。9章でヴィクトリア軍の腐敗を痛感したバグパイプは、龍門を経由してロドスに来て、チェンと一緒にヴィクトリアに戻ってきました。トレーダーズミルで商業連合の副会長をしているヒューズのもとを訪れて、情報を得ようとします。
 ちょうど2人がヒューズの家にきたときに、アルモニも彼の家に来ていました。いまはタブリンの幹部をしていますが、もともとこの人も王立前衛学校の出身のため、感動的な同窓会になっちゃうところだったわと言っていました。
 ダブリンの「リーダー」はウェリントン公爵と一緒にいました。ウェリントンは「リーダー」のことをエブラナ殿下と呼びました。これが本名でしょうか。ロンディニウムでサルカズと公爵たちの決戦が始まろうとしているさなか、漁夫の利でターラーの時代を狙っているように見えます。
 妹のラフシニーの方は、9章で大けがを負ったので一度ロドス本艦に搬送されていたのですが、ヴィクトリア南部に戻ってきていました。ドクターたちに手紙を残し、事務所を後にしていました。おそらくロンディニウムに入ってくることになるのではないかと思います。


感想

 ここからはただの感想です。
 大局を見れば11章の内容はサルカズも公爵もロドスも準備をするだけのお話でした。しかしアラデルと蒸気騎士を中心に置いたドラマは見応え十分で、あっという間に読み終えてしまいました。本当に面白かったです。
 子供の頃の夢をあきらめて、つまらない大人になってしまったと自嘲するアラデル。立派な家を守るために公爵の言いなりになることを選び、自分の意志さえ通せない。そんな彼女の使命を打ち砕くのが、子供の頃に夢見た蒸気騎士だったとはなんたる皮肉か…。
 対比されるように輝かしく描かれたのはフェイストの姿でした。迷いながらも自分のやりたいことを貫き、周囲の協力を得て大切な人を救い出す。一歩踏み出す勇気が差を作ったと言われれば収まりが良いですが、アラデルに何ができたのだろうとも思ってしまいます。貴族に生まれても思い通りの人生はそこにはないのです。
 サルカズとはなんなのか、ケルシーとは何者なのかという謎を通じて、アークナイツの根幹がまた少しだけ垣間見れる形となりました。メインストーリーでは、こうやって少しずつ少しずつ真相に近づいているような気がするので、毎回更新が楽しみになります。



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【アークナイツ】ストーリー考察/感想 - 夕景に影ありて 編

 2023年3月31日開始のイベント「夕景に影ありて」のストーリーを整理していきます。

1. ニアール家の過去

1-1. 近年の三国関係

 「夕景に影ありて」のお話の背景には、カジミエーシュ・ウルサス・リターニアの三国関係と、時間経過による関係性の変化があります。
 ウルサスは強大な軍事力で領土を拡張してきた国です。多くの小国が飲み込まれてきたことは想像に難くないのですが、ウルサスと隣接しているにもかかわらず制圧されなかった国が現代に残っています。その代表格がカジミエーシュとリターニア。カジミエーシュは征戦騎士、リターニアは術師たちの活躍によってウルサスの侵攻を退けてきました。
 20~30年前まではこの三国は領土を巡って激しく戦ってきたのですが、近年になると落ち着きをみせています。ウルサスでは皇帝が変わり、対外的な侵略戦争をしなくなりました。リターニアは巫王から双子の女帝へと統治者が変わり、恐怖政治が和らぎました。それに伴いカジミエーシュでも征戦騎士の活躍の場が減り、競技騎士の華やかな活躍の方に注目が集まるようになりました。
 「マリア・ニアール」「赤松林」「ニアーライト」は騎士競技の光と影を描いた物語でした。対して「夕景に影ありて」は出番を失った征戦騎士たちの物語です。


1-2. ニアール家の家系

 次に主役となるニアール家の家系をみていきます。
 マーガレット姉妹の祖父であるキリルは伝説的な征戦騎士でした。対立が激しかったころの戦争の英雄です。
 キリルの子供がスニッツとムリナールです。スニッツは父の後を追いかけて征戦騎士になりましたが、ムリナールは騎士称号を保持したことはありません。スニッツは同じく征戦騎士のヨランタと結婚して子を設けましたが、突然失踪していまも行方不明になっています。
 スニッツ夫妻の子がマーガレットとマリアです。マーガレットも征戦騎士に誘われていたこともありましたが、2人の時代は騎士競技の全盛期。彼女たちは資本の欲望が渦巻く騎士競技の世界に飛び込んでいくことになりました。
 マーガレットとマリアが幼い頃にスニッツ夫妻は失踪してしまったため、2人は両親が死んだものと思って生きてきました。ムリナールは兄夫婦の失踪により自暴自棄になり、マーガレットはキリルの差配でカジミエーシュから追放されます。キリルが亡くなってしまっていよいよニアール家の存続が危ぶまれたところから始まるのが「マリア・ニアール」のお話でした。
 一方で、「夕景に影ありて」はムリナールにスポットライトを当てたお話だったと言えるでしょう。


1-3. 無光騎士の伝説

 騎士称号を持たないムリナールは何をしていたのか。
 彼は遊侠としてカジミエーシュの各地を転々としていました。騎士にならなかったとはいえ、偉大なるニアールの血を引く彼の戦闘能力は見事なもの。悪を倒し、弱きものに手を差し伸べていたようです。
 その中でも強烈なエピソードの1つが語られていました。敵国であるリターニアと裏で繋がっていたパレニスカ家という貴族がいました。監査会にバレて貴族称号を取り消されていたのですが、十数人の上級征戦騎士を集めて陰謀を企てていました。
 そんなパレニスカ家に単身乗り込んで、リターニアからきた術師もろとも全員皆殺しにしてしまったのがムリナールでした。彼の仕業だと知っている人は世間に少ないらしく、無光騎士の伝説として語り継がれています。彼は騎士称号を所持したことはないので、世間が勘違いしているのか、逆にそれを皮肉っているのか。
 パレニスカ家は全滅したかと思われたのですが、寄子の子供だったシチボルだけは見逃されました。カジミエーシュで言う寄子の解釈は難しいですが、血縁関係がないのではと考えられます。ムリナールが情けをかけたのでしょう。
 このあとムリナールとシチボルはともに戦うようになりました。



1-4. 兄弟の共闘

 スニッツとムリナールは戦場で活躍をしていました。
 この時代はまだ征戦騎士が敵国と戦争をしていた時代です。フォーゲルヴァイデもまだ現役でした。
 スニッツはキリルの息子として頭角を現し、この世代で最も優秀な将校と捉えられていました。ムリナールの戦闘能力も認められていたのですが、彼は遊侠として至る所でトラブルを起こすので、世間からはあまり良い目では見られていなかったようです。
 ムリナールは騎士ではないので、騎士ではない仲間とつるんでいました。その筆頭がトーランドでした。彼が率いる一隊は、ニアール家と仲の良い職人たちからはサルカズ騎士団と呼ばれ、ムリナールと一緒に活躍をしていたようです。
 スニッツはムリナールやトーランドのことを好意的に見ていたようで、対外戦争の作戦に組み込もうとしたのですが、他の騎士たちからは反発があったようです。
 このあとスニッツ夫妻が唐突に失踪してしまうまで、彼らの友好関係は続いていました。


1-5. 勤め人ムリナール

 スニッツ夫妻が失踪してしまったあと、ムリナールはサラリーマンになりました。
 当初はムリナールは必死に2人を捜索していたようですが、徐々に自暴自棄になり、遊侠をやめて企業の勤め人になりました。
 ムリナールが勤めていたのは中規模の建材会社でした。そこでの経験が、「夕景に影ありて」のゲイル工業とのパイプとなって活きています。
 いまから3年前、ゲイル工業が病院を建設するプロジェクトを立ち上げました。建材を供給する会社を決める際に入札コンペがあり、ムリナールの会社はウエストランド社と競合しました。
 ムリナールは業界の人間として、ウエストランド社の汚いやり口を知っていました。この会社はのちに建材の品質問題で起訴されるぐらい、手抜きを行う業者だったようです。そんなところに病院の建材を供給させるわけにはいかないとムリナールは義憤に駆られたようです。
 ゲイル工業からの入札を勝ち得るために、ムリナールは必死に営業を行いました。ゲイル工業の担当者一人一人と乾杯をするぐらいワインをがぶ飲みをする様子を、デーシュットが目撃したと言っていました。日本人っぽい泥臭い営業芸に胃が痛くなります。ムリナールはこういうこともできる人なのだなと驚きました。



1-6. セリーナを巡って

 大騎士領で勤め人をしていたムリナールのところに、シチボルが手紙を送ってきたことがありました。
 シチボルは征戦騎士になりました。ムリナールたちと一緒にいた時代に起きたことなのかはわかりませんでしたが、どこかの名のある権力者の恨みを買ってしまっていたらしく、その復讐が行われました。
 シチボルの愛する人だったセリーナが大騎士領に送られて、国民議会による裁判にかけられたのです。直接的な描写はありませんでしたが死刑になってしまったようでした。
 シチボルは征戦騎士として大騎士領からは遠く離れたところにいたので、ムリナールに助けを求めたのですが、ムリナールはその手紙を読んでも行動を起こしませんでした。国民議会の前で無罪を証明しても意味がないのだと。
 セリーナは他に13人と一緒に有罪判決を受けたと言われていました。この事件の詳細はあまり語られなかったので、セリーナがなぜ裁判にかけられたのか、ムリナールがなぜ動かなかったのかは別の真相があるのかもしれないと思ったりしました。
 この件でシチボルは世を恨み、ムリナールのことも個人的に恨むようになりました。無光騎士として自分を救ってくれた姿と、手紙を見て見ぬふりした姿は、あまりにもかけ離れていたことでしょう。


2. ズウォネクの事件

2-1. シチボルたちの企み

 「夕景に影ありて」の本筋は、シチボルの企みが徐々に明らかになっていくというミステリー的な要素のあるお話でした。
 シチボルが率いる征戦騎士団は過激な考えを持っています。三国の戦争が少なくなっていく中、征戦騎士が戦功をあげられる場所は極端に減っていました。自分たちの存在意義を守るため、リターニアとの戦争を起こそうとしていました。
 戦争を起こせる好機が巡ってきました。ズウォネクで行われる両国の友好記念式典に、リターニア側の使者としてディーロルフ伯爵がお目見えすることになったのです。式典の場で彼を殺せば一気に戦争ムードに突入することでしょう。
 ズウォネクはカジミエーシュ南部の国境線上の要塞。カジミエーシュの南にはヴィクトリアがありますが、この街はリターニアに対する防御を担っていたらしく南東寄りにあるものと思われます。ここに騎士の声という平和のためのオブジェを作ったので、落成式が執り行われようとしていました。
 征戦騎士団は戦争兵器です。何もない平和な街には基本的には入れません。ましてやリターニアからの使者がくるタイミングで街に近づくと怪しまれます。
 街に入る口実として使われたのが感染者でした。ゲイル工業に感染者を雇わせ、劣悪な労働環境で働かせます。感染者に暴動を起こさ、メディアが大々的に報じます。それを鎮圧するために仕方なく征戦騎士団がズウォネクに滞在しているという形にしたのですね。
 つまりこの事件のカギは、征戦騎士であるシチボルたちが何故かゲイル工業と繋がっているというところを見抜けるかどうかにありました。


2-2. デーシュット vs ハム

 一見すると関係のないように見えたデーシュットの仕事が実は大きな意味を持っていました。
 デーシュットはゲイル工業から依頼を受けた弁護士です。大騎士領にあるロングレイズという大手弁護士事務所に所属しています。ロックヴィル村の土地を巡った係争の解決を任されました。
 ゲイル工業と争っているのはロックヴィル村の村人たちです。彼らはカジミエーシュ農村紛争調停協会という非政府組織にSOSを出して、そこからハムという弁護士に依頼が出されました。
 なぜロックヴィル村の土地を巡って争いが起きていたのか。この土地は元々マレックという貴族が所持していました。マレックは7年前にゲイル工業にこの土地を担保に供していました。ゲイル工業に対して借金などの債務があり、保持している土地でそれを賄おうとしていたのです。ゲイル工業の認識ではこの土地は自分たちのものでした。
 しかしマレックはそのあとになって、ロックヴィル村の土地を村人たちに売却してしまっていました。村人は土地を購入するために大金を支払ったのです。
 最近になって、ゲイル工業がこの土地を開発して工場を建てようとしたタイミングでこの二重管理が明るみに出ました。マレックは病死しており、息子は征戦騎士として遠くにいるため連絡がつきません。
 順序から判断するに土地を正当に所持しているのはゲイル工業の方です。とはいえ、住人たちは財産も土地も失うことになってしまったら困ってしまいます。村人たちはハムを通して、ゲイル工業に対して立ち退き料を要求しました。その金額がハムとデーシュットの争点となりました。
 ハムは住人一世帯につき8万マルク、デーシュットはその100分の1の800マルクを提示し、双方が根拠を述べ合う展開となりました。ハムは土地の価値を根拠に組み立てていたのですが、デーシュットはそれを粉砕したあと、そもそもゲイル工業が村人にお金を払うのは社会的責任を果たす意味しかないですよというところで決着がつきました。経緯としてはゲイル工業は悪くないのです。
 ロックヴィル村には137世帯あり、それぞれに800マルクを支払うので総額は11万マルクほど。ゲイル工業はデーシュットに100万マルクを用意したので、残りの89万マルクは彼女の懐に入ることになりました。彼女の敏腕っぷりが描かれたエピソードとなりました。
 このお話には続きがあります。ハムは土地の価値を引き合いに出していたのですが、攻めるべきはそこではなく、ゲイル工業とマレックとの契約だったんだよとデーシュットは彼にレクチャーをしてあげていました。実はこの契約はマレックの息子のサインが入っていて、父が息子を代理に立てた証明がありません。父が病死した時点で相続は行われるので不当な所持とはならないのですが、契約の正統性を疑うことはできるのですね。
 この契約書をデーシュットはハムに渡し、これを証拠にして裁判を起こせば実績が手に入るとアドバイスをしました。彼が望むロングレイズ法律事務所への就職の足掛かりになるというわけです。デーシュットは根が優しい人物なのだなというお話でした。
 しかしさらにこの話には続きがあります。カジミエーシュ農村紛争調停協会というのは、トーランドたちが情報収集を行うためのお飾りの組織です。ハムを経由してこの契約書はトーランドのもとへ渡ることになりました。ゲイル工業と征戦騎士のマレックとの繋がりを示すヒントになったのです。


2-3. ゼノの救出

 次にボロが出たのが感染者の暴動でした。
 ゲイル工業に雇われた感染者は、ゼノという労働者を首謀者に暴動を起こしたとされていました。しかしこれはゲイル工業とゼノの間の取引だったのです。報酬を提示されたゼノは、都合のよい生贄として逮捕されました。
 最初にゼノに接触したのはソーナとグレイナティでした。感染者組織への接触の任務でズウォネクに来ていた2人でしたが、ゼノと偶然出会い、真犯人ではないはずだと救出を試みました。ゼノが犯行に及んだとされている時間帯に、2人と話していたのですね。
 ゼノにはゲイル工業との契約があるので逃げ出すわけにはいきません。それをムリナールが現れて解決してくれました。彼はゲイル工業の偉い人とのパイプがあるので、ゼノの告訴を取り下げてもうらように交渉したのです。
 とはいえゼノの安全を保障するのは難しい状態にあるため、ムリナールはトーランドを頼ることにしました。網結と呼ばれる感染者を経由して彼に直接コンタクトを取ろうとしたのです。


2-4. シェブチック親子

 ズウォネクの騒動にはシェブチック親子も巻き込まれてしまいました。
 ディーロルフ伯爵はズウォネクに到着したあと、カジミエーシュ側の手厚いもてなしを受けていました。シチボルたちは伯爵を殺すチャンスを伺っていましたが、街中でそのチャンスはありません。
 伯爵は自分がリターニアの街を治めるにあたっての参考にするために、ズウォネク郊外の貧困区画をお忍びで見に行くことにしました。ここでなら殺せるかもしれないということでシチボルたちは爆弾で襲撃をかけますが失敗。代わりにここで遊んでいた子供たちが巻き込まれてしまいます。その中にシェブチックの息子もいました。
 ディーロルフ伯爵はケガをした子供を見て見ぬふりをしたのですが、ムリナールが助けてくれました。2人が合流したあと、シチボルが仕掛けた2つ目のワナが発動します。カジミエーシュの軍部のウソの機密情報が流れている通信機を仕掛け、伯爵がそれを盗み聞きした構図を作り、カジミエーシュが外交上の主導権を握るための材料にしようとしたのです。
 ディーロルフ伯爵はこれに動揺。さらに現場にはシェブチックも乗り込んできてしまったので、ムリナールは伯爵を逃してしまいました。
 そのあとゼノの引き渡しでトーランドと合流し、何が起きているのかを大体把握した2人は、シチボルを阻止すべく動き出します。


2-5. ムリナール vs シチボル

 ムリナールは直接シチボルに会いに行きました。彼がすべての希望を戦争に賭けるのを見ていられないということで。
 シチボルの企みは監査会にもバレていました。大騎士領からは遠く離れているのに、大騎士長ラッセルの署名入りの帰還命令が届き、事件を起こそうとしていた征戦騎士のメンバーの多くは我に返りました。ムリナールは監査会とのパイプを持っていないので、監査会が動いていることは知りませんでした。
 シチボルは自分に従わなかった部下を殺し、ディーロルフ伯爵の暗殺計画を進めようとします。そんな中でのムリナールの来訪でした。彼は絶望したでしょうね。ムリナールもシチボルが向かってこないなら殺すつもりはなかったと言っていましたが、シチボルが勇敢に立ち向かってきたため、殺さざるをえませんでした。
 シチボルは最期に、スニッツのことを語りました。スニッツがムリナールに最後に手紙を送ってきたのが20年前。彼の失踪後、監査会は15年間に渡って口をつぐんでいるそうですが、シチボルは数年前にリターニアで彼に会ったといっていました。異国の地でスニッツは何年も待っていたのだと。
 スニッツは雪国のことを手紙に書いてきたこともあったらしく、ウルサスに行ってしまったと思われていました。しかしこの証言によるとスニッツ夫妻はリターニアにいたことになります。なんらかの事件や陰謀に巻き込まれ、連絡も取れない状態になっているということなのでしょうか。
 ここまで明確に謎として描かれているわけなので、今後どこかのイベントで真相が語られることがあると思います。どんな事実が我々とムリナールを待ち受けているのか、想像もつきません。



2-6. トーランドの活躍

 ディーロルフ伯爵の命はトーランドによって守られました。
 爆破事件で危険を感じた伯爵は、式典を待たずしてリターニアに帰ろうとしました。しかしズウォネクから出る際の検査場の職員は征戦騎士の手の者が入り込んでいて、射手による襲撃を受けました。
 トーランドは襲撃者を撃退し、街から安全に離れる方法を用意します。それが薬品の輸送車両に載せること。ソーナたちが提供してくれたロドスの通行許可証を使って無事に街の外にでることができました。護衛をしていたアロイシアは優秀な術師なので、敵の注意を引きつつ1人で離脱しました。
 トーランドはムリナールから依頼を受けて伯爵を助けました。ムリナールが報酬を払ってくれるわけではないので、伯爵にお金を要求していました。伯爵側からしてもタダで助けてもらえる理由はわかるわけないので、金づるにするというのはわかりやすい構図だったはず。
 トーランドはサルカズですがツノを削って隠しているため、種族がバレにくい人です。しかしディーロルフ伯爵はすぐにそれを見抜いていて、人を見る目があるのだなという描写になっていました。
 ソーナたちからトーランドはロドスの招待状をもらっていたのですが、それをムリナールに渡したので彼がロドスに来ることになったようです。デーシュットはムリナールもロドスにきたことを知らなかったっぽいので、タイミングは別だった様子。
 というわけでスニッツ夫妻の行方は今回も分からぬままストーリーは終了となりました。「未完の断章」ではクロガネの正体も謎のままでしたし、カジミエーシュを巡るお話は今後も続いてくことになりそうです。




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【アークナイツ】ストーリー考察/感想 - 翠玉の夢 編

 2023年3月14日開始のイベント「翠玉の夢」のストーリーを整理していきます。

1.ライン生命の基礎知識

 背景知識として、ライン生命の過去の話を時系列順に整理していきます。

1-1. ライン生命の10課

 ライン生命の創立の話から始めます。
 15年前、トリマウンツは単なる荒れ地でした。空を飛ぶ翼を研究していたライト夫妻のもとに生まれたクリステン・ライトは純粋無垢な科学の天才。亡くなった両親の意志を引き継ぎ、研究に打ち込みます。そのころのクルビアの科学界はお金と名誉ばかり追い求めるひとばかり。トリマウンツ工科大学の同級生だったサリアとともにライン生命を立ち上げて、天災も鉱石病もまとめて消してしまおうとメンバーを集めました。
 一番の古株はパルヴィスとミュルジスだったと言われています。少ししてフェルディナンドが加わりました。彼は資金を集めるのが非常に上手だったため、ライン生命は急速に成長を遂げました。
 いまでは科学研究科が5つと事務課が4つ、そしてすべてを束ねるコンポーネント統括課という構造になっています。日本語の感覚で言うと「主任」がトップにつく「課」というと事業部の中の小さな一機能に感じますが、「主任」はDirector、「課」はSectionと英訳されるため、「本部長」が導く「事業本部」のような規模感なのだろうと思われます。
 一番最近設立されたのが今回の主役、ドロシー率いるアーツ応用課でした。

1-2. ローキャン水槽ラボの終焉

 クルビア科学界の歴史を語る上ではローキャン水槽ラボが外せません。
 ローキャン・ウィリアムズはケルシーもが認める天才科学者。天才ではあるものの無感情で残虐非道。ケルシーはローキャンの師匠とともに彼を学会から追放して、残虐な実験をやめさせようとしました。しかし資金調達に困った彼は、注目を集められる実験結果を求めてロスモンティスに魔の手を伸ばしました。
 脳に人造の感染機関を埋め込み、アーツユニットに頼らない、そして鉱石病に侵されることもない感染者術師を作るのが彼のプロジェクトの目標でした。ローキャンはそれをやり遂げてしまったのですが、可哀そうなロスモンティスは自らの力を制御できず、ローキャン水槽ラボは天災に踏みつぶされたように崩壊しました。
 ロスモンティスはマイレンダー児童基金という団体に保護され、クルビア国外へと輸送されました。数奇な巡り合わせでロスモンティスはケルシーのもとへとやってきて、ロドスで治療と訓練を受けることになりました。
 マイレンダーはいままで名前だけが出ていた組織です。ロスモンティスを助けてくれはしましたが、実験個体の生死は問わないとされていて、それ以上の情報はありませんでした。「翠玉の夢」ではマイレンダーの代表ホルハイヤが出てきましたが、彼女がロスモンティスにどのくらい関わっていたかはわかりませんでした。
 ロスモンティスに破壊されたローキャン水槽ラボは、クルビアの多くの科学企業にとって宝の山でした。天才ローキャンが提唱した最先端の理論や、非道な人体実験で得た興味深いデータが眠っていたのでしょうね。ライン生命も秘密裏に情報を掘り起こしていたと言われていました。

1-3. サイレンスと9号デバイス

 サイレンスがライン生命に入社したタイミングがこのへんにくるはずです。
 サイレンスはライン生命の巡回展を見てこの会社に憧れ、猛勉強の末に採用試験をパスしました。その後不慮の事故で感染者になってしまうのですが、構造課主任のパルヴィスに才能を認められて無事入社することができました。サイレンスはパルヴィスに非常に感謝をしています。
 構造課で最初に担当する業務を決める際に、サイレンスが選んだのがジョイスの治療でした。2人は患者と主治医という関係ですが、同時に友情も育んでいきます。
 ジョイスは友人のダラレイドの実験の被験者になりました。実験の過程で彼女は脳に損傷を負い、脳の機能を補佐するために9号デバイスというチップを脳に直接埋め込まれました。
 超人的な計算能力などを得たのですが、副作用に苦しんでいます。機械的な喋り方をしたり、夢を見るせいでまともに寝ることができず、日中に突然眠り込んだりしてしまいます。
 9号デバイスは基礎理論すら固まっていなかった段階だったのですが、ダラレイドになんらかの圧力がかけられ、実験が進められたようでした。
 源石にはこの大地の情報が保存されている、というのがダラレイドの持論でした。9号デバイスはそれに近づくようなものだったのかもしれません。ダラレイドはジョイスの後を追って自分にも同じ実験を施そうとして亡くなったようです。
 パルヴィスは優秀な研究員だったジョイスの復帰を願っています。サイレンスはジョイスの治療において功績をあげてパルヴィスの信頼を得ました。

1-4. 炎魔計画

 サイレンスが構造課で活躍していたとき、炎魔事件が起こりました。まずはプロジェクトの計画部分から。
 発端はクルビア国防部。アメリカの国防総省のようなイメージでしょう。彼らは炎魔の力を軍事利用できないか検討をしていました。クルビアを守るための軍事力を求めていたのだと思われます。
 炎魔というのは滅びてしまった古代サルカズの一族です。その名の通り炎を操り、王宮に仕えた王庭炎魔は特に力が強かったのだとか。彼らの遺体から採集した炎魔のかけらを用いて、炎魔を現代に蘇らせようとしていました。
 炎魔のかけらを扱うには大規模な設備が必要のため、クルビア国防部はライン生命に発注を出しました。しかしリスクの大きいプロジェクトに直接関わりたくないライン生命は、ハイドン製薬という小さな会社の株式を操作して制御下に置き、この実験を外注しました。
 ハイドン製薬が担当したのは初期実験のみだったのことでしたが、その実験をイフリータは耐え抜きます。彼女の暴走によってハイドン製薬は消し炭になり、社長も死亡。サリアが駆けつけてイフリータはライン生命に運び込まれました。
 イフリータが構造課のパルヴィスのもとに来たのは偶然ではなかったはずです。パルヴィスは源石を人体に埋め込むことで体内の源石を吸着して鉱石病を治療する源石嵌合という技術を研究していたのですが、その埋め込む源石を炎魔のかけらにすり替えることで、炎魔を誕生させようとしていたのでしょう。その治療を担当したのは何も知らされていなかったサイレンスでした。
 パルヴィスの実験は事実上イフリータへの人体実験でした。サリアはイフリータとライン生命そのものを守るために、この実験に介入を行います。しかし課の権限を越えた行為にパルヴィスも反発し、統括の決済を仰ぐことになりました。
 クリステンは両者の言い分を聞きましたが、イフリータの治療が進んでいること、パルヴィスの実験が悪影響を及ぼしている直接的証拠がないことを理由に、サリアの提案を却下しました。証拠がないなら探究するのが正しい姿勢だと。

1-5. 炎魔事件の集結

 最終的に炎魔計画は、炎魔事件としてライン生命を揺るがしました。
 統括にハイドン製薬の深追いをやめろと言われたサリアとミュルジスですが、真相の解明を諦めきれません。ミュルジスのツテで正義の組織と噂されていた謎の集団にコンタクトをとり、ついにブリキの男のアジトまでたどり着きました。
 ブリキの男に告げられて初めて、サリアとミュルジスはライン生命の関与を知ります。統括からの圧力も、パルヴィスの実験も怪しく見えてきます。
 そんなとき、イフリータが暴走したという連絡がサリアのもとに入ります。サイレンスがイフリータを逃がそうとして、自らが調合した眠獣の毒素の麻酔薬で心肺停止の状態にさせたのですが、それが炎魔化のトリガーになってしまいました。
 サリアは暴走したイフリータを殺すしかないと刃を振り上げるのですが、イフリータは正気に戻り、サイレンスが止めに入って事なきを得ました。サイレンスが薬を盛ったイチゴのアメを、イフリータは半分しか食べていなかったからです。サリアへのプレゼントにしようと。
 サリアはクリステンに目を覚ますよう最後の説得に出向いたのですが、暴力による実力行使でも交渉は決裂。サリアはライン生命の外からこの会社を正そうと退社を告げます。「翠玉の夢」で統括の部屋の天井に穴が開いたけれど、本人には傷一つ付かなかったと言われていた逸話は、オリジニウムレコードで戦闘シーンとして描かれていました。
 また、イフリータの治療がロドスに移された経緯もオリジニウムレコードで描かれていました。ミュルジスからのヒントでロドスを知ったサイレンスは、ライン生命とロドスが協定を結ぶ許可をパルヴィスおよびクリステンから取り付けました。パルヴィスはイフリータに死なれたら困るから、逆にクリステンはどうでもいいと思っていたから許可が出ました。
 サイレンスは自らの正義感ゆえに過酷な道のりを歩いていくことになります。パルヴィスは教え子に裏切られた形なのですが、いまだにサイレンスの能力と野心には期待を寄せています。サイレンスは研究者として類まれな素質を持っているのです。
 サイレンスはサリアの行いを許していません。勘違いをしているわけではなく、サリアの考えを理解した上で、もっと別のやり方があっただろうと怒っているわけです。イフリータを守りたいという共通の想いがあるにも関わず、2人の間柄が険悪な理由がこれです。



2.イベント時系列

 ドロシーを中心としたイベントの時系列を見ていきます。

2-1. ドロシーの実験

 ドロシーはなぜ例の実験を始めることになったのか。
 359号基地はトリマウンツから100kmほど離れた荒れ地に建設された基地です。ここでドロシーは従来のアーツユニット代わる新技術の研究を行っていました。
 この研究の着想はドロシーの過去から来ています。開拓者の娘だったドロシーには溢れんばかりの才能がありました。大学のサマーキャンプに参加したとき、開拓地にいた母親は天災に飲み込まれ死亡。すべての人は才能のあるなしに関わらず平等に生きられるべきだという思想を抱くようになります。
 彼女はローキャンの理論に感化されます。服役中のローキャンに直接会いに行くほど。そこで実験の理論が固められていったのだと思います。フェルディナンドも、この成果をもたらしたのはドロシーの感情のおかげだったと言っています。
 エネルギー課がこの実験に協力していたのは、表向きは伝達物質の開発を担当していたからという理由でした。本当の理由はフェルディナンドの個人的な思惑によるもので、クルビア軍の「大佐」に取り入るためでした。ドロシーの実験を「大佐」は兵器として期待していました。フェルディナンドがクルビア軍に提供すれば、彼をライン生命の次期統括として後ろ盾になってやるという取引があったのです。
 フェルディナンドはエネルギー課としてエレナをドロシーのアシスタントにつけます。実験に協力しているので不自然ではないのですが、彼にはドロシーの監視が必要だったのですね。


2-2. ミュルジスのSOS

 フェルディナンドの不審な動きをミュルジスが嗅ぎつけました。
 ミュルジスはクリステンのお気に入りにして一番の支持者。クリステンが行方不明になってしまい、ミュルジスは居場所を調査していました。実はフェルディナンドがクリステンを本社に閉じ込めていただけなので、案外近くにいたのですが。
 ミュルジスはフェルディナンドが何か企んでいることを掴んでいたはずです。「大佐」に肉薄したことも書かれていました。
 しかしフェルディナンドの部下とホルハイヤに追撃され、ミュルジスは不覚を取ります。彼女は水分子を操って分身を作り出せるのですが、術者と水分子の繋がりを断ち切れるホルハイヤの方が一枚上手でした。
 ホルハイヤはミュルジスの正体を知っているようでした。エルフの血で若さを保っていると言っていたので、ミュルジスはエルフであり、実はかなり年齢を重ねているということになります。彼女は種族不明で、耳が横に長いのでエルフと言われても納得感はあります。
 ホルハイヤはフェルディナンドと一時的なパートナー関係にあると言っていました。利害が一致していたようですが、ライン生命の内輪揉めには興味がないとのこと。
 ミュルジスはサリアと合流する予定だったのですが、ホルハイヤに連行されてしまいSOSを発します。ミュルジスがやられてしまうというのは緊急事態。サリアはドクターに助けを求めました。自分一人ではさすがに手に負えないと判断したのでしょう。
 ドクターはエリートオペレーターのMechanistと一緒にトリマウンツにやってきました。Mechanistも元々クルビアで研究をしていたような口ぶりだったので、適任だと判断されたようです。


2-3. 359号基地と開拓隊

 359号基地にはライン生命を手伝う開拓隊がいました。
 開拓隊のサニーはドロシーの実験の正体に気づいてしまいます。開拓隊のメンバーがドロシーに連れていかれて帰ってこないことを不審に思っていたところ、後述する銀色の液体を覗き見てしまったのですね。
 サニーは開拓隊の仲間を救うべくドロシーを倒そうとしました。エレナとジョイスを誘拐して騒ぎを起こし、ドロシーに会おうとしました。これに対し、ジョイスと合流予定だったサイレンス&グレイと、サニーの幼馴染の保安官メアリーが説得に当たりました。
 フェルディナンドは警備課と保安局を支配下に置き、開拓隊の反乱を鎮めようとしました。彼にとっても大事な実験なのです。外部要因による失敗は許されません。
 天才科学者の集団であるライン生命の人たちは、たとえ感染者になっても前を向いて生きていくことができます。一方でクルビアの開拓隊の人々にとって鉱石病は絶望そのもの。悲しいですがそれはお互いがわかっていること。そこで活躍したのがグレイでした。彼は感染者として辛い思いをしたことがあるので、開拓隊と腹を割って話ができました。


2-4. 銀色の液体とは何か

 359号基地のサイレンスたちと、トリマウンツのドクターたちは同じような時間帯に銀色の液体に出くわします。
 まずは359号基地から。ドロシーが行っていた実験は、銀色の液体を使って大人数の被験者の意識をコアに接続するものでした。ドロシーは被験者たちにチャンスを提示し、この実験の同意をとったうえで、彼らの意識を預かりました。
 銀色の液体は被験者たちに操られ、開拓隊を襲いました。ドロシーは359号基地にいた人々をラボの中へと招き入れて助けます。サニーはドロシーがこの液体と意思疎通を行っている様子を見かけてしまったので、彼女を疑っていたわけです。一方のエレナは被験者がこんなふうになっているとは知らなかったため困惑していました。
 同じころ、ドクターとMechanistはサリアからのメッセージを受け取り、彼女と合流しました。フィリオプシスに埋め込まれた9号デバイスを経由して359号基地側の状況もある程度は把握をしていました。
 ドクターたちはパワードスーツに襲われたのですが、Mechanistが無人機だと気づけないほどの操作が行われていました。それを実現していたのも銀色の液体です。これが神経伝達物質となって遠隔操作を実現していたのです。
 サリアはミュルジスと統括の行方を追っているのですが、この銀色の液体を開発して利用しているのは誰か引っかかっていました。

2-5. 酔っぱらった男の残した情報

 "酔っぱらった男"という人物がカギを握っていました。
 サリアは再びブリキの男から情報を得てこの男の居場所を突き止めました。サリアがバーで酔っぱらった男に銀色の液体を突き付けたところ、彼は自分の手術台で死んだ亡霊が戻ってきたのだと言っていました。
 元々この人はローキャンの元で執刀医として働いていた人物です。銀色の液体はローキャンの発明品で、ドロシーやフェルディナンドは巡り巡ってローキャン水槽ラボの遺産を利用していたにすぎないのかもしれません。ドロシーがローキャンに助けを求めていたのも道理かなと。
 酔っぱらった男はサリアに真相を白状しそうになるのですが、口封じにホルハイヤがやってきてしまいました。彼女はローキャン水槽ラボに投資をしていただけでなく、研究内容にも関わっていたかのような口ぶりでした。酔っぱらった男はローキャンに右手を実験台として差し出し、彼女たちに身体データを提供していました。執刀医なのにモルモットにされていたわけです。
 彼は苦しまずに自殺できるように、自分の歯に細工をして薬品を入れていました。ホルハイヤを見てその細工を発動させていたので、彼女のこともよっぽど恐れているに違いありません。サリアに救命措置をされて命は助かったようでした。
 サリアはホルハイヤに戦闘を挑みます。ホルハイヤ側としても銀色の液体をこれ以上は探られたくない様子でした。サリアのアーツと拳はホルハイヤに届いたかのように見えたのですが、何らかの技術でホルハイヤは空気中の成分を変化できるらしく、逃げられてしまいました。
 彼女を追いかけて行った路地で、ついにサリアはミュルジスを見つけます。ホルハイヤによってパワードスーツに押し込まれていました。ドクターが気づいていなければサリアがミュルジスを殺してしまったかもしれず、ホルハイヤの残虐さが際立つ描写となりました。


2-6. クリステンの居場所

 サリアとミュルジスは統括の行方に気づき、ドクターを連れて会いにいくことになりました。
 普段は全然オフィスにいないクリステンがオフィスにいるとは誰も思わないだろう。フェルディナンドはそんな思い込みを利用してクリステンを閉じ込めました。彼女自身は研究が捗ったと言っていて、フェルディナンドの企みなど気にもとめていない様子でした。
 サリアとクリステンは1497日ぶりの再会。炎魔事件の集結から大体4年が経過していることがわかります。最後に大喧嘩したときから、サリアはアーツの出力方法を変えました。彼女のアーツをただ一人見破ったクリステンのために。
 サリアとドクターはフェルディナンドの企みを止めたいということで思惑が一致していました。359号基地の実験は、ライン生命に危険をもたらしますし、ロドスのオペレーターの身も脅かします。
 サリアの調査とフィリオプシスの9号デバイスのおかげで、ロドスが359号基地の情報を持っていることがクリステンとの交渉の切り札になります。クリステン個人ではなくライン生命という会社を脅すネタに使えるわけです。他の勢力に渡せば喜んでライン生命への攻撃の材料にするでしょう。
 一方、ミュルジスの立場は不透明でした。彼女はサリアに協力してくれていましたが、忠誠を誓っているのはクリステンです。わざと警備課を呼び寄せたりと時間稼ぎをしていて、ドクターに真意を尋ねられても誤魔化していました。おそらくは彼女の身体を流れるエルフの血に関わっているような気がするのですが、「翠玉の夢」の中では狙いがわかりませんでした。
 もう1人狡猾に立ちまわっていたのがパルヴィスでした。統括の座を狙うフェルディナンドがクリステンに勝てるのかどうか慎重に見極めようとしていました。


2-7. 「覚醒」との戦い

 359号基地の実験は最終段階に入り、「覚醒」が顕現しました。
 ドロシーは「覚醒」を呼び出そうとはしていなかったので、フェルディナンド側がスイッチを握っていたものと思われます。ドローンによる攻撃も加えて、359号基地の何もかもを破壊して証拠隠滅を図ろうとしていました。被験者たち数十人で1人の術師となって操られているわけで、「覚醒」が持つ力は非常に強力です。
 「覚醒」は被験者たちの精神と繋がっています。ジョイスは9号デバイスで感情を受信することができていました。サイレンスとグレイと協力し、彼らはドクターのもとへとデータの送信に成功します。これで統括を動かす材料が増えたわけです。
 ドロシーは実験の成功を願ってこれまで研究をしていたわけなのですが、自分の真意に気づきます。彼女は辛い目に遭っている人たちを救済するために研究を行っていました。愛する人々と話がしたいと考え、ドロシーは自ら意識を「覚醒」へ接続させました。
 359号基地の実験のすべてを握っていたのはドロシーです。メインコアの位置は彼女しか知りません。「覚醒」を精神世界から操り、メインコアを破壊させることに成功しました。
 エレナはフェルディナンドと対面して、彼の本性を理解しました。フェルディナンドは一概にクズ野郎と切り捨てられる人でもなく、エレナの複雑な想いも表現されていました。失敗を乗り越えてエレナも成長していけるでしょう。
 事件後、サニーのもとには「Dなんとか」という人物からメールが届いていました。自分のもとで働かないかと。これはたぶんDijkstraのことだったのかなと思います。新生レユニオンで感染者のために戦っている人なので、感染者集団である開拓隊に声をかけるのも頷けるかなと。サニーもまたどこかで出てきてくれそうです。


2-8. フェルディナンドの末路

 フェルディナンドの末路について。
 サリアとドクターはクリステンを動かすことに成功しました。クリステンはフェルディナンドに電話をかけて自首を促したのです。つまり、統括としてこの事件の首謀者をフェルディナンドに指名し、断罪する意志を伝えたのですね。
 クリステンはサリアがまたライン生命を救ってくれたと評していました。クリステンが炎魔事件の二の舞を踏みそうになったわけですから、サリアは怒っていたでしょうが、丸く収まって良かったです。
 秘密の退路から逃げようとしたフェルディナンドを待っていたのはホルハイヤでした。フェルディナンドはようやく彼女がただ者ではないことに気づいた様子でした。クルビア軍に情報を流したのもおそらくホルハイヤだったのだろうという描かれ方をしていました。副大統領と直接電話をするぐらいなので、相当上の人と繋がっているのだなと。
 フェルディナンドが助かった可能性は限りなくゼロに近そうだなと思いつつ、明確に終わりを描かないのもアークナイツらしいなと思いました。


2-9. ホルハイヤの正体

 「翠玉の夢」はホルハイヤという人物に振り回されっぱなしのイベントだったなと思います。
 最終的にホルハイヤはクリステンと面会をしていました。クリステンはフェルディナンドを野放しにするフリをして、彼を利用して359号基地の実験を進めようとしていたのではないか。実験の中核部分をクリステンが回収したことを知っているホルハイヤはそのように指摘をしていました。お互い底が見えない人物です。
 ホルハイヤはクルビア占星術研究協会の名誉会長だと自分の立場を明かしていました。マイレンダーの代表というのも相当な地位だと思うのですが、占星術協会も絡んできてしまったので、何が何やらという感じです。
 アステシアとエレナの姉妹の一族は占星術の名門であり、クルビア国内で影響力のある地位を占めています。クルビアにおける占星術は一定以上の価値を持った学問と考えられるのです。
 クリステン・ライトが空に憧れ星を見上げていること、フィリオプシスが9号デバイスを通じて星空を見ていたこと、そしてホルハイヤが占星術に通じていること。クルビアとライン生命を巡るお話は科学の国のお話なのかと思ったのですが、もしかしたら道の果てにあるのは宇宙の神秘なのかもしれません。





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【アズレン】イベントストーリー考察:星霜海嵐 編【アズールレーン】

 2023年3月23日開始のイベント「星霜海嵐」のストーリーを整理していきます。

1.作戦の全容

 どんな作戦だったかを簡単にまとめていきます。
 きっかけは鉄血がコンパイラーの主機を撃破したことでした。コンパイラーはセイレーンの実験施設や量産型の調整を担当していて、他の戦闘要員のセイレーンに後方支援を提供していた個体です。ヤツがいなくなったことは、実は様々なところで戦況に変化をもたらしていたのです。
 これを好機と見たのが北方連合でした。コードGが開いた王冠の特異点を守るために、北極付近にはオミッターがずっと居座っています。そのせいで、北方連合はオミッターやその取り巻きのセイレーンに戦力を割かなくてはいけない状態が続いていました。それを打破するチャンスを伺っていたのです。
 今回の作戦「極海の嵐」はオミッターの主機の破壊は目的ではありません。それを達成するための足場を固めるための作戦でした。5つの分隊と、1つの隠密部隊からなる全6艦隊が出撃する大規模な作戦でした。
 クイビシェフ、タリン、キーロフが受け持っていたのが足場を固めるための作戦行動です。電磁ジャミングの除去、調査基地の再制圧、気象制御装置の破壊を行うことで、オミッターの要塞の防御力が低下します。
 上記を行おうとするとオミッターが邪魔してくることが想定されます。ロシヤとベラルーシアはオミッターと戦闘する構えを見せて牽制します。ガングートなどは本気でオミッターの主機を撃破してやろうと意気込んでいましたが、さすがに北方連合だけで主機を追い込めるほどセイレーンの上位個体は弱くはありません。ソユーズも彼我の力関係はわかっていました。
 隠密行動をする6艦隊目は、オミッターの主機の位置を探るという重要な任務を預かっていました。手がかりは多くはないので、勘に優れたクルスクが旗艦を務めていました。


2.蒼龍METAの出現

 クルスク隊は蒼龍METAに遭遇しました。
 ソユーズからはオーロラを重点的に調べるように言われていました。セイレーンは磁気を操作できるらしいという話だったので、磁気の変化によって生じるオーロラは目印になると考えたのです。
 クルスク隊は「曙光」という装置を使用していました。さらっと登場したのですが、これにはけっこう驚きました。アンジュ博士とオースタ博士がいる世界線で使われていた装置で、指揮官がいる世界線では登場したことがなく、その役割も不明だったからです。

 ヴォロシーロフ曰く、「曙光」はエネルギーの流れを検出する装置だそうです。用途が広そうですね。これは指揮官が回収した資料をもとに作られたと言われていました。「暁射す氷華の嵐」で指揮官が海底遺跡を探索した際に回収したものと思われます。
 クルスク隊は「曙光」を使ってとある座標を追跡していました。大きなエネルギーの流れを追跡することでオミッターの主機を探していたと思うのですが、別のものに照準が当たっていたようです。座標は10分ごとにあちこち動いていました。オミッターの主機ならそんなにいろんなところに動くことはないでしょうから、クルスクたちは怪しんでいました。
 追跡の途中、セイレーンの量産型の残骸を発見します。これにより動く座標の正体がMETAなのではないかという予想がつきました。最終的に遭遇したのは蒼龍METAでした。
 不思議なことに、蒼龍METAは飛龍の「駒」と一緒に行動していました。飛龍METAではないというのがポイントです。「駒」はKAN-SENの情報をもとにした、人格を持たないコピー品にすぎません。
 そもそも、蒼龍METAは「照らす螺旋の鏡海」でユニオン海域に出現した際、META化が進行しすぎてコミュニケーションが取れない状態に陥っていました。

 META KAN-SENたちはコードGを中心とした「余燼」と、ヘレナMETAやヨークタウンMETAを中心とした派閥に分かれています。蒼龍METAはそのどちらからも見放された存在だと考えられていました。そんな彼女が飛龍の「駒」と一緒にいるというのは、事情はわかりませんが哀しみの匂いがします。自我を失ってしまっても、最愛の妹の雰囲気だけは感じるということなのでしょうか。
 蒼龍METAがどのような状態にあるかは結局分からず仕舞いでした。しかし、どのような状態だったとしても彼女の戦闘能力は健在のようでした。クルスク、セヴァストポリ、ヴォロシーロフの3人では勝てないだろうと判断して一時撤退を決断。オミッターと蒼龍METAをぶつけることはできないか画策しました。


3.連絡の途絶

 しかし蒼龍METAどころではない事態が発生して、彼女の行く先はうやむやになってしまいました。
 突然ソユーズから広域通信で作戦の中止が呼びかけられました。北極海の艦隊同士では通信ができるのですが、それ以外とは全く通信ができない状態になってしまったのです。何が起きたのかは結局わからず仕舞いでした。
 西エウロパにある拠点には一切繋がらなくなったと言っていました。北方連合が狙い撃ちにされたのか、エウロパ全体を揺るがす大事件が起きたのか、どのぐらいの規模の障害なのかもよくわかりません。指揮官にも通信が繋がらないと言われていました。
 北極海の艦隊は群島基地で合流することにしたようです。北極のあたりには島が多いので、群島がどのへんを指しているのかはわかりません。
 北方連合のKAN-SENはほとんどが今回の作戦に出撃していました。主力艦で出ていないのはアルハンゲリスクぐらいでしょうか。本土ががら空きになってしまっているのではと心配になります。サディアの世界博覧会に出ていたアヴローラ、クロンシュタット、パーミャチメルクーリヤ、ストレミテルヌイたちは外にいます。
 新しい形式のイベントだったため、運営さんはゲーム側の開発と調整にパワーを割いていたとは思います。しかしその中でストーリー側も次のイベントへの伏線も貼ってくれたのは嬉しかったです。この終わり方だと、ロイヤルにも鉄血にもサディアにも影響があるのではないかと想像力をかきたてられるので、次回がどうなるかワクワクします。



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